VWは8代目となる「新型ゴルフ」を、2021年内に日本導入することを2月9日に発表、予約注文を開始した。
8代目の注目ポイントは、排気量 1.0L のマイルドハイブリッドシステムを採用した「eTSI Active」だ。
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Cセグのなかで世界的なベンチマークとして扱われる「ゴルフ」がどのように変わったのか、日本仕様はどのくらいの価格で登場しそうかなど解説していきたい。
文/渡辺敏史
写真/VW
【画像ギャラリー】ついに日本導入決定 !! 8代目VW「ゴルフ」本国仕様写真集
■待望の8代目「ゴルフ」日本導入が発表され、予約キャンペーンも開始
8代目となるVW『ゴルフ』が発表されたのは2019年秋のこと。2020年は欧州での銘柄別販売台数で1位に輝いている。その数、31万台余。
ちなみに同時期に発表されたVW初の専用設計BEV(バッテリー電気自動車)となる『iD.3』は欧州で約7万台の受注、2020年の販売台数は約6万台だという。
こちらが8代目「ゴルフ」1.5eTSI(本国仕様)のフォルム。ひと目でゴルフとわかるデザインは継承されている。グレードに”e”が付くように全車48Vマイルドハイブリット車となる
これをどう見るかは人それぞれだ。が、個人的には欧州市場でのBEVの販売伸長が喧伝される、その熱波の渦中でゴルフはけっこう善戦していたんだなぁと思った。
「2025年には販売の1/3がBEVになるとか言われているけど、そんなの無理に決まってるじゃないか」
それは2019年の冬、新型ゴルフの試乗会におもむいた際のこと。欧州の拙速なBEVシフトの中、VWの中でゴルフのプライオリティは低くなっているのかとちょっと意地悪に問いかけると、お前もクルマの仕事をしているのだったらそのくらいのことはわかるだろう? と諭すようにこう答えたのは開発を担当したエンジニアだ。政治側の盛り上がりとは裏腹に、やっぱり現場は冷静なんだなぁと感じたことをよく覚えている。
と、その新型ゴルフ、本国での発売から1年以上が経つ中で、ようやく日本導入の目処が立ちつつある。
リアスタイルもやはり「ゴルフ」だが、空力的に洗練され、カッコよさが増した……気がする。早く日本に導入して欲しい期待感もマシマシだ !!
この3月末までVWのディーラーでは予約注文キャンペーンを実施中。注文時にオプション5万円相当をサポートするのに加えて、4月末までに愛車が車検を迎えるユーザーには、継続車検費用を10万円ぶんサポートして、納車時までその愛車に乗り続けられるという特典を用意している。
決算の勝機を逃すまじというわけだが、ここから推するに日本導入の正式発表はこの春、納車開始は年央あたりからという流れになるだろうか。
■欧州での発表から1年以上……日本導入に時間がかかった要因は?
それにしても新型ゴルフ、なぜこれほど導入に時間が掛かったのか。考えられる最大の理由は世界的なコロナ禍によるものだ。特に欧州では厳しいロックダウンが相次ぎ、調達や生産のスケジュールが大幅に狂ったことは想像に難くない。
そしてもうひとつの理由と目されるのが、仕向け適合作業の難航だろう。新型ゴルフの最も大きな進化のポイントはデジタライズにあり、ナビやエンターテインメント、空調や各種設定などは「イノビジョン」と呼ばれるセンターのタッチパネルモニターに統合。階層の深いコマンドも含めて、AIボイスコントロールが担う領域が広げられている。
8代目「ゴルフ」のインパネ。デジタライズが進んでおり、シンプルな印象。シフトレバーの小ささに対し、フットレストの大きさがやたらと目につくのは、足の置き場が重要になることの暗示か?
要はメルセデスでいうところの「MBUX」、BMWでいうところの「インテリジェントパーソナルアシスタンス」がVWにも採用されたということだが、固有名詞を含む地図連動などもあり、この日本語環境構築が相当に手間であることは想像に難くない。
一方で、今後のVWの新型車はこの新型ゴルフと同じ電子アーキテクチャーを使うことは間違いなく、システムをきちんと走らせられるか否かはほかのモデルの展開にも関わってくる。
実際、僕も新型ゴルフが路上テストを行う姿は昨春頃から頻繁に見掛けており、近頃はエンブレムなどのカモフラージュもなく丸裸で走る姿を目撃した。発売に向けての具体的な動きが始まったということは、こういった関係者の労が日の目を見る、その目処が立ったということだろう。
■気になるグレード展開や進化など8代目「ゴルフ」の注目点とは!?
