理想を追求したPPE すべてがエンジン版と別物
ポルシェ・マカン・エレクトリックには、有能な初代の後を継ぐという、重要な命題が課せられている。ただし、その達成は簡単ではない。クラストップの走行性能に実用性、長距離の快適性、運転の楽しさなどを叶える必要があるからだ。
【画像】期待通りに優秀 ポルシェ・マカン・エレクトリック サイズの近い電動SUVたち 全124枚
実際、現状の電動モデルの多くは、運転体験でエンジンモデルを超えてはいない。航続距離や車重という、避けられない足かせもある。マカン・エレクトリックのライバルは、ヒョンデ・アイオニック5 Nではなく、2025年で引退する同郷のエンジン版といえる。
今回は、マカン 4Sエレクトリックを中心に、グレートブリテン島でその完成度を確かめたい。ポルシェらしさは宿るだろうか。
ゼロエミッションの理想的なマカンを作るため、同社はプレミアム・プラットフォーム・エレクトリック(PPE)という名のプラットフォームを開発した。容姿は従来のエンジン版と似ているが、技術的にはまったく異なる。エンブレムすら、共有していない。
これはアウディとの共同開発で、Q6 e-トロンも採用することは、AUTOCARの読者ならご存知だろう。電動アーキテクチャは、電圧800Vで稼働する。2026年に登場予定の、カイエン・エレクトリックのベースにもなる。
現在のポルシェは、エンジン版のマカンとカイエンが、ベストセラーの2トップ。売上の50%以上を占めている。PPEプラットフォームが、極めて重要なブランドの土台を担うことは、想像に難くない。
バッテリーは95kWh ターボでは640ps
マカン・エレクトリックは、4種類が提供される。シングルモーターで後輪駆動の素のマカンと、ツインモーターで四輪駆動のマカン 4に、マカン 4S、マカン・ターボという構成が組まれている。
駆動用バッテリーは、ニッケル・マンガン・コバルト(NMC)が正極材のユニットで、容量は95kWhの共通。各セルは角柱で、急速充電は270kWまで。残量10%から80%までの回復は、最短21分でまかなわれる。
最高出力は仕様で異なり、マカンは361ps。マカン 4では前後の合計で408ps。4Sでは517ps、ターボでは640psへ引き上げられる。その搭載位置は、ポルシェ911の重心バランスへ倣うように、各アクスルの後方が選ばれた。これは、Q6 e-トロンとは異なる。
ガソリンエンジンのマカン Sと比べて、車重はマカン 4で400kg重い。そのかわり、重心高は140mm地面へ近い。ボディサイズは103mm長く、15mm広く、2mm低い。
サスペンションは、マカン・ターボを除きコイルスプリングで、エアスプリングはオプション。後輪操舵システムは、4Sとターボでオプション設定される。トルクベクタリング機能付きのリアデフ(PTV+)は、ターボで標準装備。4Sでは、追加予算で組める。
カイエンへ通じる車内のデザイン 後席側にゆとり
インテリアは、最近アップデートを受けたカイエンへ通じるデザインで美しい。ドライバーの正面には、12.6インチのメーター用モニターが据えられ、中央側には10.9インチのタッチモニターが収まる。助手席側にも、オプションでもう1面を追加可能だ。
運転姿勢の調整域は広く、意外なほど低くも設定できる。オプションの18ウェイ・スポーツシート・プラスは、911 GT3のアイテムへ似たデザインで、座り心地とサポート性が素晴らしい。
センターコンソールには、実際に押せるハードスイッチが若干残る。グロスブラックのプラスティック製パネルは、高級感に欠けるかもしれない。
ホイールベースはエンジン版より96mm伸ばされ、ライバル以上になってはいないが、後席側の空間は広がった。対して、荷室の余裕はクラス上位といえる。
インフォテインメント・システムは、グーグル・アンドロイドを用いたポルシェ・コミュニケーション・マネージメント(PCM)を実装。アップル・カープレイにも対応し、音声アシスタントも利用できる。
ヘッドアップ・ディスプレイも、ご希望なら搭載可能。ドライバーの10m前方へ投影されているように、ナビのガイドなどが映される。投影面積は87インチ相当と大きく、グラフィックが目障りに感じる可能性はあるだろう。
普段使いの印象は第一級 まとまりの強い走り
果たして、普段使いでの印象は第一級。ステアリングの正確さや重み付けに加えて、アクセルペダルの自然な踏みごたえ、節度ある姿勢制御などが相乗し、ポルシェらしいまとまりを実感できる。
