街中を走っているクルマを見ていると、日本のナンバープレートって「デカくてカッコ悪りい」と思うことがよくありませんか?
体格は同じ!! 心臓も同じ!! Z4とスープラはどこで差を感じるのか
特にスポーツカーはフロントバンパーの開口部が大きいので、ナンバーが邪魔。冷却性能はもちろん、高速走行時の空力値に影響してくるんじゃないかと思っているのですが、なぜに日本のナンバープレートで、こうもダサいのでしょうか?
ということで、モータージャーナリストの清水草一さんと、ベストカーWEB編集部小野が、ちょっと大げさですが、日本のナンバープレートを見直そうじゃないか会を発足し、さっそく議論してみました。
文/清水草一
写真/ベストカー編集部 ベストカーWEB編集部 国土交通省 一般社団法人全国自動車標板協議会
■日本のナンバープレートはデカくないか?
日本のナンバープレート形状はダサい! ヨーロッパみたいな横長にならないのか! と思っているクルマ好きは少なくないだろう。ベストカーWEB編集部小野もそのひとりだ。その小野が吠えた。
ベストカーWEB編集部小野(以下編集部) 欧米のナンバープレートは横長で、デザインや空気抵抗に影響を与えないような形状ですが、日本のナンバープレートはムダに面積が大きくてダサいと思いませんか? そろそろ世界標準に近い形状にすべきだと、清水さんから提案してください。
清水草一(以下清水) 君は欧米のナンバープレートは横長と誤解しているが、横長なのは、ヨーロッパ(タテ110mm×ヨコ520mm)で、アメリカは日本と同じタテヨコ1:2(タテ152.4mm ×ヨコ304.8mm。つまり6インチ ×12インチ)だ。ただしサイズは、日本のほうがやや大きい(タテ165mm×ヨコ330mm)。
時代をさかのぼってみると、日本のナンバープレートは、大正時代には色や文字の大きさだけが定められていて、プレートには決まった大きさがなかったようだ。
戦後、昭和26年に、漢字一文字(地名)+数字が6ケタ(1段)に改められたので、現在よりかなり横長で、タテヨコ1:3くらいになった。
それが現在のような形になったのは、昭和30年(1955年、下の写真で中央一番上の黄色のナンバープレート)のこと。当時のナンバープレートの大きさは、タテ155mm、ヨコ310mmで、今よりやや小ぶりだった。
このサイズは、アメリカのものとほぼ同じ! おそらく日本のナンバープレートは、アメリカに倣いつつ、インチをセンチに換えて、切りのいい数字にしたのではないだろうか。
なにしろ日本は戦後7年間、アメリカに占領されていたのだから、アメリカに倣うのが自然な流れ。外国といえばアメリカ、外人といえばアメリカ人という時代でもあった。
そう思って、一般社団法人全国自動車標板協議会に確認したところ、「ナンバープレートのサイズがどのように決められたのか、その理由まではわかりません」とのことだった。
いずれにせよ、自動車はアメリカとヨーロッパで発展してきたものなので、その一方の雄であるアメリカを真似て日本がナンバープレートのサイズを決めたとしても、無理からぬものがある。
■ヨーロッパ型は1:5の横長型、アメリカは長方形
もちろん、1:2の長方形より、ヨーロッパ型の1:5の横長形状のほうが、現代の自動車の形状にはマッチするし、空力的にも有利だ。特にフェラーリなどのスーパーカーの場合、深刻(?)な問題となっている。
たとえばフェラーリエンツォはちょうどナンバープレートが付くフロントバンバー中央下部から、空気を車体床下に導き、ダウンフォースを得る車体形状。そのエア導入口をナンバープレートで塞がれたら、せっかくの空力設計がまるでパーだ。ラフェラーリも思いっきり邪魔な存在だ。
ただ、「スーパーカーオーナーが困ってるから、ナンバープレートを横長に!」と叫んでも、世間の理解を得るのは困難。自動車のナンバープレートというのは、基本的には各国が独自に決めていて、それぞれに歴史の積み重ねもある。
ただ、アメリカが日本と同じ1:2のナンバープレートである限り、世界のクルマは1:2と横長タイプ、両方のナンバープレートが付けられる形状を保つはず。
厳密には、アメリカに輸出していないイタリア車、フランス車には、日米型のナンバープレートを考慮せずにデザインされたモデルが少なくないが、とりあえず日本がガラパゴスになる心配はない。
ちなみに、アメリカの隣国であるカナダとメキシコも、ほぼアメリカと同サイズだ。
以下、代表的な世界のナンバープレートを載せたので見てほしい。
■アメリカ・ニューヨーク州
■フランス(標準・自家用)
■ドイツ(標準、自家用)
■スウエーデン(標準、自家用)
■ロシア(標準、自家用)
■インドネシア(標準、自家用)
■中国のナンバープレートは?