新型ゴルフのグレード展開はベーシックな「スタイル」、装備充実の「アクティブ」、スポーティな「Rライン」の3つとなる。
搭載されるエンジンは、スタイルが1L 3気筒直噴ターボ、アクティブとRラインは1.5L 4気筒直噴ターボ。いずれも48Vマイルドハイブリッドシステムが組み込まれた「eTSI」となる。組み合わせられるミッションは恐らく7速DSGとなるだろう。
エンジン本体は1Lが『Tクロス』に、1.5Lが『ポロRライン』に搭載され、すでに日本でも展開されているものがベースだ。マイルドハイブリッドシステムはベルトドリブンのスタータージェネレーターが低速域のパワーアシストや高速域でのコースティングにも積極的に関与する仕組みで、約10%の燃費改善効果が期待できるとVWは発表している。ちなみに1.5Lの側には気筒休止システムも採用されているのが特徴だ。
EV化がどんどん進行しているイメージの強い欧州車の中で、ガソリン車の環境性能の向上に力を入れているのも特徴ではないか? 1.5L車はモーターアシストのほかに気筒休止機能も備える
新型ゴルフのプラットフォームは最新世代の『MQB』で、グリーンハウスをみればおわかりのとおり、基本的には7代目の車台を熟成している。さかのぼれば5代目から6代目へのフルモデルチェンジがこれに相当するものだった。ゆえに、寸法や重量的なところも7代目と大差ないところに収まるはずだ。
海外での試乗会で乗ることができたのは、アクティブやRラインに相当する1.5 eTSI搭載モデルだったが、動力性能についてはまったく申し分ない。スタータージェネレーターの連携は至極スムーズで、コースティングからの再始動時もまったく違和感を伝えてこなかった。ちなみに新型ゴルフは全車電動ブレーキブースターを採用している。
このモーターアシストの塩梅と、Tクロスの動力性能を脳内で組み合わせながら推するに、1.0 eTSIの走りは7代目の1.2L 4気筒のそれにほど近いところに達していると思う。
ちなみにマイルドハイブリッドなしの1.0 TSIは0~100km/h加速は10.2秒、最高速は202km/hと発表されているが、1.0 eTSIはこれにモーターアシストが加わるぶん、発進からの加速も快活になるだろう。3気筒ゆえの雑味については4気筒に遜色なしとは言わずとも、そもそもこのエンジンはバランサーレスながら振動をしっかり封じた設計となっている。仕上がりは未知数ながら悲観することはないはずだ。
ハンドリングなどのダイナミクスについては、可変ダンパーとESP、電子制御LSDを連携させてアジリティとの高次元での両立を目指した新しいシャシー制御技術「ドライビングダイナミクスマネジャー」の採用がポイントとなるが、こちらが搭載される可能性があるのはRラインということになるだろう。
ライドフィールについては正直なところ、上出来だった前型のゴルフから長足の進歩は感じられなかったが、1年半の時を経て熟成が進んでいる可能性も充分考えられる。
ADASについても車車間通信などが日本仕様に反映されるかは不明だが、アダプティブクルーズコントロールとアクティブレーンキープアシストの応答精度は大幅に向上、ドライブサポートの快適性は確実に高められている。
8代目は、自動車にとって変革期に入った時代に登場した。新型コロナ流行の影響もあり静かな登場となった印象が強いが、クルマ界のベンチマークとしてこれからも君臨できるのか? 注目したい
日本での価格はまったく不明ながら、ADASやインフォテインメントなどの装備更新、マイルドハイブリッド化、欧州価格などを鑑みれば、260万円余だった前型のスタートプライスと同等以下になることはかなり難しいだろう。エントリーモデルとなる『1.0 eTSIスタイル』が300万円という一線にどれだけ寄せられるかがポイントとなりそうだ。
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みんなのコメント
ゴルフ(大衆車)第1主義も終焉の始まりなのですかね。。。?