世界は日本に遅れてハイブリッドがトレンドに
2018年上半期にもっとも売れたクルマ(登録車)は日産ノート。その原動力となったのは100%電気駆動という、シリーズハイブリッドシステム「e-POWER」であることに異論はないだろう。ノートに続くのがアクア、プリウスというトヨタのハイブリッド専用車。さらにトップ10内でハイブリッドを設定していないのは、ランキング8位のトヨタ・ルーミーくらい。「ハイブリッドにあらずんばクルマにあらず」と表現したくなる状況だ。
こうした「ハイブリッド至上主義」ともいえる流れを生み出したきっかけは、2009年に実施された通称“エコカー補助金”であろう。車齢13年超のクルマからハイブリッドカーに乗り換えると最大25万円の補助が受けられるという施策は、その是非は別としてハイブリッドカーの普及を促進した。ハイブリッドカーの燃費性能はカタログ値とのかい離を批判されることもあるが、その不満を差し引いてもエンジン車に対して絶対値としては燃費のアドバンテージがあるのも事実。
また、ハイブリッドカーの代名詞となったプリウスがEV走行の静かさやスムースさといった、燃費性能以外の電動車両のメリットを知らしめたことも、その価値を高めた。モーターアシスト型のマイルドハイブリッドよりも、コスト高になる2モーター型フルハイブリッドが日本市場において主役となったのも、燃費だけではない価値が認められたという面は否めない。
エンジン車との価格差をハイブリッドの燃費性能だけで埋めることは難しいというのは、もはや一般常識といえるほど認知されているだろうが、新車でハイブリッドカーを購入しようというオーナーが増える一方なのは、電動化により洗練される走り味を評価しているともいえる。さらにモーターの特性から発進加速も鋭く、市街地を中心にクルマを使うのであれば燃費・加速・快適性といった部分でハイブリッドは有利なパワートレインといえる。
そのため、反対に高速走行でのパフォーマンスも重視する欧州ではハイブリッドが評価されないとも言われていたが、厳しくなる燃費要求を満たすために、またディーゼルエンジンにおけるディフィートデバイス問題のカウンターとして、欧州勢も電動化を声高に喧伝している。さらに一歩先を行く中国市場では電気自動車の普及が進められている。
つまりハイブリッド・パワートレインの拡大は世界的なトレンドになりつつある。こうしたトレンドを考えれば、日本市場におけるハイブリッド至上主義ともいえるマインドは、けっしてドメスティックなものではない。世界に先駆けているという見方もできる。
さて、冒頭で触れたセールスランキングは登録車のそれだが、2018年上半期において日本で一番売れたのは軽自動車(届出車)のホンダN-BOX。そして、ご存じの通りN-BOXにはハイブリッドの設定はない。軽自動車においてはスズキ・ワゴンRがモデルチェンジを機にハイブリッドを前面に押し出したブランディングをしたが、けっして狙い通りに成功しているわけではない。登録車と軽自動車ではユーザー心理が異なるとはいえ、日本市場全体として見たときのトレンドは「何が何でもハイブリッド」というわけではない。もっとも、軽自動車にEV走行が可能なフルハイブリッドモデルが競争力のある価格帯で登場すれば、状況が変わるのかもしれないが……。
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