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SSで鍛えたホットハッチ プジョー106/205/306 ラリー プライベーターの獅子 後編

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SSで鍛えたホットハッチ プジョー106/205/306 ラリー プライベーターの獅子 後編

205 ラリーと同じ1294cc直列4気筒

プジョー205 ラリーの人気を受け、交代するように1993年に106 ラリーが登場。期間は2年と短いが、1万6500台が提供された。英国には約1000台しか割り当てられず、すぐに完売となったが。

【画像】SSで鍛えたホットハッチ プジョー106/205/306 現行の308と504ピックアップも 全110枚

プジョー106の登場は1991年だが、スタイリングに目新しさは少なかった。空気抵抗を示すCd値は0.31へ抑えられ、モダンさは得ていたものの、205のフェイスリフト版に見えなくもなかった。

それでも、シャシーはまったくの新設計。プジョーも強調したポイントではある。

106 ラリーに搭載されたエンジンは、1294ccの直列4気筒。205 ラリーと同じユニットながら、大幅に改良を受けていた。

キャブレターから燃料インジェクションへ改められ、新しいマニフォールドを獲得。シリンダーヘッドは106 XSiの1.4Lユニットから流用し、圧縮比は10.2:1へ上昇された。最高出力は101psで、205 ラリーから若干ダウンしている。

それでも、1996年にGTi フェイズ2が登場するまで、106 ラリーは最強グレードとして君臨。1998年に1.6Lエンジンを積んだ106 ラリー・フェイズ2がリリースされ、その座を奪還している。

サスペンションは、スプリングが106 XSiと共通。アンチロールバーは直径の太い専用品が組まれ、ブッシュ類も強化されていた。

106 ラリーはプライベートチームから支持を集めつつ、最小クラスのホットハッチとして多くの若者を喜ばせてきた。今回ご登場願ったブラックの1台は、ミカエル・カイユ氏がオーナー。1995年式を2014年に購入したそうだ。

気性の荒いツインキャブの質感とは好対照

「イタリアやスペインで、ラリーのレッキ(下見走行)車両として乗られてきたようです。父も106 ラリーを所有していて、レースに出ているんですよ」。購入時はフランスに住んでいた彼は、2020年に英国へ移住。クルマも一緒にやってきた。

106 ラリーのドアを開くと、205 ラリーに似た車内が広がる。全体的に華奢な印象を拭えず、カーペットは派手なレッド。防音材が省かれたドアを閉めた音は明らかに軽く、車内空間を仕切る程度の役割しかない。

シートは硬めで、サイドサポートの立ち上がりは控えめ。シンプルなダッシュボードに対し、ドライビングポジションは低めだ。

燃料インジェクションだけあって、エンジンは1発で始動。穏やかなアイドリングに落ち着いた。205 ラリーの、少々気性の荒いツイン・ウェーバーの質感とは好対照。急につながるクラッチは共通している。

106 ラリーの運動神経の高さは、容赦ない身のこなしから伝わってくるが、乗り心地は柔らかい。ダイレクトでレスポンシブ。フロントからは、ハイリフトカムが組まれた1294ccユニットの荒々しいサウンドが響いてくる。

5速マニュアルのギア比は、205 ラリーと近い。短いホイールベースのシャシーと相まって、一層刺激的だ。

しなやかなサスペンションで、レーシングカー的な印象は角が丸められているが、路面の凹凸でもボディは安定性を失いにくい。滑沢にコーナーへ飛び込みたい気にさせる。ハイペースで気付くのが、ボディのソリッドさ。実際、205 ラリーより車重は嵩む。

英国限定500台だった306 ラリー

106 ラリーの後を追うように、1994年にひと回り大きい306 S16が登場。英国では、GTI-6として売られた。このクラス上のホットハッチもヒットし、装備を簡略化した306 ラリーが1998年に導かれる。

生産は英国限定で僅か500台だったものの、熱い走りを好む小さな市場を満たした。安全性を多少犠牲にし、保険料は上昇したが。

パワートレインのアップデートは、ほぼなし。エアコンとパワーウインドウ、リアシートの分割構造、防音材を省略することで、65kgのダイエットを果たしたが、基本的にGTI-6と変わりはなかった。

