国産メーカーのプレミアムブランドとして定評のあるレクサス。そのRXを超えたおもてなしの心を感じれる作りをしたのがマツダのCX-60!! しかし実走してみると硬さが目立つ乗り味だった……。
※本稿は2023年4月のものです
文/水野和敏、写真/LEXUS、MAZDA、ベストカー編集部、撮影/池之平昌信
初出:『ベストカー』2023年5月26日号
レクサスRXよりおもてなしを考えたCX-60!! レクサス超えも乗り心地が硬く感じるワケ
■大柄なCX-60には実は細やかな配慮が
後席乗降性はCX-60が特にいい。サイドシルが奥にあり、また後輪タイヤハウス部に逃げが作られていて、ふくらはぎが当たりにくいのだ
CX-60は豪華な雰囲気を上手に演出しています。メーターパネルの両サイドにしっとりとした表皮のトリムが使われていますが、デザイン的にも新鮮でいいと思います。
しかし、センターコンソールの横幅が広い。これはセンタートンネルが大きいためですが、エンジン&トランスミッションが後方に押し込まれて室内のこの位置に来ているためです。その結果、前席シートの幅は車格のわりに少し狭くなっています。
足元も全幅1890mmのクルマにしてはやや狭くなっていますが、ペダル配置は自然で操作性もいいです。シートの座面は少し硬めですが、ホールド性や姿勢の保持性はいいです。
液晶表示のメーターの文字はさほど大きくないのですが、フォントが見やすく、視認性のいい作りです。
後席は、ドアの開口がほぼ直角まで開き、乗降性がいい。車体側のドア開口は、下部も広く、フロア段差も小さいため靴が引っかかるようなこともなく、乗り降りはスムーズです。
座ると靴が前席下に入るため、足元の狭さを感じません。頭上や膝前のスペースは余裕たっぷりです。後席に座って見ても前席は横幅が狭いです。
後席の居住性はいいと思います。前席より座面クッションのストロークもあり、座り心地がいい。シートヒーターがついて、後席用USBポートが2つ、さらに100V電源も取れます。
オプション装着のものもありますが、今回の試乗車はオプション価格込みで約560万円。この価格でこのインテリアの充実ぶりは満足度が高いです。
乗降性の面で補足すると、降りる際、サイドシルにふくらはぎが当たるのですが、この箇所は太さを抑えて邪魔にならないようになっており、さらに、ドアを閉めた時にドアパネルで覆われるため、雨水や凍結防止剤をまいた汚れが付着しません。
小柄な女性でもふくらはぎを汚す心配がありません。こういう設計は親切で、おもてなしの心を感じます。
■RXは後席の使い勝手にひと工夫欲しい
前出の写真と比較していただきたい。RXの後部座席サイドシルにはCX-60のような欠き取りがなく、降車時にふくらはぎが当たってしまう
RXの後席部サイドシルを見ると、CX-60のような欠き取りはなく、降車時にふくらはぎが当たってしまいます。5cmは出ています。
荷室は車体サイズを考えれば両車ともに標準的です。レクサスのほうがフロア面はやや高めです。そのぶん、フロアボード下にアンダーボックスがあります。CX-60はフロアボード下にスピーカーが置かれていて、荷物は入りません。
RXの後席は荷室側のスイッチで電動で前倒可能ですが、作動速度が遅くもどかしい。バネでいっきに倒れるほうがいい。しかも、完全フラットには倒れません。
RXのコックピットですが、メーターの文字は判読しにくいです。
RXもシートの横幅が狭く座面クッションが薄いです。FFでフロアトンネルはないのに、センターコンソール横幅が大きく、シート幅を制限しています。足元は広さがあって、ペダル配置に違和感はありません。
後席はサイドシルからシート座面までが遠く、乗り込む時はお尻をグイと奥に入れないと座れません。フロア段差は小さくてよいのですが、乗降時の姿勢は少し制限されます。
後席座面はヒップポイントが高く、クッションが薄く底付きします。前席下に靴が入り込まないので、足元スペースは少し窮屈さを感じます。これはPHEVモデル用に、後席下にバッテリー搭載スペースを取っているためでしょう。
■いよいよ実走!! レクサス RX350の乗り味は!?