電動パワートレインは、想像通り淡白。517psのマカン 4Sは、間違いなく4以上に速いものの、V6エンジンを懐かしむ人は少なくなさそうだ。とはいえ、一貫性の高く洗練された操縦性が穴埋めするが。
殆どのドライバーは、回生ブレーキの強さを頻繁には変えないと判断され、その効きはタッチモニター内で調整する。ステアリングホイール上のボタンへ、変更する機能を登録できるが、パドルで切り替えられた方が望ましいと感じるのは筆者だけだろうか。
回生ブレーキは、1番強力にしても減速感はマイルド。ワンペダル・ドライブには対応していない。
乗り心地は、グレートブリテン島の一般道でも良好。アダプティブダンパーにスチールコイルの組み合わせでも、しなやかに入力は処理される。多少の揺れは残るとしても。
多くのライバルより手応えが重めのステアリングは、正確性が極めて高い。やや神経質な場面もある後輪操舵システムを付けなければ、僅かなフィードバックが伝わる、自然な反応が心地良い。
後輪駆動のマカンの操縦性は一層クリア
マカン 4Sは、グリップ力やスタビリティで、マカン 4を僅かに凌駕する。乗車には、新開発のツインバルブダンパーもセットになるエアサスペンションと、後輪操舵システム、PTV+が組まれ、見事な操縦性と姿勢制御を実現していた。
もっとも、この有無に関わらず、グリップのバランスは秀抜。ポルシェへ期待する通り、2.3t以上の車重を感じさせない、落ち着いた回頭性を味わえる。マカン 4でも、アクセルペダルの加減でコーナリングラインの調整はできる。
シングルモーターのマカンでさえ、颯爽とコーナリングし、身のこなしは不満ない。動力性能は一般道との親和性が高く、後輪駆動ということで操縦性は一層クリア。筆者なら、あえてこちらを選ぶかもしれない。
マカン・エレクトリックの英国価格は、6万7200ポンド(約1310万円)から。4Sでは、7万5400ポンド(約1470万円)へ上昇する。同クラスの中では高価な側にあるといえ、エンジン版との差も大きい。
駆動用バッテリーの容量は共通だから、より長い航続距離を求めるなら、素のマカンがベスト。ちなみに、冬場に試乗したマカン 4の電費は、4.6km/kWh。Q6 e-トロンと同等の効率ながら、クラスをリードする性能とはいえない。
動的な優位性はエンジン時代ほど高くない
期待通り、総合的に上々な仕上がりにあるマカン・エレクトリック。電動パワートレインの特徴は薄味ながら、充足度の高い走りを日常的に享受できる。ただし、動的な優位性はエンジン時代ほど高くはないだろう。タイカンとは違って。
1番お手頃なマカンでもスポーティな走りで、従来からのブランド・ファンを喜ばせられるはず。そのレス・イズ・モアという哲学も、共感を得るものといえる。
BMW iX3やQ6 e-トロンと比較し、ベンチマークを設定する高水準にあるとは表現しにくい。だが、バランスとまとまりに優れた操縦性、締りのある姿勢制御、感触が豊かで正確なステアリングなど、ポルシェらしい個性はしっかり宿している。
◯:最もお手頃なシングルモーターのマカンが、最も走りは好印象 上質で洗練されたインテリア 急速充電の能力が高い
△:エンジン時代ほど、動的な訴求力は高くない 低速域でややゴツゴツした乗り心地
ポルシェ・マカン 4Sエレクトリック(英国仕様)のスペック
英国価格:7万5400ポンド(約1470万円)
全長:4784mm
全幅:1923mm
全高:1622mm
最高速度:239km/h
0-100km/h加速:4.1秒
航続距離:511-606km
電費:4.8-5.6km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2345kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:95.0kWh
急速充電能力:270kW
最高出力:517ps(ローンチコントロール時)
最大トルク:83.4kg-m(ローンチコントロール時)
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)
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みんなのコメント
思い切ってモーターだけにしたポルシェは偉い。
デザインも良いね。ここでは非購入層の低所得層だけがデザイン批判するけど笑
このデザイン否定する人って何か昭和の年代で稼ぎが圧倒的に低い人達でしょ笑
まあ、そんな人達に分かれと言う方が困難極める笑