■かつて国内でも販売されていた「サファリ」後継モデルがフルモデルチェンジ
高い走破性や耐久性を誇るトヨタの超人気クロカンSUV「ランドクルーザー300(ランクル300)」は2021年8月の発表以来、生産能力を大きく超える受注を抱え、2年以上も注文は停止したまま。買いたくても買えない状況が続いています。
しかし現在の日本市場には匹敵するモデルはほかになく、とにかく待つしか手がない状況。そんななか2024年9月、かつてのライバルである日産「サファリ」の後継モデルがフルモデルチェンジしました。日本導入の可能性はあるのでしょうか。
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1980年に初代モデルが登場したサファリは、堅牢なラダーフレームとパートタイム式4WDを装備した本格オフローダーの世界戦略車です。
海外では「パトロール」を名乗りますが、北米では「アルマーダ」として、また高級仕様はインフィニティ「QX80」として、いまもグローバルで活躍しています。
ただ国内におけるサファリについては、SUVのトレンドが燃費やオンロード性能に優れた乗用車ベースのモデルに移り変わったこともあって、2007年に販売が終了となっていました。
そんなサファリの系譜を受け継ぐパトロールの新型が、2024年9月4日にアラブ首長国連邦(UAE)の首都、アブダビで世界初公開となりました。
型式は先代パトロール(Y62型)の流れを受け継ぐ「Y63」型です。
2+3+3の8人乗りと、2列目キャプテンシートの2+2+3の7人乗りが設定されています。
ボディサイズは、全長5350mm×全幅2030mm×全高1945mm-1955mm、ホイールベースは3075mmと、先代と比べ全長+35mm、全幅+90mm、全高+5mm-15mmとさらに大型化しています。
パワートレインは、先代のV型8気筒エンジンから大きくダウンサイズされた3.5リッターのV6ツインターボエンジンを採用し、最高出力は425PS、最大トルクは700Nmに到達します。
これはランクル300のV6ターボエンジン(最高出力415PS、最大トルク615Nm)を超えるスペックです。
エクステリアデザインは、基本的には先代を踏襲していますが、新型では余計な加飾を削り、直線基調のシンプルなデザインに。
ただ細部まで繊細につくりこまれており、とくにフロントマスクのダブルCマークのヘッドライトや四角いフロントグリル、リアの大型テールランプをインストールしたリアバンパーなどは、とてもスタイリッシュ。ランドローバーの「レンジローバー」に近い印象もあります。
インテリアは豪華絢爛で、ドライバーの目の前には、14.3インチの巨大モニターが並ぶ圧巻の見栄え。
インパネには各種操作用の物理スイッチが多くレイアウトされており、シフトチェンジは日本の「セレナ」と同じ、スイッチ式となっています。
4WDモード切替はプッシュスイッチで行い、走行モード切替はダイヤルで選択するタイプを採用したのは、揺れる車内での操作を考えてのことでしょう。
■即導入は難しくても「電動化モデル」なら“ワンチャン”あるかも!?
ぜひとも日本でも見てみたい新型パトロール。
なかでも、ランクルのようなクロカンSUVが好きな人にとってはかなり魅力的に映ります。
そしてランクルの異常なほどの人気ぶりを見れば、日本でも売れそうです。
しかもパトロールの製造は日産の九州工場。であれば「日本でちょっとくらい販売してもいいのでは」とも思えます。
しかしながらランクル300の人気は、リセールバリュー(中古車における再販価値)の高さも大きく影響しています。
語弊を恐れずにいえば、「海外輸出で儲かる(もしくは損をしない)クルマ」であることが、支持を集める大きな要素となっていることは否定できません。
もちろん、日本でも純粋にランクル300のような大型クロカンSUVを愛する人は少なくはないでしょう。
またサファリがいまも国内で販売され続けていれば、ランクルのような需要があったかもしれません。
しかしいま突如としてパトロールを日本へ導入したところで、ランクルのように売れる確証はありません。
全長5.3m超えの巨大なボディサイズをもった特殊な用途のクルマに対し、ビジネスが成立するほどの需要は見込めないというのが、現在の日産による冷静な判断と考えられます。
たとえビジネスが成立するほどの需要が見込めるとしても、いまさらリッターあたり6~7kmという“極悪燃費”な新型パトロールを導入することは、量販コンパクトカー「ノート」ですら「e-POWER」一本とするような電動化戦略を強力に推し進めるいまの日産にとっては厳しいでしょう。
国内のために新規でパワートレインを開発することも考えにくく、やはりサファリ復活は「叶わない夢」とあきらめざるを得ない状況といえます。
残念ながら、現段階で新型パトロールの国内販売(ひいてはサファリの復活)は難しいというのが、筆者(自動車ジャーナリスト 吉川 賢一)の見解です。
※ ※ ※
ただしランドクルーザーがそうであるように、時世にあわせハイブリッド機構を搭載する電動モデルを追加設定する可能性も近い将来にはありそう。
こうしたモデルならば、ふたたびチャンスはあるかもしれません。いちファンとして、新型“サファリ”の国内復活を願うばかりです。
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