1980年代、「クロカン」ブームを支えた4WDが、各自動車メーカーから続々と発売された。この連載企画では、今でいうSUVとは、ひと味もふた味も異なる「泥臭さやワイルドさ」を前面に押し出したクロカン4WDを紹介する。第5弾は「ランドクルーザー70」だ。
1960年に登場した「ランドクルーザー40」の伝統を引き継いだランクル70
今から70年前。日本政府とGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)は、1950年に編成された警察予備隊(現:自衛隊)へ納入を目的として、自動車メーカー数社に4輪駆動車の試作を依頼した。翌年、トヨタは戦時中に開発したコードネームAK10を手本として「トヨタ・ジープBJ」を開発した。ちなみに現日産は「パトロール」、現三菱自動車は「ジープ」をそこで完成させた。結局、納入は三菱ジープに決まったが、これを機にトヨタ・ジープBJは、国家警察(現:警視庁)に納入することになり、1953年に量産を始めた。翌1954年に「ランドクルーザー」と改名し、ここからランドクルーザーの長い歴史が始まった。
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1955年、ランドクルーザーは早くもモデルチェンジを施し、20系を誕生させた。「ランドクルーザー20」は、国内はもとより海外進出し、そのニーズに答えるべくボディバリエーションを増やしていった。その後継が1960年に登場した「ランドクルーザー40」だ。それまでガソリンエンジン搭載車のみだったが、マイナーチェンジでディーゼル車を追加した。これが功をなし、オイルショックが訪れた際には、燃費がよくて力持ちのディーゼル4WDのランドクルーザーが重宝されたのだ。ブランド力を高めることに成功したランドクルーザー40は誕生してから四半世紀、いよいよモデルチェンジを迎えた。
ショート、ミドル、セミロングのボディ形状の他に幌車も設定
1984年、この伝統を引き継いで登場したのが「ランドクルーザー70」だ。ボディバリエーションは、ショート、ミドル、セミロングの3パターンを設定し、ショートボディには幌車もラインナップされた。この時代、ライバル達はオンロード寄りの設定に少しずつに変わっていく中、ラダーフレームに前後リーフリジッドをはじめ、「空力がどうした?」と言わんばかりのスクエアボディや、工場の機械のように整然としたインテリアなど、選ぶ人に媚びない芯の通ったスタイルは、本格派のオフローダーを牽引する存在になった。
とくに、1986年にオプション設定された悪路走破性を高めるデフロックは、通常リア用があるだけでも十分タフなイメージだが、ランクル70はフロントにも設定した。またマニュアルハブ(後デュアルオートロッキングハブ)やスチールバンパーに埋め込まれたウインチなど、オフロードオタクの心をくすぐるマニアックな装備を揃えていた。
だが1999年、オフロード4WDファンに衝撃のニュースが届いた。耐久性が高く実用的と言われたランドクルーザー70のフロントリーフを操作性の高いコイルへ変更するという。実際に性能がスポイルされることはなかったが、これにより、国産オフロード4WDの前後リーフ車はいよいよ消滅することとなった。
2004年に国内販売を終了、そして10年後に奇跡の復活を遂げた
一方、搭載エンジンは登場から退役までディーゼルのみだった。当初は直4ディーゼルの3B型(3431cc/98ps)と直4ディーゼルターボの13B-T型(3431cc/120ps)を設定。1990年には大規模なリニューアルが施され、直6ディーゼルの1HZ型(4163cc/135ps)と直5ディーゼルの1PZ型(3469cc/115ps)に変更された。1994年からは排出ガス規制により1PZ型を廃止し、全車1HZ型に統一された。しかし、排出ガス規制はさらに厳しくなり、ディーゼルエンジンに対する風当たりはいっそう強くなった。この影響を受け2004年、ランドクルーザー70は最大限に惜しまれながら国内販売を終了した。
だが、何年経ってもランドクルーザー70の根強い人気は止まなかった。その熱い要望に応えるべく、2014年に1年間限定で、復刻版が登場した。エンジンは、FJクルーザーやプラドに搭載されていたV6ガソリンの「1GR-FE型(3955cc/170ps)」。これに5速MTを組み合わせた。ボディはロングとピックアップの2種類。少し近代化が進み、若干丸みを帯びたボディに、あの印象的な丸目ではなかったものの、それでもファンは大歓迎だった。そもそもランクル70をこういった形で再販できたのは、現在も海外へ輸出されているからだ。走破性と耐久性を備えた拘りのワークホークス、そのニーズは相変わらず高い。初代ランドクルーザーの直系ランドクルーザー70は登場から36年間、マイナーチェンジを遂げながらも、堂々たるその姿で働き続けている。(文:田尻朋美)
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