人気はあるものの、兄弟車のベルランゴの大ヒットに隠れてしまいがちなリフターに、GTが追加設定された。このGTには兄弟たちより優れた、そこそこの悪路なら走破可能な機能が備わっているのだ。エクステンション的ながらオフロードにも対応してくれるMPV、その実力を試した。
エクステンション的ながらオフロード志向にも対応
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昨年、日本に導入されたファースト・リミテッド・エディションこと「GTライン」が完了するのと同時に、じつはプジョー リフターのレギュラーラインナップに「GT」が地味に追加されている。そこそこ順調に売れているものの、兄弟車であるシトロエン ベルランゴが大ヒットを飛ばしている陰に隠れてしまい、PSAグループとしては「成功の犠牲者(車)」という位置づけではあった。
そこで今回は、なかなか興味深い試乗の機会が用意された。リフター GTをワインディングではもちろん、木製チップを敷き詰めたオフロード路面でも走らせるという試みだ。
はっきりいってリフターは、ベルランゴと同じEMP2プラットフォームと1.5リッターディーゼルたるBlueHDiという基本骨格ゆえに、ベルランゴとの違いといっても、フロントマスクをはじめとする内外装デザインや細かな装備ぐらいのものではないか? と、高を括られやすい。じつはベルランゴは正面から見ると全幅1850mmに全高1850mmとほぼ正方形の中に収まるシルエットなのだが、リフターは全幅こそ同じ値ながら、全高は1880mmと30mmも高い。プジョー独特のi-コクピット、つまり小径ステアリングが先入観をブーストさせているのだろうが、意外にもプジョーの方が、シトロエンよりストロークの長いサスペンションを採っているのだ。
しかもリフターGTには、これまでもラインナップされていた「アリュール」やベルランゴにはない「アドバンストグリップコントロール」を備えている。デフォルトではアスファルトのオンロードを自動的に選択するが、ダイアルで雪や氷、泥に砂といった路面の変化に応じて最適の駆動制御を得られる機構だ。
つまり理論的には、ベルランゴの方がロード志向が強く、リフター GTの方がエクステンション的にオフロード志向にも対応している、という棲み分けといえる。ちなみに従来ラインナップにあったリフター アリュールとベルランゴの差は、マルチパノラミックルーフ設定の有無だった。アドバンストグリップコントロールはESP(エレクトロニック・スタビリティ・コントロール)を応用した電子制御プログラムなので、ダイアルスイッチ以外は物理的重量増がなく、燃費の悪化を免れるソリューションでもある。
加えて、これはとみにフランス的な事情だが、小排気量FFを一定出力で走らせる移動が日常的に多く、かつ休暇には長距離旅行に駆り出すのが大好きなフランス人の多くは、年に数度しかお世話にならない4WDを年がら年中背負うことで生じる重量増と燃費悪化を、嫌うというか、頭が悪いと思っている節がある。山や海の別荘に停めておくセカンドカーならともかく、普段の街中で本格クロカン4WDが走っていると、皮肉と多少のやっかみを込めて「冒険者がお通りだぜ」的な、そんな調子だったりする。無論、日本の国土とは山と平地の割合が逆といっていいほど、概してフラットなあちらの話だが、キャンプ場やスキー場のラスト数十mで必要とするだけの4WDなら、より軽快なソリューションの方がスタイル的に賢く、通年で財布にも優しいという捉え方だ。
要は、FFの小排気量ディーゼルのメリットはそのままに、電子的に悪路を制するプラスアルファを加えたMPVであることが、リフター GTの抜け目ないところなのだ。
オフロードでもかなり頼りになるはず
まずはワインディングで走らせてみたが、DV5ことBlueHDiが、相変わらずいい。国内で買えるベストの欧州製ディーゼルエンジンであると断言できる。そのココロは、ディーゼルらしからぬ軽さゆえ、ボンネット下のマスがステアリングフィールやノーズの動きの軽快感を損ねていないこと。それでいてディーゼルならではの低回転でのパンチ力は健在で、300Nmを1750rpm以上のあらゆるところで引っぱり出せ、操っていて申し分なく痛快なのだ。
ベルランゴとホイールベースも全長も同じで、しかし車高が30mm高いことの影響はあるはずなのだが、そこはさすがプジョー。路面の凹凸に対してしなやかに応じる乗り心地はそのままに、初期のロールスピードを的確に抑え、コーナーでの傾きを怖いと感じさせない。それはロールしない、という意味ではない。EMP2の低重心ぶりを活かして、ロールの質がコントロールされており、しかも手元の小径ステアリングで姿勢もトレースしたいラインもビシバシに決まる。PSAグループのミドル~ハイレンジで使われるEMP2プラットフォームの中で、リフターよりルーフの高いモデルは少ないぐらいだが、グラリと弱々しく傾いて頼りないどころか、大きめのロールをしかと受け止めて遊ばせてくれる。ドライバーのエゴをも許容する包容力なのだ。
そして、今回の山場となるオフロード試走では、まず木製チップの上でグリップコントロールの泥(路面)を選択。フロントの片輪が空転を始めたらブレーキでつまんで逆側に駆動力を回し、片輪でも駆動力を確保するというのが、その基本原理だ。コース上に設けられた小山で、わざと一度停止して坂道発進してみたが、僅かに空転したものの、難なく進んだ。もちろん下る時は、ヒルディセントコントロールを効かせれば、前輪がロックする状況を避けられる。オフロード上で少し速度を上げて曲がってみたところ、よりロック&リリースのしきい値や頻度が上がるのか、泥よりも砂の方がステアリングの舵の効きが失われない。その安定動作ぶりたるや、もっとエクストリームなわだちや氷雪路でも、かなり頼りになるのではないか? と思わせた。
数少ない弱点は、ボタン式の電動モーター開閉ではないリアハッチゲートを閉めるには、それなりの背筋力が要るところ。けっこうきっちり閉めないと半ドアにもなりやすそうだ。でもルーフと水平の高さまで跳ね上がるので、オーニングやパラソルをとり出さずに雨宿りすらできるし、テールゲートに腰かけて簡易ピクニックすらできる。
加えてリフター GTの美点は、凡百のMPVやワンボックスに差をつける、インテリアにある。大容量トランクやあちこちに配された収納ポケットはベルランゴと共通。ダッシュボード周りは硬いプラスチックであることを隠さないとはいえ、ココアブラウンの配色やサテン仕上げの質感はしっとりして見せる。チャコールグレーの千鳥格子柄シートも、近頃の新車としては飛び抜けてシックな、適度にコンサバな趣味のよさといえる。それでいてフルディスプレイ化され秒間60/30コマのフレームレートを自動調整するバックミラーを備えるなど、荷室がいっぱいでも後方視界を確保する、細かな気づかいもある。
379万円という車両価格は決して安くないが、リフター GTで手がかかっていると思わせる部分は、背伸びしたいコドモが目指したがる「大人っぽさ」ではない、といえるだろう。
文・南陽一浩 写真・郡大二郎 編集・iconic
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