インドネシアのジャカルタでは、2022年8月に国際的なモーターショーが開催されたばかり。そんなインドネシア現地のクルマ事情はどうなっているのだろうか?
実はインドネシアでは日本車が主流を占め、9割以上のシェアとなっている。そんなジャカルタの街角を観察していると、最近日本車以外が目立つようになってきた。そんな現地の最新事情をレポートする!
ヴォクシーが約552万円!? インドネシアでも売ってたんかい!! 日本車天国インドネシアのいま
文・写真/小林敦志
■モーターショー会場とインドネシアの街路
GIIAS2022(ガイキンド・インドネシア国際オートショー2022)会場
いまどきどこの国であっても、自動車ショーを開催すれば、たいてい会場内にBEV(バッテリー電気自動車)や、FCEV(燃料電池車)など“新エネルギー車”が多数展示されるのは当たり前の光景といっていいだろう。
しかし、そんなことを意識していても今回インドネシアのジャカルタ近郊で開催されたGIIAS2022(ガイキンド[インドネシア自動車工業会]・インドネシア国際オートショー2022)の会場の主役が新エネルギー車だったことには驚かされた。
ただし、今年春に訪れたタイのバンコクで開催されたバンコクモーターショーとは少々雰囲気は異なっていた。
バンコクモーターショーでは、中国系がBEVに加えHEV、欧州勢がPHEV、日系がHEVと、HEVを加えた電動車が一般市販レベルまでかなりの割合で、展示されていた。
それに対してGIIAS2022の会場では、そこまで新エネルギー車を販売目的で展示しているようには見えなかった(目玉の1台や参考出品レベルにとどまっていることが多かった)。
バンコクやインドネシアなど新興国のショーは完全なトレードショーであり、ショーの開催期間中にどれぐらい新車を販売することができるかがショーへの出展目的として大きい。
そのため多くのブランドのブースでは、広めに商談スペースを設け、その場でローンの審査(インドネシアではローンで新車購入するケースがほとんど)ができるように、各信販会社が特設の審査窓口を設けている。
しかし新エネルギー車が目立っているとはいえ、会場内はまだまだ現実的な販売車種として内燃機関車の展示のほうが多く見受けられた。
会場周辺は新興開発地域で、日系のショッピングモールや、日系企業が建設した高級マンションなども建ち並ぶが、その周辺を走るクルマのなかにBEVを見かけることはできなかった。そしてショー取材後に首都ジャカルタの様子を見るためにジャカルタへ向かい、1日街を歩いて実際に様子を見ることにした。
■ジャカルタの交差点で実際の交通を観測
ジャカルタの街を走る中国BYD製のBEVバス
ジャカルタに夜到着し、翌朝街歩きのためホテルを出て目抜き通りとの交差点に向かうと、目抜き通りを行き交う中国BYD製BEV路線バスの姿が目に映り驚いた。地元の報道によると、今年3月に30台のBEV路線バスの運行がジャカルタ州公営バス会社となるトランスジャカルタで始まったとのこと。
今年中に100台までに増やし、2030年には保有するバス車両すべてをBEVバスにするとのことである。市内を走っていたBYDのバスは現状では中国から完成車輸入されているが、すでにインドネシア地元企業と提携しインドネシアでの現地生産に向けて動き出している。
トランスジャカルタが運行しているBRT(バス高速輸送輸送システム)は、ジャカルタ市内でも自慢のひとつなのだが、市の中心部にあるプラットフォームタイプのバス停を使用中止にして大規模修繕を行っていた。
走行している専用バス車両はいずれもディーゼルエンジンを搭載し、エミッション性能も最新の“ユーロ6”をクリアしたものではなく、やや古ぼけた感じがすると思っていた。
インドネシアでは、富裕層を中心にトヨタアルファードの人気が高い
だが、2030年までにすべて車両を電動化するとのことで納得した(BRTは近々メイン路線だけでもBEV化される可能性が高い)。具体的なビジョンすら描けない日本とは大きな違いである。
