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開発者の「あそび心」から生まれたS660! 消えゆく名車の7年を振り返る

掲載 更新 32
開発者の「あそび心」から生まれたS660! 消えゆく名車の7年を振り返る

 もともとは試作車止まりで市販化の予定はなかった

 ホンダのミッドシップ軽オープンピュアスポーツカー「S660」は、3月12日に発売された特別仕様車「モデューロXバージョンZ」を最終モデルとして、2022年3月に生産を終了。多くのファンに惜しまれながら、7年間の生涯に幕を閉じる。

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 20歳代にして本田技術研究所史上最年少でLPL(開発責任者)に抜擢された椋本陵氏が生産終了発表のビデオメッセージで語った、S660の原型となるモデルの企画立案から開発・発売までの経緯に加え、その後に発売された改良モデルや特別仕様車、モデューロXについても振り返りながら、その軌跡を追ってみたい。

 椋本LPLは「10年ほど前の日本のスポーツカー市場は高価格・高スペックなモデルが中心でした。『クルマ離れ』という言葉を耳にするようになったのもこのころです」と述懐する。

「自分にも手が届き、誰もが性能を余す所なく使い切れるもっと身近なスポーツカーがあれば」という想いを抱いていたが、ちょうどそのころ、2010年に、本田技術研究所50周年を記念して行われた新商品提案コンペに「どうせ落選するだろうけど出してみよう」と企画書を作り、見事グランプリを受賞したのが、S660の始まりだった。

 その結果、「コンペに勝ったご褒美に実物大のモックアップを作ってもよい」ということになったが、当時椋本LPLが所属していたのはまさにモックアップと作る部署だった(椋本LPLは2007年にモデラーとして入社)ため、「それだけでは面白くない」と、自走可能なモデルを内緒で作ることにしたのだという。

 その後先輩たちの手も借りながら、曲線基調のデザインが愛らしい軽自動車サイズのオープンスポーツカーの試作車を完成させるも、「自分たちで乗って『楽しかったね』ですべて終わる予定だった」。だが、それが当時の社長の目に留まり、「こんなのがあるなら量産化しよう」と、急遽量産に向けた開発をスタートすることになった。

 そのLPLには企画発案者である椋本氏が選ばれたが、当時まだ22歳。開発メンバーは公募制としながら、経験豊富なベテラン開発者3名をLPL代行として脇を固める形で、開発チームを結成している。

 だが、チーム発足から間もない2011年3月、東日本大震災が発生。栃木にある本田技術研究所も大きなダメージを負ったため、働く場所もない状態からのスタートになった。

 しかしながら、2011年12月に開催された東京モーターショーにコンセプトカー「EV-STER」を出品すると、来場者から大きな反響を得たことで、開発が大きく加速。「その期待に応え、超えるために、理想のスポーツカーについて真剣に議論し、疑問があれば乗ってみる。試してまた議論をする」。それらの経験がS660に活かされたのだという。

 その結果固められた理想のスポーツカー像は、「『見てよし、乗ってよし』で、心を昂ぶらせることができるスポーツカー」。デザインはEV-STERのテイストを市販車でも再現できるよう、デザイナー、モデラー、エンジニアが知恵を出し合いながら完成させた。

 これまでにも多くの特別仕様車が登場した

 走りについては「痛快ハンドリングマシン」というコンセプトを掲げ、「通勤中の交差点を曲がるだけでも痛快アクティブになれるクルマ」を目指し、ドライバーの身体とクルマが一体となり、思い通りに操れる感覚を重視した。クローズドボディではなくオープントップとしたのもそれが大きな理由だという。

 そうして出来上がったS660は特殊な構造を持つ少量生産モデルのため、当時の八千代工業四日市製作所(現・ホンダオートボディー)に生産を委託。椋本LPLは「その現場に何度も足を運び、一緒になってクルマを作り上げた」と当時を振り返っている。なお同社は発売以降、ファンを工場に招いたイベントを開催している。

 S660は2015年3月30日のデビュー当時より現在に至るまで、上級タイプ「α」と廉価モデル「β」の2グレードを基本としているが、その当初より特別仕様車を数多く設定している。

 ローンチエディションと言える660台限定モデルの「コンセプトエディション」は「α」をベースに、2013年11月の東京モーターショーに出品された「S660コンセプト」モチーフとして、専用レッドステッチ入りのアシンメトリーカラースポーツレザーシートを運転席に採用したほか、ボルドーレッドロールトップ、2トーンカラーサイドミラー、内部ブラック塗装エキパイフィニッシャーなどを標準装備した。

 2017年には、6月2日から11月30日期間限定で、「α」をベースに特別色ベルベットマルーン・メタリックを設定したほか、内装も専用のジャズブラウン本革とし、ブラックのドアミラーとアルミホイールを装着してシックな装いを与えた「ブルーノレザーエディション」を設定。

 さらに「β」のCVT車をベースとして、特別色ヒダマリアイボリー・パールを設定したほか、内装色をライトタンとし、ブラウンルーフトップを装着して温かみのある雰囲気をまとった「コモレビエディション」を、同年11月10日から2018年1月31日までの期間限定で販売している。

 2018年5月24日には、ホンダアクセスが手掛けるコンプリートカー「モデューロX」を発表する(発売は7月6日)。

 同社が掲げる“実効空力”のコンセプトに基づいた前後バンパーおよびガーニーフラップ付きアクティブスポイラー、前後5段階減衰力調整機構付きサスペンションを専用開発したほか、スポーツブレーキパッドとドリルドディスクローターを標準装備。内装には本革とラックススェードを多用しながら、ボルドーレッドとブラックの2トーンに仕立てることで、走りと内外装の質感を大幅に向上させた。

 また同年12月21日には、ブラウンロールトップやブラッククリア塗装の専用アルミホイール、専用トラッドレザーインテリアなどを標準装備して、ブリティッシュライトウエイトスポーツカーさながらの佇まいを持たせた特別仕様車「トラッドレザーエディション」を発売。

 2020年1月10日には最初で最後のマイナーチェンジを行い、「α」「β」「モデューロX」とも内外装の質感を一段と高めている。

 そして2021年3月12日、ファイナルエディションとなる特別仕様車「モデューロXバージョンZ」を発表。2022年3月の生産終了まで残された時間は1年と余りにも短いが、熟成が進んだS660を新車で、好みの仕様に仕立てられるのは今しかない。

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みんなのコメント

32件
  • 以前乗っていたが
    Dに売っても我々には儲けがないとそっけない対応をされた。
    生産終了で喜んでるのはD。
  • F1もロボットも皆飽きたらポイ

    ホンダのポリシーって、その程度なんだね

    ジェットも数年後には終了してそう(笑)
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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