「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前の国産車は環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は「スズキ アルトラパン」だ。
スズキ アルトラパン(2代目:2008年)
車内外のあちこちに、50~60匹くらいは付けられている?と言われるウサギのエンブレム。その情報だけを聞けば、男性には無縁のファニーなクルマというイメージが強いスズキの新型ラパンだが、それは大きな誤解なのだった。
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確かに、エクステリアは指名買いされるほどウケた初代のレトロモダンな雰囲気を継承している。だが、歩行者保護性能のためなどでボンネットが高くなり、フロントウインドーは約100mm前進している。カウルトップパネルなどの素材も金属に変更され、フロントドアの幅も約70mm拡大されている。見えないところで、それだけの進化を遂げている。
目に見えるところでも、フラップ式だったドアノブは爪の長い女性でも握りやすいようにグリップ式に変更されたりと、けっしてウサギのエンブレムが増えただけの進化ではない。
インテリアでは、プッシュボタン式のエンジンスタートを全車に標準装備した。シフトは、先代のコラム式からインパネシフトに変更された。メーターは大型1眼メーターの中にマルチインフォメーションディスプレイが備わり、エンジン始動時や停止時には、十数種類のウサギのアニメーションが表示される。もちろん、燃費計も備わっている。
ホイールベースは先代よりも40mm長い2400mmとなって、室内空間は室内長が170mmもアップされたのをはじめ、頭上の開放感も全高の低さをまったく感じさせないもの。シートのサイズ自体は従来型と変わらないが、フロントはヒップポイントを30mm上げており、専用に開発されたシート生地の肌触りや形状は、ホッと和む寛ぎ感にあふれている。
インテリアカラーは、可愛らしいアイボリー/ぬくもり感のブラウン/アクティブなブラックと3色が用意されており、これはスズキとしてはかなりの冒険だったという。
また今回、使い勝手の面でも感心したことが多かった。乗降性では、フロントドア開口部が大きく、適正な着座位置で腰の移動がスムーズになっている。66度という開口角度は、開け閉めにちょうどいい角度を突き詰めた結果だという。リアドアは80度まで開き、幅広いステップで子供でも安全に乗り降りできそうだ。
まずはノンターボ+CVTで街中へと走り出してみる。発進からすでに、小さな驚きを感じた。60km/hくらいまでの加減速を繰り返すと、エンジン回転の上昇はなめらかで、アクセルオフでも不快な前のめり感がない。強めに踏み込むと、ほぼタイムラグなしで力強く加速してくれ、しかもしっかりとした一体感がある。
コーナリングでは適度なロールがありながら、手応えのあるステアフィールとともに、狙ったラインを描いていけるブレのなさが気持ち良い。そこから直線に戻る際に、ステアリングの振り戻しがやや大きめなのが気にはなったが、スタビライザーが付いていないとは思えない、フラット感あふれる乗り味だ。
想定外に好印象だったノンターボだが、ターボ+CVTでは20~40km/hあたりの力強さや、高速域からの加速感や静粛性がさらにプラスされている。直線基調のボディのおかげもあって、視界や見切りも良く、取り回しもしやすい。乗り心地も軽自動車のトップレベルにあるといえる。女性にはもちろろん、男性にも強くオススメしたい1台だ。
■スズキ アルトラパン X 主要諸元
●全長×全幅×全高:3395×1475×1510mm
●ホイールベース:2400mm
●車両重量:800kg
●エンジン種類:直3DOHC
●排気量:658cc
●最高出力:40kW<54ps>/6500rpm
●最大トルク:63Nm<6.4kgm>/3500rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:横置きFF
●10・15モード燃費:24.5km/L
●タイヤ:155/65R14
●当時の車両価格<税込み>:122万2200円
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みんなのコメント
それ以外は内外装とも今でもいいと思う