欧州では2020年9月、日本では年内のデビューが予定されている新型Sクラス(W223)の詳細が少しずつ見えてきた。(Motor Magazine 2020年9月号より)
SFの世界を思わせるキャビンモジュール
ドイツ国内における新型コロナウイルスの感染が広がる中、シュツットガルト郊外、ジンデルフィンゲンのメルセデス・ベンツ開発センターでは完全感染防護姿で固めたエンジニアたちが、カモフラージュを施したプロトタイプで忙しく行き来していた。
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関係者の話によれば、厳重な擬装の下にあるのは2020年9月にワールドプレミアを待つ、次期Sクラス (W223)であることに間違いはない。11世代目にあたるこのSクラスの開発は15年から新しいMRA-II(メルセデス後輪駆動アーキテクチャー2世代目)とともにスタートした。
フレキシブルな適用性を持ったモジュールのおかげでボディサイズは40mm ほど延長され、4WSも採用される。さらに注目なのは安全装備で、サイドクラッシュに際してはボディを自動的にリフトアップさせ乗員を保護する。またバリエーションはクーペやカブリオレはキャンセルされ、スタンダード、ストレッチバージョン、AMG、そしてマイバッハの4種類となる。またV型12気筒エンジンは継続搭載されるようだ。
そして今回取材したSクラスのティザーイベント「次世代MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス)」では、次期Sクラスに搭載される新しいインフォテインメントシステムの詳細を知ることができた。
コクーンのような新型Sクラスのキャビンモジュールが我々の前に用意され、まずはドライバーズシートに腰を下ろす。まさにそこはSFの世界で、まず、ドライバー正面の10.6インチディスプレイには3D機能が搭載されている。当然のことながら3Dメガネなどは不要で、実像のように奥行きの深い画面から情報を得ることができる。またオプションで2種類のヘッドアップディスプレイが用意されているが、グレードアップバージョンはAR(拡張現実)が採用され、たとえば左折の場合には実際の道路上10m先に矢印が照射されているような画像となる。
車内での支払いシステム時のセキュリティも確保
このシステムはドライバーの正面に77インチのモニターがあるのと同じ効果を持つ。さらにこの正面のモニター内にはカメラが内蔵されており、シートに腰を下ろすと同時に、事前登録した7名の人物を特定し、その人のプロファイル、たとえばシート&ドアミラー調整、エアコン温度、ナビゲーション目的地の履歴、好みの音楽(選局)などを即座に提供する。
圧巻はセンターコンソールの12.8インチOLED(有機EL)タッチスクリーンで、フィードバック機能によって誤操作を防ぐようになっている。また車内からのデジタル支払いシステムを利用する際のセキュリティ確保のために指紋認証、あるいはクラシックな暗証番号も登録可能だ。
Sクラスゆえに、もちろんリアシートにも最大3台のモニターが並び、ここではすべてのパッセンジャーが走るオフィスとしてインターネット経由で仕事をすることができる。また「ヘイ メルセデス!」で起動する音声入力システムは進化し、「ヘイ、メルセデス、ラジオのジャズ番組を探して、近くのレストランまで行って!」と連続したふたつの指令を理解するようになった。さらに認識学習能力も備わっており、利用者がたとえ母国語を使わなくても、理解してくれるようになった。
搭載される自動運転システムはレベル3に相当するもので、法的な制約がなければすぐに作動させることができると言われる。将来的にはスマホによる自動バレーパーキングも実現可能なはずだ。
この新型Sクラスはジンデルフィンゲンに21億ユーロを投資して落成された近未来な工場で作られる。もちろんカーボンニュートラルを目指した設備で、年産20万台がラインオフすることが可能だ。未来が近づいてくるのを感じたワークショップだった。(文:木村好宏)
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