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荒 聖治が挑むウインタードライブ! :SUV×ライトウェイト×ホットハッチ編【Playback GENROQ 2020】

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荒 聖治が挑むウインタードライブ! :SUV×ライトウェイト×ホットハッチ編【Playback GENROQ 2020】

Maserati Levante Trofeo × Alpine A110 × Renault Megane R.S. Trophy

マセラティ レヴァンテ トロフェオ × アルピーヌ A110 × ルノー メガーヌ R.S. トロフィー

荒 聖治が挑むスーパースポーツのウインタードライブ! :フェラーリ GTC4 ルッソT編【Playback GENROQ 2020】

冬を楽しめ:パート2

マセラティで雪深い山中を走る──ロマンはあるが車高の高いレヴァンテならなんなくこなせる? SUVの皮を被ったスーパーカーであるトロフェオは雪上で驚くほどの性能を発揮するのか確かめた。そして究極の雪道と言えば、モンテカルロラリーだ。新生アルピーヌ A110 ピュアで雪道を走った。帯同するのはルノー メガーヌ R.S. トロフィー。2台の対極のクルマで仮想ウインターラリーに挑戦する。テスターはパート1に引き続き荒 聖治が務める。

「ニュートラルなステアバランス──ウインタータイヤで590psを堪能できる」

雪の中に佇むマットブラックのマセラティ レヴァンテは、自らがトロフェオという特別な存在であると強調しているようだった。ひと目でマセラティとわかるデザインと、特殊なボディカラーの組み合わせは人里離れた雪山の中で見ると、あらためてただならぬ迫力を感じてしまう。

レヴァンテ トロフェオはフェラーリ由来の3.8リッターV8ツインターボを搭載し、レヴァンテ・ラインナップの最高峰であると同時にマセラティ最新ラインナップでも最高出力となる590psを誇るSUVだ。今や世界中のプレミアムブランドが参入するSUVの中でも、トップクラスの俊足を誇る。実際最高速は304km/hで大台を超えている。なぜそんなSUVを雪道へ? と問われれば広報車のレヴァンテ トロフェオがウインタータイヤを装着していたからだ。それはつまりマセラティ自身が雪上性能の高さを自負していることの証なのである。

なるほど雪上では、さすがSUVという印象でウインタータイヤでもワインディングをぐんぐん上っていく。急な上り坂でも前後のトルク配分を細かく制御して、何事もなく動き出せる安心感は雪道ではなんとも頼もしい、と言ってもウインタータイヤは凍った路面ではスタッドレスほどグリップしないので、まずは安全マージンをしっかりとって様子をみながら走らせる。

「ABS介入時にさらにブレーキペダルを踏みこむと制動力が増した印象があった」

圧雪路ではタイヤが雪をしっかりと噛み込んで、ブレーキングでも減速する感覚があるが、アイスバーンでは注意が必要だ。特に下り勾配でのブレーキングではABSも介入して止まれない!? と一瞬焦るほどだ。ここでひとつ発見したのは、アイスバーンでABSが介入している時にさらにブレーキペダルを踏みこんでみたところ、制動力が増した印象があったことだ。タイヤのグリップを最大限に活かすための制御が働いたとしたらすごいことだ。条件や様々な要素があると思うので正確なことは言えないが、まずい!と思ったら強く踏んでみるのは悪くない。

ウインタータイヤのグリップの範囲内で走らせている時には、ステアバランスもニュートラルで、雪でも凍結路面でもステアリングが効き、しっかりと旋回してくれる。コーナー立ち上がりで加速体勢に移っても、アンダーステアやオーバーステアが極端に出ることなく安定して走れた。これならウインタータイヤでも十分冬を越せそうだ。

感覚が掴めたところで、徐々にペースを上げる。制動感は抜群だが、ブレーキで攻め過ぎるとやはり車重を感じる。だがタイヤのグリップレベルに対して正確にスピードを合わせてコーナーに進入すると、ステアリングを切り込んだ瞬間から良く曲がる。トレイルブレーキを使って前後荷重量を調整するとリヤが流れ、スライド状態に持ち込んで楽しめる。クルマに大きなドリフトアングルが付いてしまっても、パワーオンでフロントタイヤが引っ張ってくれるので、簡単にスピンしてしまうようなこともない。

「綺麗にスライドアングルを維持して走らせるには繊細なコントロールが必要」

590psと高出力だが、スロットルペダルのストローク量に対してリニアにパワーが得られるセッティングだから、扱いにくい部分がない。これは“やれる”と思わせてくれる。AWDとはいえ、なにしろ3.8リッターV8ツインターボだ。590psは雪上でいとも簡単に4輪ホイールスピンしてしまうが、その手前で適度にスロットルをコントロールすれば、どの回転域からでもパワーを引き出し、強引にスライドさせられる。しかしアクセルを踏み過ぎると、フロント駆動配分が多くなりすぎて、アンダーステアとなる。

綺麗にスライドアングルを維持して走らせるのは意外と繊細なコントロールが必要だった。ちなみにドライブモードはICEモードで出力を低減し、オフロードでトラクション性能が上がった。もっとも過激なコルサではスライドが楽しめた。