編集部 じゃ中国はどうなんですか。いまや中国が世界最大の自動車市場じゃないですか。
清水 中国のナンバープレートは、漢字、アルファベット、数字の合計7ケタで、1:3の横長タイプ。ちょうどアメリカとヨーロッパの中間的なタテヨコ比になっている。
編集部 日本のよりは、まだ中国タイプのほうがいいですね。悔しいなぁ。なんとかなりませんかね?
■日本でも議論されたが横長ナンバーはボツになった!
実は日本でも数年前、ナンバープレートのサイズ変更が議論されていた。
2011年10月、国交省は「ナンバープレートのあり方に関する懇談会」を立ち上げ、そのなかで、「グローバルな動きを踏まえると、ナンバープレートの形状を横長化していく方が、我が国の国際戦略上も有利なのではないか」ということが、議題のひとつとされた。
そのほか、ナンバープレートが抱えるさまざまな課題(ご当地ナンバーや希望ナンバー、アルファベットの導入など)について、パブリックコメントが集められたが、754件のうち、ナンバープレートの形状(横長化の是非)に関するものが半数以上を占め、関心の高さを伺わせた。
わざわざ国交省に意見を送るくらいの人は、ご当地ナンバーや希望ナンバーなどよりも、形状のほうに断然興味があったということだろう。
ただし結果は、横長化に賛成が189件、反対が208件。僅差で反対が上回った。
この結果を受けて、懇談会は2012年7月、このように結論した。
「自動車ユーザーからは、『我が国のナンバープレートも海外のような横長にした方がスタイリッシュであり、望ましい』というような声も少なからず出てきているところであるが、仮に、ナンバープレートの形状を見直すこととした場合、既存車両の改修、駐車場管理などで活用されているナンバープレート読取システムの改修など、 いわば社会的コストの発生が見込まれることから、慎重な立場をとる関係者も少なくない。
また、ナンバープレートの形状の見直しに関しては、さまざまな意見があるが、社会に深く浸透したナンバープレートの形状を見直すことに抵抗感を感じる国民も少なくないなか、現時点では、ナンバープレートの形状を実際に見直すだけの正当性やメリットを十分には説明できていないことも事実である。
こうした現状を踏まえ、ナンバープレートの形状の見直しについては、社会的コストはもとより、視認性等を踏まえた見直しの是非について、引き続き検討していくこととすべきである」(『ナンバープレートのあり方の方向性 最終とりまとめ』より)
「引き続き検討」ということで、横長化は見送られてしまったのだ!
■当分、横長化されることはない……
清水 たったの7年前に流れたばっかりだから、当分無理だろうね。
編集部 そうだったんですか。悔しいなぁ。
清水 まあ、アメリカの影響の強かった国は、1:2でしょうがないかもね。隣の韓国も1:2だし。
と思いつつ一応調べてみたところ、驚愕の事実が判明した。
なんと韓国は、2006年11月から、アメリカ型からヨーロッパ型に、ナンバープレートのサイズを変えていた!
私が最後に韓国に行ったのは2010年。その時に撮った写真を見直してみたら、アメリカ型とヨーロッパ型、両方のナンバープレートが混在していた! 新しめのクルマだけが、横長のヨーロッパ型になっている。気づかなかった……。
韓国ではこの変更にあたって、ナンバー灯の位置の関係で後ろには旧ナンバーしかつかないボディ形状の中古車を登録する時、前だけ新型の横長プレート、後ろは旧型といった組み合わせも許容して対応したという。ガーン!
編集部 清水さん、韓国にできたんだから、日本にだってできるはずじゃないですか!
清水 だな。日本は高速道路の最高速度引き上げでも後れを取ったしなぁ。中韓とも100km/hだったのを、数年前に120km/hにしてるんだよね。アジアでいち早く先進国の仲間入りをした日本が、交通政策では明らかに後れを取っている!
それにしても、日本人が横長ナンバープレートのメリットに気付く日は、いつか来るのか……。
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