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新型EV増えるも「インフラ」は大丈夫? 「量はあるも質に課題?」 大容量電池搭載車は今後どうなる?

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新型EV増えるも「インフラ」は大丈夫? 「量はあるも質に課題?」 大容量電池搭載車は今後どうなる?

■日本には2万を超える充電器があるものの…

 2022年3月、日産の新世代EVである「アリア」の納車が開始されました。
 
 さらに、2022年春から夏にかけて日産と三菱のそれぞれから新型軽EVが発表されるほか、トヨタ「bZ4X」やスバル「ソルテラ」といった新型EVが登場する予定となっているなど、2022年はEV飛躍の年になることが期待されています。
 
 その一方で、EVにとって必要不可欠な存在である「急速充電器」に関する問題が浮き彫りになりつつあります。

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 日本は、三菱が2009年に大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載した世界初の量産型EVである「i-MiEV」を発売して以来、2010年に登場した日産「リーフ」がこれまで世界で50万台以上を販売するなど、世界でももっともEVに積極的な国のひとつでした。

 現在では輸入車ブランドのEVも増え、また、前述のとおり2022年には国産EVのラインナップもさらに拡充されることから、多くの人にとって、EVがより現実的な選択肢となることは間違いありません。

 EVにとって重要なのは、いうまでもなく充電設備です。

 基本的には、自宅に充電設備を用意することが必須ですが、長距離ドライブの際などには公共の充電設備を利用することもあります。

 世界に先駆けてEVを販売してきた日本では、公共の充電スタンドの数は決して少なくありません。

 全国の充電スタンド情報を掲載しているGoGoEVによると、2022年4月現在、日本全国には2万1848か所の充電スタンドがあるといいます。

 充電/給油に要する時間などが異なるため単純に比較はできませんが、2021年3月時点における全国のガソリンスタンドの数が2万9005件であることを考えると、充電スタンドもかなり充実してきているように思われます。

 しかし、実際には、全国の充電器の60%以上を占める1万3654か所が100Vもしくは200Vの「普通充電器」となっています。

 充電ができないわけではありませんが、1時間で充電できるのは100Vで3kW、200Vで6kW程度であり、40kWhのバッテリーを搭載する日産「リーフ」を80%程度まで充電するためには、200Vの普通充電器でも5時間以上必要となる計算です。

 このように、普通充電器は自宅や職場、宿泊施設などで充電する場合には活用できますが、ドライブの休憩や食事の時間などで充電するにはあまり実用的ではありません。

 では、「急速充電器」を使えばどうでしょうか。急速充電器の規格は世界の各地域でさまざまなですが、日本でおもに採用されているのは「CHAdeMO(チャデモ)」と呼ばれる規格です。

 現在日本で設置されているCHAdeMO規格の急速充電器は、おおむね50kWhでの充電に対応しており、40kWhのバッテリーを搭載するリーフは約40分程度で80%まで充電できる計算となります。

 40分程度の充電時間であれば、食事休憩の時間などを活用することができるため、実用的といえるかもしれません。

■EV側は高出力の充電器に対応しているが…

 ただ、今後発売される予定の新型EVは、これまでのEVに比べてより大型のバッテリーを搭載する見込みです。

 例えば、アリアでは66kWh-91kWh、bZ4Xとソルテラでは71.4kWhのバッテリーを搭載することが明らかにされています。

 また、輸入車ブランドのEVでも60kWh-100kWhクラスのバッテリーを搭載するものも多く、バッテリーの大型化は今後も進む見通しです。

 91kWhのバッテリーを搭載するアリアの「B9」を例にとると、50kWhの急速充電器であっても、80%充電までに1時間30分ほどの時間を要する計算となります。
 これを30分程度の充電時間に抑えるためには、理論上150kWhクラスの急速充電器が必要です。

 実は、アリア自体には130kWhクラスの急速充電に対応しています。さらに、bZ4Xとソルテラを含む、最新EVのほとんどが最大150kWhクラスの急速充電に対応しており、欧州などではそれに対応した急速充電器も普及しつつあります。

 一方、日本においては、「急速」の定義が50kWhにとどまっており、グローバルから見ればかなりの差があります。

 2021年には、神奈川県の大黒パーキングエリア内に、公共用としては初となる90Kwhクラスの急速充電器が設置されましたが、それ以上のパワーを持つ急速充電器の設置については現時点では未定という状況です。

 また、急速充電器自体は設置されていたとしても、販売店の敷地内であるため、営業時間外の利用ができなかったり、他ブランドのEVでは利用しづらかったりといったケースもあります。

 さらには、設置から時間の経過した充電器は老朽化が激しく、最新のものに交換する場合でも費用対効果が悪く、採算が取れないことから二の足を踏んでしまう例もあるようです。

 このように、これまで電動化をリードしてきた日本も、充電事情に関しては課題も少なくありません。

 これまでは、ガソリンスタンドに比べて充電スタンドの数自体が少ないことが問題視されていましたが、今後は、「量」に加えて「質」の面でも向上が望まれています。

※ ※ ※

 こうした課題に対して、自動車メーカーや各自治体、関連企業などが一体となって急速充電器の設置を進めています。

 ただ、急速充電の規格に対する覇権争いは激化しており、日本のCHAdeMO方式が「ガラパゴス化」してしまう可能性も指摘されています。

 この点以外にも、EVの普及に対しては非常に多くの課題が山積しています。

 一方で、長期的視点に立てばEVを推進するメリットが多くあるのも事実です。
「ガソリン車 VS EV」という単純な対立構造でとらえるのではなく、さまざまな角度から議論を進めることが求められています。

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みんなのコメント

11件
  • EVはミニバンとか軽自動車のような低速近距離がメインの車にはいいかもしれないが、グランドツーリングカーみたいな使い方される車には厳しいかな
  • 急速充電器の容量については、実は記事よりももっと事情は悪い。

    急速充電器と呼ばれるものが、記事のデータ元のGoGoEVで見ると7951件あるけれど、そのうちの3758件は20-30kW機だ。

    50kWが遅い(容量が小さい)と言ってるどころの話じゃない。

    理由は簡単。充電器の費用が安い、電気代が安い、でもeMPが定める料金は出力とは無関係に時間制になっているから
    、コストのかかる大出力でも、安い小出力でも売上は変わらない。

    元々儲からない充電ビジネスではあるが、大出力機の方が更に不利になる構造になってる。
    今大出力機を設置しているのは、自動車関連施設と、よほどBEVに理解のある事業者だけだ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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