クラシックカーと一緒に乗り心地を比較
グレートブリテン島の南西部に位置する、ブレコン・ビーコンズ改めバンネ・ブライチェイニオッグは、広大な国立公園が広がる山岳地帯。最近、車列を組んでウェールズ王子が訪問し、英国内では注目が高まっているようだ。
【画像】乗り心地を極める ロールス・ロイス/ベントレー/レンジローバー/BMW 参加した5台 全150枚
今回、英国編集部も同じ場所へ5台で向かったのだが、なかなか壮観な車列になった。ドレスコードは設定されず、ラフな普段着のままだったから、紳士たちによるオーナーズクラブ・ミーティングに勘違いされることはなかっただろう。
われわれには、確かめるべきことが存在した。そのきっかけを作ったのは、F1ドライバーに登り詰めた実業家、ジョナサン・チャールズ・パーマー氏だ。
AUTOCARの読者だという彼は、先日お会いした際、現代的なモデルに対して1つの不満を口にしていた。動力性能とは異なり、乗り心地はさほど進化していないようだ、と。
「最も快適だとされる高級車を複数用意して、クラシックなクルマと一緒に比較するというのはどうでしょう。最新技術に対して考えを深める機会になるのでは」。そんな提案をいただいた。
彼の貴重なアイデアを、聞き流すことなどできない。そこで早速、英国編集部は動いた。
合計価格が約100万ポンドに達する5台
スタッフが用意したのは、ロールス・ロイス・ファントムVIIIにベントレー・フライングスパー V8アズール、ランドローバー・レンジローバー P440eオートバイオグラフィー、BMW i7 xドライブ60 Mスポーツという高級車4台。お値段順に並べると。
英国価格を合算すれば、約100万ポンド(約1億6000万円)に達する。ちなみに、パーマーはヘリコプター界の最高級ブランド、アグスタで飛んできた。なんともブルジョアな集まりだ。
さらにクラシックカーとして加わったのが、最近レストアされたばかりだという、1964年式のロールス・ロイス・シルバークラウドIII。筆者の友人で読者の1人、ジョー・ウォード氏が快く持ち込んでくれた。
乗り心地を測ることは複雑で、感じ方も主観的な偏りが生じやすい。そこで、マクラーレンF1の技術開発に関わった経歴を持つ、ランドル・エンジニアリング社のスティーブ・ランドル氏にも協力を仰いだ。客観的な判断をしてくれるに違いない。
AUTOCARでは、普段は様々な特性を総合的に判断しクルマを評価している。特定の1つにフォーカスを当てて、比較試乗することは珍しい。しかし、とても興味深い検証になることは間違いないだろう。
バンネ・ブライチェイニオッグの東側には、様々な路面が混在している。波打った区間があり、大きな窪みも放置されてる。崖へ沿うようにカーブが続き、大地とは関係なく路面はうねり、見通しの悪いヘアピンもある。シャシーの能力を引き出すのに好適だ。
多くの要素が複雑に絡む乗り心地
筆者はそれなりに経験を積んできたつもりだが、ランドルの発言は遥かに鋭い。ホイールハブの縦方向の落ち着き、ロールセンターの高さ、アクスルの振動などについて、繊細に感じ取っていく。乗り心地を分析することの難しさを実感する。
少なくとも、自分も快適かどうかは判断できる。これまで、多くのモデルへ試乗してきたように。
AUTOCARでは、クルマの乗り心地をプライマリー(1次)とセカンダリー(2次)にわけて評価することが一般的だ。1次とは、路面変化に対してボディがどれだけ動くのか、前後のピッチや左右のロール、上下のバウンスなどを判断したもの。
2次とは、タイヤやサスペンションがどのように動き、振動を伝えるのかを判断したもの。ここにはシートの座り心地や、ドライビングポジションの具合などは含まれない。だが、これらの要素も乗り心地に大きな影響を与える可能性は高い。
さらに、走行時にタイヤが発するノイズ、ボディの剛性感、ダンパーの動き、姿勢制御のまとまりなども関係してくる。すべてが複雑に絡んでいる。
単純に表現するなら、ソフトな乗り心地は快適性が高いと感じられることが多い。AUTOCARでも、そう判断されることが少なくない。
それでは、今回の5台で最もソフトに感じたクルマはどれかというと、1番古いロールス・ロイスではなかった。15インチ・ホイールに扁平率75という肉厚なタイヤを履き、穏やかで宙に浮いているような質感を期待していたのだが。
ファントムVIIIの雲のように浮遊した体験
実際は、リアにリーフスプリングとリジットアクスルが組み合わされた、半世紀以上前のリムジンだ。最新モデルと比べて身のこなしがおっとりしているぶん、乗り心地はマイルドなものの、豪華なボディやシャシーのあちこちから軋む音が絶えず聞こえる。
ふっくら膨らんだ、お尻全体を包むようなシートのおかげで、快適性は確かに高い。エンジンのハミングを僅かに聞かせながら、バンネ・ブライチェイニオッグの傷んだ路面を、滑らかで静かに進んでくれた。
しかし、それ以上に雲のように浮遊した体験を与えたのは、シルバークラウドの子孫に当たるファントムVIIIだった。ロールス・ロイスは、類まれに贅沢な体験をフラッグシップ・リムジンで味わって欲しいと考え、設計している。
ハイエンドなラグジュアリー・モデルのなかでも、サスペンションの設定は明確にソフト。ストロークも長い。ファントムVIIIが生涯の99%を過ごすであろう様々な状態の路面で、極めて自然に浮遊した乗り心地へ浸れる。
長い周期で路面がうねっていても、滑空しているかのようにボディはフラット。ある程度スピードが増せば、隆起部分の存在すら感じさせない。あらゆる路面変化がもたらす影響を、ほぼ完全に排除していた。
とはいえ、幾つかの妥協も存在している。素晴らしいと表現していいものの、完璧な乗り心地には届いていなかったことも事実だろう。
この続きは後編にて。
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