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EVやハイブリッド、本当にエコか 生産/流通/廃棄で生じるCO2の実態

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EVやハイブリッド、本当にエコか 生産/流通/廃棄で生じるCO2の実態

もくじ

ー 製造から廃棄まで 生涯のCO2排出
ー 1 燃料の生産/流通で生じるCO2
ー 2 クルマの生産で生じるCO2
ー 3 クルマの使用で生じるCO2
ー 4 クルマの廃棄で生じるCO2
ー 従来車と電気自動車のCO2比較
ー CO2排出量の計測 より正確に?

EUの自動車CO2規制、2021年さらに厳格化 2つの「追い打ち」も 生き残るは4グループのみか

製造から廃棄まで 生涯のCO2排出

世界でもっとも環境にやさしいクルマは? とてもかんたんな質問だとあなたが考えたとしても仕方がないだろう。どこかにリストがあるはずだと。

何といっても、排気ガスが規制の対象になっている。しかし、法規制が無視しているもっと重要なことは、クルマの製造から廃棄までの生涯にわたるCO2排出量だ。

最近では、ほとんどのメーカー、科学機関、それにリカルド社のようなエンジニアリング・コンサルタントがライフ・サイクル・アセスメント(LCA)を実施している。

評価結果は公表されているが、現在使われている単純な排気ガスの数値と矛盾している場合がままある。

リカルドはLCAを主要な4ブロックに分割。燃料製造と流通、クルマの生産、クルマの使用、そしてクルマの廃棄だ。各カテゴリーでCO2が排出されるのにも関わらず、法規制ではクルマの使用部分のみが対象となっているのだ。

以下で、本当に自分のクルマが「エコ」なのか、考えるきっかけになれば幸いである。

1 燃料の生産/流通で生じるCO2

アナリストが最初に考慮するのは、一次エネルギー源、つまり燃料の原料だ。

原油から作られるガソリンと軽油が排気ガスを作りだすのは自明だが、原油からの抽出、精製に要するエネルギーのCO2負荷という要因のほうが実は大きいのだ。

バイオ燃料でも走行中にCO2は排出されるが、これは植物が成長する過程でCO2を吸収することで相殺される。環境への優しさを推し量る際には、燃料の製造と流通において発生するCO2も考慮されるべきである。

走行中のバッテリーEVからのCO2「排気」は、充電に使われる電気を製造する際に発生するCO2に依存する。

2 クルマの生産で生じるCO2

クルマによるCO2の排出はクルマが走りだす前から始まる。設計、開発のプロセス(何千もの人が試験や事務作業をするオフィスの光熱費など)はあまりCO2排出に寄与しない。

原材料から完成品までのサプライ・チェーンを考慮に入れると、製造工程のほうがずっと影響は大きい。材料の選択、パワートレイン、サイズ、重量、その他すべての要素がクルマのカーボン排出量に影響してくる。

3 クルマの使用で生じるCO2

ここでようやく排気ガスの話になるのだが、リカルドによれば、ミドル・サイズのガソリン車の場合、15万kmが寿命だとすると生涯CO2排出量に占める割合は70-80%だ。

15-20%は生産時のものである。ミドル・サイズのバッテリーEVの場合、生産の占める割合はより大きくなる。間接的に「排気」されるCO2は52%、これは充電に使用される電気のエネルギー・ミックスに依存する。一方、生産時のCO2は46%である。

ミドル・サイズのディーゼル車では、走行中のCO2排出量は少ないが生産時のCO2量は多くなる。従って生涯CO2排出量で比べると、同じサイズのガソリン車とディーゼル車ではほとんど差がない。パーツや消耗品を含むメンテナンスの寄与分も小さい。

欧州でのCO2計測はNEDC試験に基づいているが、NEDCは2017年9月により実際の使用に近いWLTP試験に置き換わった。

NEDCの数字が実測値に比べ楽観的過ぎることはよく知られているが、いまだに公式な欧州CO2指標のベースになっており、修正が必要だ。

4 クルマの廃棄で生じるCO2

生産時と同様、クルマのサイズや重量、技術、使用されている素材など様々な要素のすべてがクルマを廃棄する際のCO2排出量に影響する。

解体する際のロジスティック、作業員、材料のリサイクルや廃棄物も同様だ。

もしクルマの解体が容易でパーツの大部分が再製可能であれば、廃棄時のCO2インパクトは少なくなるだろう。廃車にはEUの手続きが必要であるが、現状ではCO2排出に関する様々な角度からの情報が不足している。

従来車と電気自動車のCO2比較

発電時のCO2排出量を1kWhあたり500gとすると、ガソリン車やディーゼル車に比べ、バッテリー電気自動車の生涯CO2排出量はやはり少ない。

実際には、英国ナショナル・グリッドの発電は300g/kWh程度とよりクリーンになっており、このためバッテリー電気自動車もさらにクリーンになる。

しかし、EVの生涯CO2排出量の半分近くが生産時のものであり、バッテリーだけでそのうちの40%以上を占めている。このため、滅多にないことだがバッテリー交換が必要になった場合には、EVの生涯CO2排出量は同サイズのガソリン車とほとんど変わらなくなる。

完成間近のテスラのギガファクトリーのようにEVバッテリーの大量生産が可能になれば、バッテリー製造に伴うCO2排出量は減少することになる。製造技術の最適化、工場での再生可能エネルギーの使用なども貢献する。

真の意味で「ゼロ・エミッション」のEVなど存在しないことだけは確かである。

CO2排出量の計測 より正確に?

燃料の製造、クルマの使用と廃棄のフェーズに関しては、欧州にはクルマの環境負荷を減らすためのしっかりした規制がある。しかし何より重要な生産工程に関しては野放し状態だ。

ライフ・サイクル・アセスメントが規制として意味を持つために必要なこととして、リカルドは材料やプロセスに含まれるカーボンの詳細を記載した一元化されたデータベースの構築を提案している。

これにより廃車となるクルマの環境負荷や使用中のクルマのCO2排出をより詳細に把握することができるようになる。

全体的には既存のシステムの代わりにLCAを用いることにより、クルマのカーボン排出量をより正確に計測できるようになったという報告が増えている。そしてさらに重要なことは、何が環境に優しく何がそうでないかに関する新たな知見を LCAが与えてくれることだ。

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