現在、日本のクルマ市場において、スポーツカーの人気は低い、と言っていいい。
そこでボクは考えた。
なぜスポーツカーの人気がないのだろうか、と。
スポーツカーはイメージがよくない?
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そもそもスポーツカーは女性に対するイメージがよろしない。
ボクも、およそスポーツカーといわれるクルマを何台か乗り継いできたが、世間における女性たちの反応はあまり芳しくないようだ。
そしてその反応は大体において、下記に集約される。
「クルマオタク」
「クルマに人生とお金すべてをつぎ込んでそう…」
ここでボクは思う。
クルマオタクであることも、クルマに人生とお金をかけることも悪いことではない。
それらの一体どこが悪いというのだろう。
そこでボクなりに考えてみたのだが、彼女たちはスポーツカー乗りに対して本能的にこう感じるのかもしれない。
・スポーツカーに乗っている人はクルマにすべてをかけているので、自分には時間もお金も割いてくれなさそう
・結婚しても、クルマにばっかりお金を使って、家にお金を入れてくれなさそう
つまりスポーツカーに乗っている男とは、家庭的ではなく、生涯の伴侶としても不向きである、という認識なのかもしれない。
その昔、スポーツカーはステータスシンボルの一つだった
だがしかし、今では信じられないことだが、スポーツカーに乗っているというだけでモテた時期もあった。
そう、バブルの時代である。
あの頃は日産シルビアやホンダ・プレリュードの全盛期だった。
トヨタ・スープラに乗っていようものなら、それは大変なことになったものだ。
その頃の彼女らのスポーツカー乗りに対する認識は、「お金を持っていそう」だったのだろう、とボクは思う。
なぜ当時はそう考えられていたのか?
スポーツカーは実生活において無駄な乗り物だ。
人は乗らないし、モノも載らない。
そういった不便な乗り物に、わざわざお金を出して乗っている人は「お金持ち」という認識があったのだろう。
もしくは「生活臭がしない」と感じられたのかもしれない。
そしてあの頃は、その人の持ちモノでしか所得水準を判断するすべがなかったのも確かだ。
乗っているクルマや腕時計、そういったモノだ。
今の中国人を見ていてもわかると思うが、その国が豊かになればまず最初に人びとが求めるのは「モノ」である。
これは「マズローの欲求5段階説」によっても知られている。
人の欲求は低次のものから高次のものへ移行するという説で、下記の5つに分類される、というのがその節の骨子だ。
1.生理的欲求(食欲や睡眠、性欲)
2.安全性欲求(住居や衣服、お金)
3.社会的欲求(仲間など良好な人間関係)
4.自我の欲求(他者からの尊敬を集めたい)
5.自己実現欲求(自分の能力をもって創造的活動を行う、など)
この説によれば、モノは「2.安全性欲求」に属すると考えていい。
中国になぞらえて言えば、「1.生理的欲求」が満たされるようになり、「2.安全性欲求=モノの購買」へと欲求が移行しているということだ。ちょうど30年前の日本のように。
さらには実用品よりもブランド品を求める傾向にあり、「2.安全性欲求」の中においても、より高次のモノを求めているようだ。
現在の日本社会は「2.安全性欲求」を通り越し、「3.社会的欲求」「4.自我の欲求」へと移っているのだとボクは考えている。
「3.社会的欲求」については、SNSを通じて体験を共有したり、ということがその例としてわかりやすいだろう。
「4.自我の欲求」についてはさらにSNSで「いいね!」が欲しかったりフォロワーを増やしたい、という行動がまさにそれだ。
なお、マズローは晩年になり「6.自己超越(目的の遂行や達成を純粋に求める)」という項目を追加している。
スポーツカー乗りとは、より高次の存在なのかもしれない
ん?とボクはここでふと思った。
スポーツカー乗りは、「1~5(6)」のいったいどの段階にいるんだろう。
「1.生理的欲求」ではないのは確かだ。
「2.安全性欲求」とはちょっと違う。
「3.社会的欲求」や「4.自我の欲求」は一部オフ会や、みんカラでの活動においては該当するかもしれない。
「5.自己実現欲求」はけっこう近そうだ。クルマのカスタムはある意味で創造的活動と言えるだろう。
さらに「6.自己超越」も当てはまりそうだ。ボクらはそもそも世間の流行とはかけ離れたスポーツカーに、自分の満足のためだけに乗っているのだから。
そう考えると、スポーツカー乗りは現在の日本における中心的欲求段階でもある「2.安全性欲求」「3.社会的欲求」をすでに通り越した、より高次の層にいるのかもしれない。
そして、より高次の層にいるということは、「スポーツカー乗りは、世間一般よりも先にいる」ということになり、「世間が追いつくのを待つ」存在でもある。
あとどれくらいの時間がかかるのかはわからないが、必ずやスポーツカー乗りの行動が理解される日が来る、とボクは信じている。
結局のところ、スポーツカー乗りでもある自己弁護のようになってしまったが、スポーツカー乗りは「スポーツカー乗りであること」を誇ってもいい、とボクは思う。
世間からはあまり良い目で見られることが少ないスポーツカー乗りだが、ボクらは世間一般の大衆よりも高次の存在なのである。
「世間がまだ自分たちを理解できるレベルに追いついていないのだ」と広い心をもってスポーツカーに乗りたいものだ。
[ライター・撮影/JUN MASUDA]
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