レクサスRXのアクセルペダルはブレーキペダルと近く、共踏みをしてしまう可能性を感じた
アクセルペダルの角度が不自然です。オルガン式で下側の取り付け点が斜めに、ブレーキペダル側に寄っています。
この位置だと、緊急時にブレーキペダルを奥まで思い切り踏み込んだ時、少し足元がズレると靴のサイドがアクセルペダルの下部に当たり、共踏みになる恐れもあります。なぜこうしたのか? 私はオルガンペダルの内側はもう少しブレーキペダルと離すべきと思います。
さていつものように歩くほどの速度で動き出して、ステアリングを大きく左右に切ると……、いいですね。この感じはカムリで感じた反応のよさを感じます。決してクイックではありませんが、左右で反応差はありませんし、リニアです。ロードノイズは小さく、高級車の乗り味です。
ただ、40km/h前後で連続する路面ペイントの波状路面を通過すると、小さな入力の抜きはスムーズに乗り越し高級車の乗り味でいいのですが、リア回りにブルブル振動が残ります。
カムリやレクサスESも同様でしたが、このプラットフォーム系列全般で感じます。フロア接合部とサスペンション取り付け部の剛性不足と思われます。
2.4Lターボエンジンは低い回転からしっかりとトルクを出していて、重たいRXの車体を軽快に走らせます。モーターの組み合わせのない純内燃機関としては、不満のない中低速域のトルク特性です。音もきれいで、不快な音も室内に入ってきません。
操縦性はフロントのロール剛性を高めにして、リアとのバランスを上手く合わせています。FF的なフロントの慣性重量を感じません。硬すぎることはなく、かといってフワフワするような動きもなく、うまいチューニングです。
コーナリング時のロール変化や操舵に伴う前輪キャンバー変化を上手に合わせて接地面を活かし切れています。ショックアブの減衰特性も含めて合わせ込んだドライバー、実験部の仕事がみごとです。この乗り味は700万円のクルマの価値があります。
せっかくここまで足のセッティングを合わせ込んだのですから、ブレーキはもっと後輪配分を大きくしたいです。ちょっと前輪寄りすぎで、後輪ブレーキ力を使えていません。フルブレーキングでノーズダイブが大きすぎます。これは要改善点です。
■いよいよ実走!! マツダ CX-60 XD-HYBRIDの乗り味は!?
いざ実走。CX-60のペダル配置は標準的。前後とも足回りには厳しい評価だが、エンジンの作り込みには満足げな表情をみせる水野氏
アクセルペダルはこちらもオルガンタイプですが、斜めに配置されることはなく、ブレーキペダルを慌てて踏み込んだ時に共踏みする恐れは低いと思います。これが当たり前の思いやりです。
さて、ゆっくりと走り出します。リアの硬さを感じます。ステアを左右に大きく切ると、フロントは軽快というよりも、軽薄なまでにフラフラ動きます。
リアショックアブの伸び側減衰が強すぎます。連続する波状路面の微小な段差を40km/h前後で通過するとよくわかります。トントントン……と通過するのですが、凸部で縮んだリアサスが伸びて戻る前に(縮んだ状態で)次の凸入力があり、これが連続して、ボトミング現象(底付き感)が出ています。
しかもリアサスアームの取り付け部がピロボールのため、前後に微小に動いて吸収する「ブッシュのタメ」がなく、より鋭い感じでこの突き上げは入ってきます。
R35GT-Rでもピロは使っていますが、前後方向にはピロは使わず、硬めのブッシュマウントにして「動きのタメ」を作っています。
突起の入力時に、微小にタイヤを前後に動かし「動きのタメ」で上下方向の衝撃をいなしてやるのです。固めればいいというものではありません。日本刀は「しなりがあるから切れる」のです。
さらには、ピロを採用したことによる製造精度の特別管理も必要です。
私はR35GT-Rの開発では、ニュルを走るテスト車両のサスの動きを高速度カメラや各種センサーを使ってデータ集積をして、サスペンションの動きやタイヤの変形と、同時にドライバーの運転操作の変動などを、製造する精度のバラツキ分も含めて計測や解析をして、裏付けをとりながらサスペンションの開発は進めました。
話をCX-60に戻します。コーナリングでは、フロントのロールが大きく、沈み込みも速く動きすぎ。さらに、下り坂の旋回姿勢も前のめりで、タイヤのスキール音も容易にでます。
前輪の接地面が生かし切れていないことに加え、リア内輪の接地荷重も少し抜けぎみです。急制動ではノーズダイブが大きく、リアサスが伸び切らず、後輪の接地も不安定です。
エンジンはいいですね。アクセルを踏んだ瞬間にマイルドハイブリッドモーターが反応をしてトルクが立ち上がり、エンジン本体のトルクとしっかりつながってスムーズにトルクが盛り上がっていく。
これは基礎解析をしっかりとやって、時間をかけて作り込んでいったことがわかります。大排気量ガソリンエンジンのようなフィーリングです。決してドカンとパンチがある盛り上がりではありませんが、上質さを感じる高級車のエンジンです。
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みんなのコメント
普通に正々堂々と勝負したら、普通にライバルメーカーに惨敗だと思う。
昔から。