ドラージュD8(1929年)
(翻訳者注:この記事は後編です。これより以前のモデルについては前編で紹介しています)
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1926年にグランプリカー用に1.5Lのスーパーチャージャー付き直列8気筒エンジンを開発して大成功を収めたドラージュ(Delage)は、高級車D8にも同じレイアウトの4.1L自然吸気エンジンを導入した。
D8は1940年まで生産されたが、その頃にはドラージュはドライエに買収されていた。D8には複数の直8エンジンが用意されたが、さまざまな理由(性能の向上や税制対応など)から、その排気量は2.6Lから4.7Lまで幅広い。
ヒルマン・ストレートエイト(1929年)
2.6Lのヒルマン・ストレートエイトは、ウーズレー21/60の8気筒バージョンに匹敵する有力なライバルだったが、高価なだけでなく、ベアリングの不具合ですぐに評判になった。そのため売れ行きは低調だった。
ヴォルティック(Vortic)への名称変更を伴うアップデートも、あまり役には立たなかった。ストレートエイトは1932年まで販売されていたが、これは古い在庫を処分するためのもので、その頃にはすでに生産が終了していた。
ランチェスター30hp(1929年)
ランチェスター(Lanchester)唯一の直列8気筒エンジンは、4.4Lのオーバーヘッド・カムシャフト・ユニットで、30hpに搭載されていた。当時の多くのクルマと同様、世界恐慌の最中に人々が買いたいと思うようなものではなく、100台も生産されなかった。
生産自体は1930年以降も続けられたが、ランチェスターはBSAグループによって買収されることになり、(ドイツではなく)英国のデイムラー社と提携したのである。
ルーズベルト(1929年)
直列8気筒エンジンを搭載したクルマは高価か、少なくとも中程度の価格でなければならないという常識は、3.3Lのルーズベルト(Roosevelt)の登場によって吹き飛んだ。ルーズベルトは、直8エンジンを生産していたマーモン(Marmon)が作ったサブブランドで、その唯一のモデルだった。
特筆すべきのは、マーモン68が1465ドル、マーモン78が1965ドルだったのに対し、ルーズベルトはわずか995ドルだったことだ。これは現在のお金に換算すると約1万8000ドル(約260万円)に相当し、現在米国で販売されている最安価クラスの1つである三菱ミラージュの希望小売価格とほぼ同じである。
ピアスアロー・モデル125および126(1929年)
ルーズベルトよりもはるかに裕福な顧客層をターゲットにしたモデル125(写真)と126は、スチュードベーカーに買収されたばかりのピアスアロー(Pierce-Arrow)が初めて生産した直8搭載車である。
エンジンはいずれも6.0Lだが、1930年代初頭には6.3Lに拡大された。両車の主な違いはホイールベースで、モデル125が133インチ(約3380mm)であるのに対し、モデル126は143インチ(約3630mm)であった。
ルノー・レインナステラ(1929年)
今では想像しにくいかもしれないが、第二次世界大戦前のルノーは高級車で有名だったため、遅かれ早かれ直列8気筒モデルが登場するのはほぼ必然だった。案の定、7.1Lのプロトタイプが1928年のパリ・モーターショーで一般公開され、翌年にはレイナステラ(Reinastella)と名前を変えて発売された。
同社初の8気筒車であると同時に、ラジエーターをエンジン後方ではなく前方に取り付けた初のルノー車でもある。
デソート・シリーズCF(1930年)
短命に終わったダッジ・シリーズDCと並んで、デソート(DeSoTo)はクライスラーの新型フラットヘッド直列6気筒を搭載した最初期のモデルである。クライスラーは1928年にデソートのブランドを創設し、翌年にダッジを買収した。
当初は3.4Lであったが、後にはるかに大型化され、1931年に初めてクライスラーブランドのモデルに搭載された。最終的にファイヤーパワーV8に置き換えられる前年の1950年まで、サラトガとニューヨーカーに5.3Lのエンジンが搭載されていた。
ハドソン・エイト(1930年)
ハドソン(Hudson)は1930年、グレートエイトと呼ばれるモデルに3.5Lエンジンを搭載し、直8市場に参入した。1931年には3.8Lに、1932年には4.1Lに拡大された(グレーターエイトと呼ばれるようになったきっかけの1つ)。
ハドソンはこの直8をやや後期のテラプレーンにも採用し、レイルトンが英国で生産した初期のハドソンベースのモデルにも同じユニットを搭載した。
ナッシュ・アンバサダー(1930年)