毎回ジャカルタを訪れると、市内にあるいくつかの定点観測ポイントで、街なかを走るクルマをウォッチしているのだが、やはり日本車が圧倒的に多いことには変わりない。
ASEAN全域といってもいいが、トヨタ アルファードは富裕層を中心に人気が高く、ジャカルタではメルセデスベンツEクラスに代わり、上級タクシー車両としても使われている。ただインドネシア(ジャカルタしか見ていないが)ならではとしては、トヨタ ヴォクシーがよく売れているということ(ちなみに2ℓガソリンのみでモノグレード設定となり、価格は5億7460万ルピア/約552万円)。
筆者が定点観測している間では、アルファードよりヴォクシーを見かけるほうが多い印象を受けた。インドネシアでも日本と同じタイミング(約1カ月遅れ)で新型ヴォクシーがデビューしている。市内を走るヴォクシーは圧倒的に先代が多いのだが、現行新型車両もパラパラ見かけることができる。
タクシーの大きなシェアを占めるトヨタトランスムーバー
タクシー車両は2019年に訪れた時は、コンパクトセダン“トヨタ ヴィオス(ヴィッツのセダン版)”ベースの“リモ”ばかりだったが、すでにほとんどがコンパクトMPV“トヨタ アバンザ”ベースの“トランスムーバー”となっていた。
日本のJPNタクシーでも上級グレードには後席向けに風を送るサーキュレーターがあるが、トランスムーバーも装着されていた。ただJPNタクシーに比べるとその風量が強く暑がりの筆者には大助かりな装備であった。
■街路にも中国・韓国車の姿が
中国・ウーリン(上海通用五菱汽車)製や韓国・ヒョンデの自動車も目についた
日本車ばかりのジャカルタ市内だが、ショー会場並みとはいかないものの韓国及び中国メーカー車が目立っていた。インドネシアでは公共工事やマンション建設、鉄道建設などでは、よほど“大人の事情”がない限りは日系企業が選ばれることが多いとのこと。
地元の人がマンションを購入する時もまず“ディベロッパーはどこだ”と聞き、日系企業だとスンナリ契約が進むとも聞いたことがあるほど、日系企業への信頼は高い。そのインドネシアで、首都だけ見た限りだが、「韓国や中国車もいるなあ」くらいに見かけるのはやはり見過ごせない。
とにかく目立ったのが中国のウーリン(上海通用五菱汽車)のコンパクトMPVやSUV。韓国ヒョンデのサンタフェやパリセードといった、中型や大型SUVも目立っていた。
目立ってきた背景はなかなか読み取ることはできないが、韓国や中国車への評価が高まっていることが影響しているのも間違いないだろう。あとは、都市部では四輪車市場の成長とともに、多様化(ほかの人とは違うクルマに乗りたい)が進んでいるとも見ることができる。
このような流れは自動車市場がインドネシアより成長しているタイでも以前見た記憶がある。
タイではバンコク市内で見てきた限りは、コロナ禍となってからタイ政府の電動車普及への動きもあるが、得意のBEVで中国系ブランドが一気に頭角を現してきた。
現状BEVが欲しくても日本車はほぼラインナップしていないし、欧州ブランドでは価格が高すぎるので中国系ブランドしか現実的な選択肢がないということも大きい。
インドネシアもタイと同じ道をたどっているように見えてならない。すでにヒョンデもウーリンもBEVをインドネシアで現地生産を開始している。インドネシア政府はタイ政府と同じく、単なる新エネルギー車の国内普及だけでなく、世界市場への供給基地(生産拠点)にしようとしている。
まだまだ韓国・中国車が日本車を脅かす存在とはいえないが、路線バスの電動化は前述したとおり、少なくとも東京よりは速いスピードで進んでいる。日本車が強い市場の動向を丁寧にウォッチしていないと、“気がついたら……”ということが意外なほど早くやってくるかもしれないとジャカルタ市内を歩いて感じた。
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