ウインタータイヤで雪上を十分走れるのは確認できた。重心が高く、2.3トンの車重では、ウインタータイヤもあってフラつきが気になるのではないか?と予想していたが乾燥した舗装路を走り出せばタイヤはしっかりして、フラつきや応答性の悪さは感じなかった。乾燥した舗装路ではワインディングも良く曲がり、車重はそれほど感じない。コーナリング時にロール量が少なく抑えられているため、ワインディングでも乗用車感覚で走れる。

「破天荒な走行性能から快適で安楽な移動までその守備範囲は広い」

こういったハイパフォーマンス系のSUV系は、サスペンションのスプリングレートが高く設定されているモデルが少なくない。このレヴァンテ・トロフェオもご多分にもれず、市街地やワインディングといった車速の領域で少しゴツゴツした印象が少し気になった。ただし、これはトロフェオというスポーティなキャラクターだからだ。22インチの低扁平タイヤの影響もあるだろう。

テストコースでの試乗を終えて、そのまま高速道路に入って、東京を目指す。高速道路での速度域ではその印象が変わった。クルマ全体がフラットな状態でスムーズに直進してくれることもあり、安定性や快適性が抜群に良い。破天荒な走行性能から快適で安楽な移動までその守備範囲は広い。だからこそ世界中でSUVが人気なのだ。

世界中の自動車メーカーがこぞって参入するSUV市場。最前線とも言えるそのカテゴリーに、各自動車メーカーの個性と技術が投入されている。このレヴァンテも美しいデザインの下には本格的なAWD機構が組み込まれていた。

「この2台で仮想モンテカルロ・ラリーを走破しよう」

走り出す前からイケると感じていたのだろうか。コクピットに座ると、無意識にスポーツモードを選び、ESCをオフにしていた。

今回雪上コースで試乗するのはアルピーヌ A110とルノー メガーヌ R.S. トロフィー。この2台で仮想モンテカルロ・ラリーを走破しようという目論見だ。2台ともスタッドレスタイヤを装着しており、圧雪路もアイスバーンもどちらもレベルの高いグリップを見せる。ステアフィールやブレーキの制動感も確認できたので早速走行してみよう。

「雪の中でも252psを積極的に使って攻められるA110」

まずはA110から。テストコースをSSに見立てて、合図と共に全開でスタートした。トラクション性能、スタッドレスタイヤのグリップも良い。スロットルを深く踏み込んであえてスライドを楽しむ。その感覚は楽しい!のひと言。そのままひとつ目のコーナーまでプッシュする。ブレーキングはABSが介入するかしないかのギリギリを狙ってコントロール。1発目からイメージしていたブレーキング通りにコントロールできた。これは車重の軽さと44対56というリヤ寄りの重量配分も利いているのだろう。4輪がきちんと接地して減速している感じがある。

そのままコーナーに進入すると、ターンインでオーバーステアに持ち込めた。もちろん唐突にグリップを失ってスピンするような挙動ではなく、グリップを感じながら穏やかにスライドしていく。この感覚を感じると、ついそのままテールスライドを維持してコーナーを立ち上がりたい欲望が出てくる。低回転域ではスロットル操作に対して少しもたつく感じがあるので、積極的にダウンシフトして高回転をキープした方がいい。欲しいところで必要なパワーを得られる。モンテカルロを彷彿させる、狭い雪のワインディングで積極的に2速ギヤを使って走る。

A110が良いクルマだと感じるのは、フロントタイヤの位置をドライバーが把握しやすいだけでなく、リヤタイヤの通っている軌跡もイメージしやすいところだ。走らせている内にハイテンションになってきた。アウト側の雪壁ギリギリまでコース幅を使って、雪を巻き上げて走ると気持ち良い。スロットルを積極的に踏んでいくほどバランスが良く、安定したリヤに対して、ステアすればフロントがシャープに入っていくイメージだ。雪の中でも252psを積極的に使って攻められる。ミッドシップの走りを楽しむと、ゴールの山頂はあっという間だった。

「ラリードライバーが多く使うテクニック“フェイント”を使うと気持ちいい」

次はメガーヌ R.S. トロフィーだ。スタートからフル加速すると、いきなり強いトルクステアが発生し、思わずステアリングを握る手に力が入った。やはり滑りやすいコンディションでは、効きの強いLSDが装着されたFWD車の特性が顔を出す。しかしステアリングをしっかりと握り、フロントタイヤを自分が狙った方向にしっかりと向ければクルマは狙ったところに突き進む。スロットルを開け過ぎてしまうと300psがフロントタイヤの限界をすぐに超えてしまうが、丁寧にコントロールすれば、クルマの動きやステアバランスも乾燥路面での挙動に近づく。

コースの中盤あたりから特性が掴めてきたので、ブレーキもギリギリまで攻め込んていく。ブレーキング時の制動力や安定性も高い。コーナー進入時にトレイルブレーキを使ってコーナーに入ると、クルマはリヤが流れてオーバーステアの姿勢になった。リヤが流れても不安はなく、むしろ積極的にリヤを流して走りたくなるほどだ。ドリフトに持ち込むテクニックのひとつにフェイントという技があり、これはラリードライバーが多く使うテクニックだ。ブレーキングしながら左右に揺り返しを使ってクルマの姿勢を変化させると、これが驚くほど気持ちいい。

今回の雪上テストでは、2台ともまるでラリードライバーになったような気持ちにさせてくれた。特にA110は雪の状況に関わらずバランスの良さと軽量が強い武器となるのを確認できた。

REPORT/荒 聖治(Seiji ARA)
PHOTO/平野 陽(Akio HIRANO)

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