2019年に惜しまれつつ生産終了となった、三菱「パジェロ」。40年近くのあいだ三菱の販売を支え、本格オフローダーとして、日本における四輪駆動車へのイメージアップに貢献した偉大なモデルだ。
そんなパジェロには、パジェロの世界観をコンパクトに表現した「ファミリー」が存在した。軽自動車の「パジェロミニ」、パジェロミニを普通車サイズに拡大した「パジェロジュニア」、そしてその後継の「パジェロイオ」だ。
文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:MITSUBISHI、ベストカー編集部
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元祖SUV!! 偉大過ぎるパジェロの功績
パジェロファミリーを紹介するまえに、親である「パジェロ」の歴史と特徴を簡単に振り返っておこう。初代パジェロの登場は1982年のこと。「ジープ」の製造・販売によって、すでに四輪駆動車のイメージが定着していた三菱が、乗用車感覚の強い四輪駆動モデルとして開発したモデルだ。
初代パジェロは、すっきりとしたカジュアルなデザインに加えて、オンロードでの扱いやすさや高い実用性を有しながらも、三菱らしい悪路走破性もしっかりと持ち合わせ、登場した。
その後、1991年には2代目、1999年には3代目、2006年には4代目へとバトンタッチしていくが、どの世代であっても基本的なコンセプトは変わらず、パジェロは代を追うごとに、ラグジュアリーで上質な空間や乗り心地、環境性能、運動性能を突き詰めていった。
クルマにあまり詳しくない人でも「パジェロ」という言葉を聞けばどんなクルマかイメージできるくらい有名だったし、デートで乗りたいクロカンモデルとして女性にも人気だった。
現在SUVが乗用車として定着しているのも、パジェロが基礎を築いたからだと言っても過言ではない。「パジェロミニ」 「パジェロジュニア」 「パジェロイオ」には、そんなパジェロの世界観がきっちり反映されている。
1982年登場の初代パジェロ。RVブーム、4WDブームの火付け役となった
実はこだわりのメカニズム満載!! 「パジェロミニ」
パジェロファミリーで真っ先に登場したのが、1994年登場の「パジェロミニ」だ。軽自動車ではあるが、その名の示す通り、パジェロのデザインテイストや技術が、小さなボディにギュっと凝縮されている。
3ドアに本格的なオフロード性能、ということで、何かと「ジムニー」と比較されるパジェロミニだが、ジムニーがラダーフレームであるのに対し、パジェロミニはラダーフレームにモノコックボディを組み合わせた「ビルトインモノコック」というシャシー構造を持つ。これにより40km/hでの前面衝突時の乗員障害値規制をクリアしている。
エンジンは1気筒あたり5バルブを持つ660cc 4気筒DOHC20バルブインタークーラー付きターボが設定され、四輪駆動システムは走行中に2WDと4WDを切り替えられる「イージーセレクト4WD」を採用。フロントにはマクファーソン・ストラット、リアは5リンク式のコイルスプリングサスペンションというこだわりの足回りをもち、オンロードでの操縦安定性や快適な乗り心地にもこだわった。
1998年には2代目にフルモデルチェンジ。限定車の「スヌーピー・エディション」や後期型に設定された最上級グレード「エクシード」など、パジェロミニは、パジェロの世界観を受け継ぎつつも、そのサイズを活かした独特の個性が魅力的なモデルだった。
衝撃的な派生車をもつ「パジェロジュニア」
そんなパジェロミニをベースに、オーバーフェンダーや大型のバンパーを装着し、普通車サイズとなって1995年に登場したのが「パジェロジュニア」だ。
搭載されるエンジンは排気量1.1Lで、イージーセレクト4WDももちろん搭載。ジムニーに対するジムニーシエラという関係と同じだが、パジェロジュニアでユニークだったのは、派生車種「フライングパグ」の存在だ。
1997年に登場したこの限定車は、フロント部分に丸形ヘッドランプやフォグランプ、ウインカーランプが配置され、大型のメッキグリルが中央に構える。オーバーフェンダーはドーム型で、メッシュタイプのホイールが収まっている。まるで往年のロンドンタクシー「FX4」のようなレトロな外観だ。
あまりにも個性的な外観と「フライングパグ(空飛ぶ子犬)」という不思議なネーミングが災いしたのか、販売は振るわなかったようだが、パジェロファミリーが、いろいろなライフスタイルに対応した、懐の深いモデルである事は伝わった(と思う)。
1000台限定のフライングパグ。レトロクラシックな外観で話題となったが、商業的には成功したとは言えなかった
いまでも売れそう!! ちょうどいいサイズの「パジェロイオ」
そんなパジェロジュニアの後継モデルとして1998年に登場したのが、「パジェロイオ」だ。パジェロジュニアと違い、シャシーやボディが専用設計となったことで、軽自動車規格だった室内が広々とした快適な空間となり、実用性が高まった。
エンジンは1.8L GDIを搭載し、新開発のスーパーセレクト4WD-iを組み合わせることで、走行性能を大幅に向上。2002年には3ドアとFRモデルがなくなり、5ドア+4WDモデルのみのラインアップとなった。
デザインもパジェロをそのまま小ぶりにしたようなエレガントで洗練されたスタイリングとなり、「パジェロでは大きすぎるし、パジェロミニでは小さすぎる」という需要に見事に応えた。モデルチェンジで最新のメカニズムを搭載し、デザインをモダンに進化させれば今でもそこそこ売れそうなパッケージではあるが、残念ながら2012年に生産終了となっている。
1998年登場のパジェロイオ。パジェロジュニアと違ってシャシーやボディを専用設計とすることで、室内空間もメカニズムも魅力的なパッケージングとなった
◆ ◆ ◆
パジェロファミリーは、ボディサイズは小さくても、「パジェロ」としてのメカニズムとデザインにこだわったうえで、それぞれに個性が与えられていたことで、「パジェロを所有する」というステータス性をきちんと感じられるモデルだった。
本格オフローダーで、上質なデザインなのにちょっと遊び心がある。パジェロだけでなく、これらパジェロファミリーもまた、唯一無二の存在のクルマたちだった。
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