トヨタの「シエンタ」がフルモデルチェンジ! モータージャーナリスト、今尾直樹が早速チェックした。
見極めが抜群にうまいトヨタ
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トヨタの新しいシエンタ。まずもって、“5ナンバー枠の3列7人乗り乗用車”という2003年登場の初代シエンタからのコンセプトを貫いている。そこがスゴい。と筆者は思う。
昔は5ナンバーと3ナンバーとで自動車税が大きく違っていた。けれど、現在は税制としての5ナンバー枠はすでにない。トヨタとしては、コンパクトさ、運転のしやすさの象徴として全幅1695mm、1.7mの壁を頑なに守っている。ある意味、スペック主義ともいえるこのこだわりは、ユーザーに伝える際のわかりやすさにもつながっている。
もし、1710mmとかに広げてしまったら、“5ナンバーの3列7人乗り”という説明ができなくなってしまう。はい。今回5ナンバーはちょっと超えましたけれど、実際上の使い勝手、取り回しは同じです。と話が長くなる。
もちろん、すぐ上にベストセラーの「ノア」と「ヴォクシー」があり、そちらとの競合を避けるためもある。そもそもシエンタはシエンタで、初代も2代目もヒット作である。ヒット作のコンセプトを変える必要はない。と考えるのも当然だ。ユーザーが望んでいる。と判断すれば、思い切って変える。そうでなければ、変えない。トヨタというのは、これは本当に必要なのか? という見極めが抜群にうまい自動車メーカーなのだ。
つまり、3代目シエンタは初代以来のコンセプトを継承した保守的なモデルチェンジ、ということになる。
ヨーロッパ車風デザイン
ところが、写真で見る限り、先代とはガラッと変わった印象を受ける。これこそデザインの力というべきで、先代のとんがったフロント・ノーズをスパッと切り落とし、「シカクマル」というシルエットを新たに提案したことが成功している。
コーナー部を丸くする「シカクマル」には、ボディをコンパクトに見せて、取りまわしのよさにつなげよう、という意図がある。プロダクト・デザイン、とりわけ自動車のデザインは機能抜きには語れない。サイド・プロテクション・モールにしても、実際にぶつけても大丈夫かどうかは別にして、「気兼ねなく使える機能を素直に表現した」という説明に説得力がある。
新型のエクステリア・デザインを機能主義というのか、インターナショナルな普遍的デザインというのか、あるいは現行フィアット「パンダ」に似ているというのか、はたまたルノー「トゥインゴ」の影響を見るのか。いやいや、もっとダイレクトにルノー「カングー」とか、シトロエン「ベルランゴ」でしょ。など、ひとによって受け取り方は異なるにしても、ヨーロッパ車風で、国産コンパクト・ミニバンとしてはスタイリッシュにまとまっている。
基本的に国内専用だから、ということで、あえてヨーロッパ車っぽくデザインしてみました。というような、デザイナーのしゃれっ気さえ感じる。だって、もしもこれをイタリアにもっていったら、「おお、7人乗り、ジャイアント・パンダ!」みたいなことがSNSを通じて広がるでしょう。
というのは筆者の妄想だとしても、1950年代のヨーロッパ車調のボディ色もシックで、とてもいい。とりわけ、テレビCMで使われているアーバンカーキは、ルノー・トゥインゴみたいだ。と思ったけれど、この色、現行「RAV4」ですでに使われている。グレイッシュブルーもしかりで、現行RAV4に設定がある。
狙いはシックな色。もさることながら、これまではなんの因果関係もなかったRAV4と同じボディ色をまとわせることで、新型シエンタとRAV4を同じ色の組に入れ、ツール感、タフギアな感じを連想させようとしているのである。
結局いちばん売れるのは、ホワイトパールクリスタルシャインという長い名前の白色であるとしても、シックなボディ色のクルマの選択肢が増え、風景がシックになるとしたら、こんなに素晴らしいことはない。
ミニバンのテイストは変わりつつある
インテリアには明るい「フロマージュ」と、落ち着いた「ブラック」、それに「カーキ」の3タイプが用意されている。シート表皮はすべてファブリックで、3タイプも用意されていることが好ましい。若い女性をターゲットにした軽自動車から始まったのではなかったか、と筆者が記憶するファブリックのシート表皮は、最近のモデルハウスに置いてある家具にも似ていて、デラックスだとかゴージャス方面、もしくはヤンキー方面に行きがちだったミニバンのテイストが変わりつつあることを思わせる。
ある枠のなかで、ディテールを徹底的に詰める。これは本来、ニッポン人のもっとも得意とするところで、新型シエンタがとてもうまくできているように見えるのは、おそらくニッポン人がもっとも得意とするクルマづくりをおこなっているからだろう。
最後に、筆者はかねがね、この少子化の時代に誰が3列7乗りの小型車を欲しがっているのだろう……と思っていたけれど、トヨタもそうみたいで、新型シエンタの発売と同時に、東京・江東区豊洲にあるショッピング・センターの「ららぽーと豊洲」で「シエンタ ドッグパーク」と題した愛犬家向けのイベントを8月28日(日)までの期間限定で開いている。ファミリー層だけでなく愛犬家にもアピールして、マーケットを広げよう。と考えているのだ。
ミニバンというのは生活に密着した存在であり、新型シエンタは私たちのライフスタイルの変化を鏡のように映し出している。であるとすれば、これはもう売れます。
トヨタも月販基準台数8300台とかなりのボリュームを見込んでいる。この数字を、本年7月の販売台数の統計に当てはめてみると、第3位の日産ノートの8371台に次ぐ、第4位となる。同月のノアとボクシーを足した数が9044台だからトヨタの期待も大きい。
文・今尾直樹
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みんなのコメント
何処かの真似して少し装備プラスして安く売る
当然安からあちこちボロが出るw