燃費の悪さを指摘され、一度は表舞台から退場したターボエンジンが、いま再び脚光を浴びている。
発端は、小排気量化による高効率化を目指し、フォルクスワーゲン ゴルフなど欧州車に幅広く採用されたことだが、この流れはハイブリッド全盛の日本車にも波及。いまや国産ターボ車のラインナップも豊富だ。
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そこで、本稿では排気量別に国産ターボのベスト3車を選出。ダウンサイズ志向のエンジンとは一線を画し、性能面で傑出したエンジンがあるのも「ターボ」の面白さといえるだろう。
文:鈴木直也/写真:編集部
ベストカー 2019年5月26日号
【1~1.4L】光るスイフトのバランス良さ
スイフトスポーツ/エンジン:直列4気筒DOHCターボ・1371cc、最高出力:140ps/5500rpm、最大トルク:23.4kgm/2500-3500rpm、価格:183万6000円(6MT)
一般ユーザーにとって、エンジンは載せられたクルマの一部として体感するもの。当然、車体の出来の良し悪しや、クルマのキャラに印象は左右される。
このクラスはスイフトの1-2フィニッシュとしたが、それはまさにスイフトというクルマの開発コンセプトにエンジン特性がうまくマッチした結果。
軽量なボディにトルクフルなダウンサイズターボエンジンという組み合わせが、力強いドライバビリティをもたらしている点を評価した。
さらに、このクラスとしては珍しい6速ステップATを採用したトランスミッションも、素晴らしい見識。
ターボは過給ゾーンに入った時のグッとトルクが盛り上がる感覚が醍醐味だが、そこをダイレクトに味わうにはCVTよりステップATが適している。パドルシフトでキレのいいシフト操作が可能なことも嬉しい。
エンジン単体については、1.4L(K14C型)は140ps/23.5kgmとパワフルだがトップエンドでの頭打ちが早めで、6ATとの組み合わせでは気にならないものの、6MTだとしばしばリミッターに当たるのが唯一の弱点。
3位はカローラスポーツの1.2Lターボエンジン(8NR-FTS)で、トヨタらしくバランスのとれた扱いやすいエンジン特性を評価。
ただ、扱いやすいがゆえにトルク特性がマイルドで、過給エンジンらしいパンチに今ひとつ欠けるのが惜しい。6MTだけでも、ハイオク専用でもうちょっとシャープなチューニングにしたらいかがでしょう?
【1.5~1.6L】伏兵現る!? 望外に優秀なエクリプスのターボ
エクリプスクロス/エンジン:直列4気筒ターボDOHC・1498cc、最高出力:150ps/5500rpm、24.5kgm/2000-3500rpm、価格:275万5080円(M 4WD)
このクラスでターボに1番力を入れているのはホンダだが、基本的には燃費とドライバビリティ重視のダウンサイズターボ。日本のユーザーにターボを選んでもらう動機づけにはちょっと弱い。
ホンダにはターボに注目してもらうためのひと工夫がほしいと思うなかで、挙げたいのがL15B型ターボエンジン(※ヴェゼル等に搭載)。
性能そのものは1.5L級ターボではトップクラスで、172ps/22.4kgmというスペックはヴェゼルと組み合わせたらかなり強力。ワンランク上の力強いドライバビリティが堪能できる。
が、実際に乗ってみるとスペックから期待するほどのパンチがない。僕のみるところ、本来ググッとくるはずの加速感の盛り上がりが、CVTを経由することでぼやけている印象があるのだ。
同じCVTではあるが、ミッションを含むパワートレーン全体の爽快感でいうと、より好ましいのはエクリプスクロスの1.5Lターボだ。
三菱ターボの伝統か、馬力は150psと控えめだが、トルクは24.5kgmとヴェゼルをしのぐ。過給ラグも事実上ゼロといっていいほどスムーズで、軽やかでダイレクトな加速感が心地よい。
レヴォーグの1.6L水平対向4気筒ターボは、このクラスのダウンサイズターボの先駆けとなったエンジンだが、170ps/25.6kgmというスペックのわりにトルク感が希薄。CVTも走りの楽しさに貢献しているとは言い難く、3位止まりに……。
【2~2.5L】WRXよりタイプR!? 二強の軍配は??
シビックタイプR/エンジン:直列4気筒ターボ・1995cc、最高出力:320ps/6500rpm、最大トルク:40.8kgm/2500-4500rpm、価格:450万360円
世界的に見ても2Lターボで最強の一台がシビックタイプRだ。エンジンスペックは320ps/40.8kgm。
先代よりわずか10psのアップだが、全体的にワンランク凄みを増した印象がある。トルク特性は超フラットで、かつ6000回転以上までストレスなく伸びてゆくのが素晴らしい。
この強力なエンジンに対し、シャシーの備えも万全。エンジンとシャシーがともに高度なレベルでバランスしているところは、まさに1位にふさわしい。
次点はWRX S4のFA20型ターボ。スペックこそ300ps/40.7kgmとシビックタイプRに肉薄する。もちろんパワフルではあるが、トルクの厚みや高回転域のキレ味など、僅かずつシビックタイプRに及ばない。
決定的なのは、やはりCVTのドライブフィールで、速く走ろうとすればするほど隔靴掻痒のもどかしさが募ってくる。
3位は、最近トヨタがラインナップを拡充している2Lターボ(8AR-FTS型=クラウン等に搭載)。
トヨタの狙いは2.5~3L、V6の置き換えだが、スペックは245ps/35.7kgm(クラウン)となかなかパワフルで、目論見どおり3.5L、V6に匹敵するレベル。優秀な8速ATとのマッチングもよく、高級車として申し分ないパフォーマンスを発揮してくれる。
ただ、8AR-FTS型はバランスに優れるがゆえにターボらしいキャラが薄い。この辺が3位となった理由。
【3L超】GT-RにNSX 高性能ターボの頂点は!?
NSX/エンジン:V6 DOHCターボ・3492cc(+モーター)、エンジン最高出力:507ps/6500-7500rpm、エンジン最大トルク:56.1kgm/2000-6000rpm、価格:2370万円
このカテゴリー、レクサス LS用の3.5Lターボ(V35A-FTS型)を除くと、ほぼスポーツカー専用。
その最たるものが、NSX用のJNC型3.5Lターボ。V6としては異端のバンク角75度、重心高を下げるためのドライサンプシステムなど、妥協を許さぬパッケージングが特徴。
トランスミッションも、このエンジン専用の9速DCTが組み合わされるなど、量産車ではありえない贅沢な設計方針が貫かれている。
おまけに、そこに3モーターのハイブリッドシステムが加わるのだから、その複雑さはまさにF1のパワートレーン並み。システム最高出力581ps/65.9kgmを絞り出す。ハイテクを極めた強烈なパフォーマンスは、このクラスの金メダルにふさわしい。
次点は今やローテクエンジンとなったR35 GT-RのV6・3.8Lターボ(VR38DETT型)を挙げたい。
デビュー時点では480psのパフォーマンスだったが、現行NISMO仕様では600psまで向上。すでにデビューから10年以上が経つが、いまだに世界のスーパーカーに伍してトップレベルの性能をキープしている。
ただ、メカニズム的にみるともはや古典的。電動化を取り入れた次世代エンジンの開発が待たれるところだ。
最後に3位、冒頭でも触れたレクサスLS用V35A-FTS型。422ps/61.2kgmというスペックは、量産型V6としては立派なスペックといえる。
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