■2018年の限定600台は即日完売、2019年からカタログモデルに
フォルクスワーゲン(VW)のスポーツ性を語る上で、「GTI」という記号は欠かすことはできません。
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ドイツ本国で、初代「ゴルフ」にGTIモデルが登場したのは1976年のこと。スポーツ性能だけでなく、日常での使い勝手も両立したゴルフGTIはヨーロッパ中で人気を博し、それからGTIは歴代ゴルフに設定されていきます。
そんなGTIモデルは、いまではゴルフだけでなく「ポロ」や「up!(アップ!)」にも設定、フォルクスワーゲンのホットハッチ「GTIシリーズ」は3車種で展開しています。
アップ! GTIは、2018年6月に600台限定モデルとして日本に上陸しました。コンパクトなボディとスポーツチューンされた足まわり、6速MTで操る楽しさ、そして200万円台前半という車両価格もあり、600台はまたたく間に売り切れました。
そこで、2019年2月に特別仕様車として復活。今度は台数限定ではなくカタログモデルとして登場しました。
2018年登場の限定車だったアップ! GTIに追加された装備はおもにふたつ。リアビューカメラを採用したことと、ヘッドフォンの「b」マークでもおなじみの、「beats」プレミアムサウンドシステムを標準装備したことです。車両価格は234万2000円です。
搭載するエンジンは、116馬力/200Nmを発生する999ccの直噴直列3気筒ターボ(1.0TSI)です。
このエンジンは優れたパフォーマンスを誇るだけでなく、この種のエンジンとしてはじめて四元触媒コンバーターが装着されれ、新しい欧州の排出ガス規制「EU 6AG」にも対応するなど低エミッション性を実現。2018年のインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーで1リッター以下クラスで1位を獲得するなど、高評価を得ています。
トランスミッションは6速MT。ノーマルの「アップ!」に搭載される5速シングルクラッチ「ASG」は用意されません。
■Aセグメント・ホットハッチのライバルはS660? スイフトスポーツ?
エクスリアでは、ラジエターグリルに引かれた赤いストライプが印象的です。また17インチの専用アルミホイールや、そのなかに見え隠れするレッドブレーキキャリパーが、タダモノではない雰囲気を醸し出しています。
車内に乗り込みます。初代ゴルフGTIからの伝統でもあるタータンチェック柄のシートが、この小さなクルマが「GTI」であることを主張します。
キーをステアリングコラムに挿し回し、エンジンを始動します。スタートボタンを採用したモデルが多くなった今では、あまり見られなくなった儀式です。
シフトノブを1速に入れてスタート、走り出します。
このアップ! GTI、ラフにクラッチを繋げて右足を踏み込むと、簡単にホイールスピンを起こすくらいのヤンチャぶりも発揮します。
1リッターTSIは、アクセル操作に対してよどみなく回転を上げていきます。コキコキと小気味よく入るシフトフィールを楽しめるのも、6速MTならではのもの。
高回転まで引っ張ってからブレーキング、ヒール&トゥでシフトダウン、そしてスムーズに立ち上がり繊細にアクセルペダルを踏みながらコーナーをクリア、のような楽しみ方ももちろんありますが、200Nmある最大トルクは2000回転から発生するのでセンの細さもまったくなく、4速あたりに入れっぱなしのズボラな運転にも対応します。
ワインディングでは、締まった足まわりのおかげで、ヒラリヒラリとリズムカルな走りが楽しめます。ただし、パワフルといっても116馬力なので、どんな人でも使い切れる楽しさがそこにあります。
どんな走り方をしても楽しいのですが、速く走らせようとすると、きちんとしたドライビングが求められるのもまた、アップ! GTIの特徴でもあります。挙動もわかりやすく、FF車の運転がうまくなるクルマ、ともいえます。
車両重量はちょうど1000kg。軽量・コンパクトなボディにこのエンジン。「初代ゴルフGTIはこんなフィーリングだったのかもしれない」などと妄想します。
3ドアとはいえ、リアシートは大人2人が座っても狭くはありません。ただ、スポーツサスペンションは相当硬く、かなり古典的なテイストなので、街乗りでの突き上げ感も大きめです。後席に人を乗せる機会が多いドライバーは、その点をアタマに入れておいたほうが良さそうです。
※ ※ ※
全長3625mm×全幅1650mm×全高1485mm、ホイールベースは2420mmのアップ! GTI。いわゆるAセグメントにカテゴライズされるホットハッチですが、じつは日本において、あまりライバルは見当たりません。
価格帯の近いスズキ「スイフトスポーツ」は、じつは全長3840mmとひとクラス上のBセグメントにあたり、兄貴分である「ポロGTI」とライバル関係にあります。
唯一、ルノー「トゥインゴGT」がAセグメントのスポーツモデルでしたが、現在は日本のラインナップから外されています。
そうなると、排気量もスリーサイズも異なりますが、軽自動車のスズキ「アルトワークス」やホンダ「S660」、ダイハツ「コペン」シリーズなどの名前が挙げられます。とくに「もう1台、遊びグルマがほしい」と考えている人は、201万7400円から222万5400円という価格帯のS660と、迷うこともありそうです。
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