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「SUBARU BRZ」でカーボンニュートラル社会に挑む! バイオマス燃料でS耐久参戦! ゼロから開発とは

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「SUBARU BRZ」でカーボンニュートラル社会に挑む! バイオマス燃料でS耐久参戦! ゼロから開発とは

■合成燃料を使用した「SUBARU BRZ」でスーパー耐久に参戦!

 2021年のスーパー耐久最終戦(岡山)の定例会見にて「モータースポーツの場を活用してGR86/スバルBRZの次世代モデルの先行開発を公開しながら行なう」「カーボンニュートラル燃料の実証」も兼ねるというこれまでの自動車開発の常識を大きく変えたプロジェクトが発表されました。
 
 スバルとしては、2代目となった「SUBARU BRZ」の開発、さらに初のグローバルBEV「ソルテラ」の開発などによってトヨタとの関係はより密接になっています。

【画像】青ボディから白ボディに! スバルの挑戦が始まった! BRZはどのように開発されている?(26枚)

 そんな関係性からスーパー耐久レース参戦の話は、以前から現場サイドでは「一緒にやりたいですよね」という話は出ていたと言います。

 そして、トヨタの豊田章男社長からスバルの中村知美社長への「モータースポーツの現場で、カーボンニュートラル燃料を使った内燃機関の技術開発を一緒にやっていきませんか?」というホットラインが決め手となったそうです。

 スーパー耐久レースへの参戦は、スバルのキーテクノロジーの1つ「水平対向エンジン」を次の世代に繋げるための挑戦に加えて、エンジニアの人材育成も大きなミッションとなっています。

 かつて、WRC(世界ラリー選手権)に参戦していた時はスバルのエンジニアも積極的にモータースポーツに参画しており、それが元で多くの人材が育ったようです。

 しかし、2008年に活動をやめて以降、その流れが途切れてしまったといいます。

 スバルの藤貫CTOはそんな危機感をずっと持っていたようで、「トヨタさんからお誘いいただいた時、クルマ1台を見ることができるエンジニア、アジャイルに開発ができるエンジニアを育成できるチャンスだと思いました」と語っています。

 スーパー耐久レース参戦の監督は、スバル研究実験センターのセンター長である本井雅人氏。

 同氏はスバルドライビングアカデミー(SDA)の創設に関わった1人です。

「SDAはエンジニアの運転スキルと評価能力を高めるスバルの人材育成の取り組みの1つですが、スーパー耐久レースへの参戦はその延長線上にあると認識しています。

 量産車のエンジニアは『モータースポーツは自分達とは管轄が違うので』と言う人が多いですが、『いやいや、クルマである以上は何も変わらない。つまり、量産技術に繋がる』という事を、身を持って理解してもらいたいですね」

 ちなみにスバルのモータースポーツは子会社のSTI(スバルテクニカインターナショナル株式会社)が担当していますが、今回のプロジェクトはスバルが担当します。

「この挑戦は『クルマづくりを改めて学ぶ』という『人材育成』が目的なので、我々が直接やらなければ意味がありません」(藤貫氏)

 そのため、当初は「勝ち負け」よりも「参加する事に意義がある」というテーマだったそうです。

 しかし前述の最終戦で行なわれた記者会見にて中村社長の「レースはガチンコ勝負ですので、競い合いながら、カーボンニュートラル実現に向けて挑戦していきたい」という発言から流れが少し変わったと言います。

 たしかに過去を振り返ると、モータースポーツの世界でスバルは「インプレッサWRX STI」で、三菱「ランサーエボリューション」との戦いの歴史を行なった経験があります。

 本気で競い合うからこそ、クルマも人も成長する。それは昔も今も変わりません。

■「GR86」と一見変わらずも…大きく違う「SUBARU BRZ」の開発コンセプト…その真意とは

 参戦マシンはどうでしょうか。

 レースマシン制作はSUBARU技術本部の社員が担当。

 メンバーは各部署から集められていますが、専任ではなく本来の業務と兼務となっているのも特徴の1つでしょう。

「GR86」は最初から大幅なモディファイが行なわれていますが、スバルは「ベース車の素性を探る」ということで量産モデルから大きな変更を行なっていません。

ただ、各部は一見同じに見えますが、実際は異なるそうです。

「量産車は様々な制約で出来ない事もあります。レースは用途が限定されるので、それらも試すことができます。エンジン、ボディ、サスペンションなどには、様々なアイデアを盛り込んでいますよ」(本井氏)

 ロールケージを見るとGR86とは異なり、アイサイトのカメラの位置を上手く逃がした構造である事。量産車に装着されているBSM(後側方車両接近装置)をあえて外さずにそのままにしている所など、運転支援デバイスの活用も視野に入れているそうです。

 伸び代としては、GR86よりも大きいような気がしています。

 ただ、レースマシンの製作は一筋縄ではいかなかったものの、スバルは特に若い人のマンパワーで、ほぼ予定通りにねじ込んでくれたといいます。

 また、後日独自にスバル研究実験センター内で各部の動作確認とチェック走行が行なわれたそうです。

 それと並行して、2022年1月26日に中村社長や藤貫CTO、本井監督、ドライバーを担当する井口卓人/山内英樹選手と廣田光一氏(スバルのエンジニア)、さらにはレースオペレーションを担当するプローバの吉田寿博社長を交えて、スーパー耐久レース参加の決起会が開催されました。

 ゼッケン番号はスーパーGTと同じ「61」を取得した事、最初は信頼を確保しながら年間を通じて出力を上げていくことなどが報告されました。

 この際、豊田社長から中村社長に「是非、参戦してほしい」というお誘いには苦笑いだったようですが、「中村社長のドライビングスキルはかなり高い」(本井氏)との事なので、どこかのタイミングで試乗を行なう可能性はあるかも!?

 その時は、豊田社長とガチンコ勝負を是非ともお願いします(笑)。

 ちなみに、このタイミングで2021スーパーGT GT300クラスのシリーズチャンピオンを獲得した井口/山内選手に、中村社長からポスター(新聞広告の物)とBRZのモデルカー(各々の名前が刻印されたプレート付で世界に1つだけ)が手渡されました。

 ドライバーの二人とも「家宝にします」と喜びの表情だったといいます。この流れをぜひスーパー耐久レースにも繋げて欲しいです。

 このマシンがシーズンを通じてどのように進化・成長をするのか? 

 そしてGR86とのガチンコ勝負の結果はどうなるのか? 

 筆者(山本シンヤ)はその戦いを“平等”かつ“冷静”に追いかけていきますので、ご期待ください。

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みんなのコメント

3件
  • ホンダは先日、EVに使用するバッテリーを中国製にすると発表していたように、急速にEV化が進行してしまった場合、日本の産業が対応できず、経済が一気に衰退してしまうおそれがあります。
    EVではなく内燃機関を利用したカーボンニュートラルの達成は、日本の自動車業界を守ることと世界的なカーボンニュートラルの流れを両立できるため、ぜひとも各社推進していただきたいです。
  • 正直、全ての車をBEVにするのは、発電も含めて困難。欧州が手のひら返しても動じないようにトヨタグループは、全方位開発して行くのかな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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