トラックドライバーが遭遇する事故というと、誰しも交通事故を思い浮かべると思う。しかし、意外なことに運転中の交通事故で死傷するより、運転以外の作業で死傷するケースのほうが圧倒的に多いのだ。意外と知られていないトラックドライバーの労働災害の実態に迫ってみた。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
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【画像ギャラリー】物流の花形トラックドライバーの労働災害 業界全体での荷役作業事故防止を
■交通事故によるトラックドライバーの死傷者数は確実に減っている
テールゲートリフターとロールボックスパレットは便利な荷役省力機器だが、注意を怠ると思わぬ死傷事故に……
まず、最近発表されたばかりの2020年の労働災害発生状況の速報値を見てみよう。
確かにトラックドライバーの死亡事故は36%(32人)が道路上の交通事故によるもので、依然として高率である。しかし、10年ほど前までの割合は60%を超えていたので、実はトラックドライバーの交通事故死はずいぶんと減ってきていることがわかる。
「休業4日以上」の死傷災害を作業の種類別に見ると、それがもっとはっきりするだろう。死傷災害における「交通事故」の割合はわずか5%(775人)で、10年前の12%と比べると、交通事故で死傷するトラックドライバーはグンと減っているのだ。
しかし、労働災害の件数自体はほとんど減っていない。では、トラックドライバーの死傷事故はどんなケースで起きているのか?
■トラックドライバー死傷事故の7割を占める荷役作業中の事故
ウイングボディへの荷役はフォークリフトが一般的。ただ、トラックドライバーがフォークの運転をしなければならない現場も多い
2020年の陸上貨物運送事業における死傷事故の件数は1万5508件。実は、その約7割が荷役作業時に発生しているのだ。高い順からあげると、「墜落・転落」27%、「動作の反動・無理な動作」17%、「転倒」16%、「はさまれ・巻き込まれ」10%などである。
具体的にいうと、トラックの荷台から降りる時や昇る時、任意の飛び降り、危険回避の飛び降りなど荷台への昇降時の転落事故が約4割を占める。
次いで荷の固定や固縛など荷物上での事故が9.7%、アオリ使用中の事故が8.5%、雨や雪、凍結・強風など天候の影響が8.3%、シート掛け中の事故が8.0%、後ろ向き作業中の事故が7.1%となっている。
災害事例1
荷台にあった段ボールを持ちながら、荷台からトラックのリアバンパーに足をかけ、後ろ向きで降りようとしたところ、足を滑らせてしまい、約52cmの高さから転落し、頭を強打した。【死亡】
災害事例2
テールゲートリフターに乗り、ロールボックスパレットを荷台から荷降ろしする作業中、テールゲートリフターのストッパーを使用していなかったために、荷(約200Kg)とともにテールゲートリフターから地面に落下し、荷の下敷きとなった。【死亡】
災害事例3
運転席より後ろ向きに路上に降りる際、手元がくるい転落し、臀部および後頭
部を打撲した。【休業3週間】
1年間の労働者1000人当たりに発生した死傷者数を死傷年千人率というが、全産業の平均が2.22なのに対して、運送業は8.55と極めて高い。
労働災害の発生件数が多い業種というと、真っ先にトビ職などの建設業を思い浮かべる人も多いと思うが、2019年からは安全対策に積極的に取り組んできた建設業が運送業を逆転し、今や運送業のほうが死傷事故の発生件数が高くなっている。
■監督官庁や業界に募る危機感 その取り組みは?
大手の宅配業者では荷役作業は、ほとんど専任スタッフが行なっている。しかし、立場の弱い中小の運送事業者では、ドライバーの「サービス荷役」も……
それだけに監督官庁や業界では危機感を募らせており、荷役作業時の死傷事故を少しでも減らすためさまざまな施策を行なっている。
厚生労働省では「荷役作業時における墜落・転落災害防止のための安全マニュアル」「荷役作業安全ガイドライン」などを策定し、注意喚起を促すとともに、運送事業者および荷主等がそれぞれ取り組むべき事項を示している。
また運送事業者の業界団体である全日本トラック協会でも、荷役作業の労働災害の多くが荷主、配達先、元請事業者等の事業場構内で発生していることから、個々のトラック運送事業者による安全対策だけでは限界があるとみている。
また、出先ではトラックドライバーが運送契約に基づかない付帯作業を要求されているケースも目立つため、荷主等にも協力を要請している。
ただ、いくら「荷役作業安全対策マニュアル」があっても、トラックドライバーは時間に追いまくられることが常なので、マニュアル通りに安全対策の手順を踏むことができないという背景もあるだろう。
また海外では、荷役作業を行なう専任の人員がいるケースが多く、徐々に日本でもそういった事業場が増えてきているが、現実には、荷役の作業分担がグレーゾーンのまま、トラックドライバーに荷役を強いる悪しき慣例がまだまだ横行しているのが実態だ。
しわ寄せを喰らうのは、いつも最も弱い立場のトラックドライバーなのである。
■オールトラック業界で荷役作業時の事故の防止を!
浜名ワークスのアオリ水平保持装置付平ボディ。床枠部からスチール製のバーを引き出し、サイドアオリを水平に保持。積み荷へのカバー掛け時などにドライバーが荷台から落ちて怪我をする「転落事故」に頭を悩ませていた荷主からの相談を受け、ユーザーと共同開発した車両である。安全帯を引っ掛けるための親綱ロープを荷台側面に張る機能と併せて作業時の安全性が飛躍的に向上した
ところで、冒頭で10年前に比べ交通事故で死傷するトラックドライバーが大幅に減ってきていることをご紹介した。それは先進安全装備をはじめ、トラックの安全対策が大幅に向上したことが影響していると思う。
トラックメーカーの功績は大きいと思うが、安全対策は交通事故防止だけで「よし」というわけにはいかない。
荷役作業時の安全対策にトラックメーカーが関与できる素地はまだまだあるのではないか。
今や日本の大型トラックでは、シャシーとボディをコンプリートで販売するメーカー完成車が主流になっているが、であればなおさら、トラックメーカーは架装メーカーと手を携えて荷役作業時の安全対策にも力を入れるべきではなかろうか。
突拍子もない話に聞こえるかもしれないが、トラックドライバーの死傷事故は、荷役作業中が交通事故の14倍も多いという事実、また、すでに10年以上前から「荷役作業安全マニュアル」などが策定され、注意喚起を促し、運送業界で対策に取り組んできた。
しかし一向に事故が減らない事実をかんがみると、荷台への昇降のしやすさをはじめ、もっと人間工学に基づいたハード寄りの対策が必要なのではないか。トラックメーカーの奮起を望みたい。
いずれにしても荷役作業時の死傷事故の防止は喫緊の課題である。行政も運送事業者も荷主も、そしてトラックメーカーも架装メーカーも、この課題に積極的に取り組まない限り、トラックドライバーになろうという人間は減るばかりだろうし、トラック運送事業の未来は暗いといえるのではないか。
* * *
出展資料/「労働災害発生状況」(厚生労働省労働基準局安全衛生部)・「陸運と安全衛生」(陸上貨物運送事業労働災害防止協会)・ほか
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