エンジンは2.0LのXUユニットで、16バルブ・ヘッドが載り169psを発揮。トランスミッションは6速マニュアルが組み合わされた。

306の特徴といえたのが、パッシブステア・リアアクスルを備えたリアサスペンション。当時のホットハッチとして、最高の操縦性を叶えている。

世界ラリー選手権で暴れた306 マキシのように、306 ラリーも英国のラリーステージで強さを証明。プジョー・タルボ・スポーツ部門のトリコロールカラーが各部へあしらわれ、GTI-6より695ポンド安い価格設定でファンの期待に応えた。

今回ご登場願ったレッドの306 ラリーは、トム・コリンズ氏がオーナー。2018年に購入し、自動車イベントだけでなく、通勤でも日曜日のドライブでも素晴らしい体験を与えてくれるという。

最近は価値が上昇し、乗る機会を制限しているそうだ。現在、英国でナンバー登録されているのは89台しかない。205 ラリーの約40台と比べれば多いけれど。

山道を飛ばす以上に、能力の幅が広いプジョー

「自分はプジョー306で運転を身に着けたようなものです。これで5台目。結婚し、家族が増えてセカンドカーが必要になり、プジョー・オーナーへ復帰する絶好のタイミングだと考えました」。トムが笑顔を浮かべる。

ドライビングポジションはやや高め。路面の凹凸を、しなやかなサスペンションが巧みに均す。コーナーでは不備なく車重を制御する。チャレンジングなルートを飛ばすだけではない、能力の幅が広いプジョーだ。

発進させるとすぐ、洗練性へ気付ける。ベンチタイプのシートが備わる後席も、空間にはゆとりがある。ギア比がロングで、クルージングは安楽。エンジンのサウンドも控えめ。中回転域のトルクを引き出せば、唸りを伴いながら鋭く速度を高める。

操縦特性は、いかにも前輪駆動らしい。フロントタイヤを軸とする、繊細なバランスを隠さない。ラリーマシンのように、リアタイヤを盛大に振り回せる。さらに65kg軽くすれば、実際のスペシャルステージでも活躍できそうに思える。

3世代続いた「ラリー」だったが、プジョーは勢いを増すホットハッチ・カテゴリーから手を引いてしまった。ルノー・クリオ(ルーテシア) 182トロフィーが、フランス勢としてそのバトンを繋いだといえるが、残念な結果だと思う。

もっとも、実際のラリーステージでも、前輪駆動ハッチバックの時代は終わりを告げていた。勝利の名声をショールームでの訴求力へ展開できるのは、四輪駆動の次世代へシフトしたのだった。

協力:プジョー・スポーツ・クラブUK

プジョー205/106/306 ラリー 3台のスペック

プジョー205 ラリー(1988~1992年/欧州仕様)

価格:9367ポンド(新車時)/2万ポンド(約322万円)以下(現在)
販売台数:3万111台
全長:3705mm
全幅:1572mm
全高:1360mm
最高速度:189km/h
0-97km/h加速:9.6秒
燃費:12.4km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:790kg
パワートレイン:直列4気筒1294cc自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:103ps/6800rpm
最大トルク:12.2kg-m/5000rpm
ギアボックス:5速マニュアル

プジョー106 ラリー(1993~1998年/欧州仕様)

価格:8995ポンド(新車時)/1万ポンド(約161万円)以下(現在)
販売台数:1万6500台
全長:3564mm
全幅:1605mm
全高:1330mm
最高速度:186km/h
0-97km/h加速:10.6秒
燃費:12.4km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:810kg
パワートレイン:直列4気筒1294cc自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:101ps/7200rpm
最大トルク:11.1kg-m/5400rpm
ギアボックス:5速マニュアル

プジョー306 ラリー(1998~1999年/英国仕様)

価格:1万5995ポンド(新車時)/1万ポンド(約161万円)以下(現在)
販売台数:500台
全長:4030mm
全幅:1692mm
全高:1380mm
最高速度:209km/h
0-97km/h加速:7.8秒
燃費:10.6km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1163kg
パワートレイン:直列4気筒1998cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:169ps/6500rpm
最大トルク:20.0kg-m/5500rpm
ギアボックス:6速マニュアル

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  • 205ラリーの前には、104の3ドアをベースにしたZSラリーと、104のブランド違いであるタルボ・サンバ・ラリーがあった。またサンバの前にはクライスラー・サンビーム・ロータスやリアエンジンのシムカ1000ラリーの系譜があった。そしてサンバ・ラリーはそのベース車やプジョー309がそうであるように、コベントリーの旧クライスラーUKで開発された英国車だった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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