それまで直6を搭載していたアンバサダー(Ambassador)は、1930年にナッシュ(Nash)初の直8を導入する。この4.9Lオーバーヘッドバルブ・ユニットは、1気筒あたり2つのスパークプラグ(燃料と空気の混合気をより効率的に燃焼させるため)を持つという点で、世界でもほとんど類を見ないものであった。そのため、一時的にツインイグニッションと呼ばれることもあった。
ナッシュはその後も、より低価格の3.7Lフラットヘッドをはじめとする直8を数種類生産したが、第二次世界大戦後はこのレイアウトから身を引いた。
アルファ・ロメオ8C(1931年)
直8のアルファは1920年代のレースで大成功を収めたが、市販車に導入されたのは1931年のことだ。ル・マン24時間レースで4度の優勝を飾った8Cは、ツインオーバーヘッドカムシャフトやスーパーチャージャーを備えた先進的な2.3Lユニットを搭載している。
排気量は3.8Lまで拡大可能だったが、公道走行用としては2.9Lを超えることはなく、1939年までこの形態で販売されていた。
ビュイック(1931年)
ビュイックは1931年モデルにオーバーヘッドバルブ直列8気筒を導入し、シリーズ50(写真)をはじめすべての車種に展開した。用途によって必要とされる出力が異なり、したがって排気量も異なる。3.6Lから5.6Lまで幅広い排気量が用意された。
ビュイック初のV型8気筒エンジン(ファイヤーボール、別名ネイルヘッド)は1953年に登場し、技術的には直列8気筒に取って代わるものとなった。実際にはビュイック・スーパーに4.3Lユニットが搭載され、その後1年間は生き残った。
レオ・ロワイヤル(1931年)
「最も素晴らしいレオ(Reo)」と評されたロワイヤル(Royale)は、5.8L直列8気筒エンジンを搭載し、2種類のホイールベースと複数のボディスタイルが用意された。1931年から1934年まで販売され、レオとしては唯一、クラシックカー・クラブ・オブ・アメリカ(CCCA)によってフル・クラシックカーに認められている。
印象的なモデルであったものの、販売にはほとんど貢献できず、レオは1936年に乗用車の生産を中止し、大型トラックの生産に専念することになった。
オールズモビル・エイト(1932年)
オールズモビル107年の歴史の中で唯一の直8モデルは、1932年に直6モデルに代わって登場した。当時の排気量は3.9L、出力は87psとされていたが、1933年には90ps、1935年には100psに引き上げられた。
1937年、ストローク長を減らしボアを増やすことで、排気量を4.2Lに拡大した。それに伴い最高出力も110psに向上した。
ポンティアック・エイト(1933年)
ポンティアックは、同じゼネラルモーターズ傘下のブランドであるオールズモビルより1年遅れて直8を導入した。このエンジンはエコノミーエイトとして知られ、1933年モデルで3.7L、最高出力77psを発生したが、すぐに3.8L、87psに上昇した。
ポンティアックはゼネラルモーターズ傘下でも長く直8を使い続けた。1954年のチーフテン(写真)には127psの4.4Lバージョンが搭載されたが、その後、より大排気量で180psという、強力な新型ストラトストリークV8に駆逐された。
デイムラー・トゥエンティファイブ(1934年)
「V 26」として知られる英国デイムラーの3.8L直8は、上級モデルのトゥエンティファイブ(Twenty-Five)と、1935年秋に国王ジョージ5世に納車されたフーパーボディのリムジンに搭載された。排気量はやがて4.6Lに引き上げられ、スポーティなライトストレートエイト用に3.4Lの新エンジンが開発された。
デイムラーは、第二次世界大戦後もこのレイアウトに関心を持ち続けた数少ないメーカーの1つであり、最終的には1953年にパッカードとポンティアックより少し早く手を引いた。
ロールス・ロイス・ファントムIV(1950年)
初代ファントムIVは、当時のエリザベス王女とフィリップ王子の専用車として発注を受け、女王が即位した際には「御料車」となった。その後、さらに17台が生産され(最後の1台は1956年)、国家の運営を本業とする人々にのみ供給された。
ロールス・ロイスとしては唯一の直列8気筒エンジン車で、もともとは軍用車に使用されていたユニットだった。
クライスラー・アトランティック・コンセプト(1995年)
直列8気筒エンジンは1995年にはすっかり過去の存在となっていたが、クライスラーはこの年、アトランティックというコンセプトカーに採用した。というのも、アトランティックは1930年代のコーチビルド車に強い影響を受けており、その多くが直8エンジンを搭載していたからだ。
アトランティックに搭載された4.0L直8の起源は質素なものだった。簡単に言えば、ダッジ・ネオンの2.0L 4気筒を2基使用したものである。
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