新型BRZを7月29日の正式発表日に契約し、Rグレードが晴れて8月30日に納車されたばかりの永田恵一氏。この6年間乗った初代86から、新型BRZの上級グレードのSではなく、あえてRグレードに乗り替えた永田氏の愛車に、師匠である国沢光宏氏が試乗した! もちろん、オーナーである永田氏のインプレッションを含め、新型BRZ Rグレードの実力を検証してみたぞ!
文/国沢光宏、永田恵一、写真/平野 学、撮影協力/河口湖ステラシアター
「粋」なグレード名復活希望!! S13シルビアの一押しはQ’sだった理由
【画像ギャラリー】旧型86乗りが即買いしたクリスタル・ブラックシリカの新型BRZ「R」グレードを写真でチェック!!
■17インチ仕様を選んだのが「いいね!」
弟子の永田が最近たくさん仕事しているらしく、昨年500万円を軽く超えるGRヤリスRZを買ったと思ったら、新型BRZも買ったという。驚くことに、広報車よりも早い納車である。「GRヤリス、ずいぶん短かったな」と言うと「買い足しました」(!)。そうは言いながらも、なんだかんだ言って新型BRZの乗り出し価格、400万円近かったようだ。クルマ好きの皆さん、自動車評論家を目指したほうがいい。
受注開始日に注文した新型BRZが納車され、それを眺めるオーナーの永田氏と師匠の国沢氏。購入したクルマの仕様は「R」グレードのMT、クリスタル・ブラックシリカのボディ色、カーナビ、ドラレコなどを装備し総額約375万円
「R」グレードの純正17インチタイヤ。銘柄はミシュラン「プライマシーHP」でサイズは215/45R17
クルマを見ると、先行試乗会には用意されていなかった308万円の「R」というベースグレードで、17インチの標準タイヤ付き。永田曰く「17インチタイヤに興味ありました」。私もBRZ/86を買うのなら17インチだな、と思っていた。このくらいのパワーの後輪駆動車は、パワーがタイヤに勝っているくらいが楽しいんじゃなかろうか。
ちなみに私にとって一番楽しかった初代BRZが15インチのグラベルラリー用タイヤを履いたラリー車である。レギュレーションによりエンジンノーマルのまんま。15インチのラリー用タイヤでアクセル踏むと、テールスライドも自由自在! もう大笑いしちゃうくらい楽しいクルマだったことを思い出す。私にとって最高の後輪駆動車です!
■先代より上質な走りに「こらいいね!」
先代BRZ&86も17インチタイヤだと、高い横方向のGをかけた状態のまま2速アクセル全開じゃないとテール流れなかった。もちろんサーキットを走るのならそれでいいし、むしろ”曲がる性能”からすれば、ある程度のグリップあったほうが好ましい。ただ、一般道で後輪駆動の楽しさを味わおうとすれば、少しばかりグリップ性能高すぎ。
改めて説明するまでもなく、新型BRZは排気量を20%大きくした結果、最大トルクも20%太くなり、しかも低い回転域からパワー出ている。そんな新型に従来型と同じ17インチを組み合わせたらスンゴク楽しいんじゃないかと予想していた次第。
新型BRZ「R」グレードを運転する国沢氏。17インチの乗り心地に「こらいいね!」を連発!!
さっそくハンドル握って走り出す。この時点で「こらいいね!」。乗り心地いい。先代BRZよりボディのしっかり感が大幅に上がっており(新世代プラットフォームの技術を投入してボディ剛性を高めたそうな)、確実にワンランク上級&上質のクルマになったみたい。
ショーワの流れを汲むダンパー共通の弱点は残念ながら解決できなかったらしく、大きな入力だと「ドシン!」と大きなショックを喰うが、普通の道なら快適!
もちろん、乗り心地フェチの私なら瞬時も迷わずサンコーワークスに持って行き、ネオチューンするが(すんごくよくなると思う)、通常の感性であれば「いいね!」とすることだろう。加えてフロントのハウジングをアルミにアップグレードさせ、リアも不快な振動を消すためのブレースを追加しているため、上質感が出ている。
■17インチ「R」グレードの新型BRZ ロードインプレッション
ちなみに新型のGR86は先代モデルと同じ鉄のハウジングで、リアのブレースなし。上質感よりダイレクト感を追求したそうな。サーキットだと振動特性の差くらいしか感じなかったものの、公道だと大きな違いになるのか興味深い。いずれにしろ新型BRZは普通に走っていて「先代より上質になりましたね!」とハッキリわかります。
希望ナンバーの9486は2.4Lエンジンのボアストロークからとのこと。『ボディカラーといい希望ナンバーといい、やはり永田はアホである』とは国沢氏の弁
パワーも「こりゃいい!」と感じるくらい上がっている! 先代で最後まで解決出できなかった中回転域にある”トルクの谷間”は相変わらず存在するが、絶対的なトルクの太さのためだろう。公道じゃ感じないレベルに。どの回転域からアクセル踏んでも気持ちよ~く加速していく。ただ人工的に出しているエンジン音は、全開にしないと聞こえにくい。
まあ、終始エンジン音を出すより、踏んだ時だけ出してくれたほうがいいという人もいるだろう。私そのひとり。でも終始元気いい音を聞きたい人もいることだろう。なんらかの設定で選べたらいいのに。そんなこんなでパワーは必要十分! 2.5Lエンジンだった初期型ポルシェボクスターくらいの動力性能を持つ。
肝心のタイヤはどうだったか? 結論から書くと「ちょうどいいですね!」。クローズドにしたうえ、許可を得た場所でアクセル踏んでみたら、サーキットレベルの高い横Gをかけなくてもアクセル踏めば気持ちよくテールを滑らせられる。先行試乗会で乗った18インチだと滑り出しの唐突感あったが、17インチなら穏やか。
以上です。大きくモディファイするのならブランドイメージ的にもGR86だろうが、ノーマル状態のまま乗るのなら、17インチの「R」は大人の渋い本格的なスポーツモデルとして好ましいと思った。今回、唯一の「う~ん」が黒いボディカラー。カッコいいクルマなんだから派手な色にすればよかったのに! そのあたりのセンス、永田は残念!
国沢氏は黒をウーンというが、永田は黒(クリスタルブラックシリカ)のカラーコードが、トヨタとスバルの友好を象徴するD4Sだから選んだという
国沢氏に続いては今回の新型BRZのRグレードのオーナーである、永田恵一氏の愛車インプレッションをお届けします。
■前期C型86から新型BRZのRグレードに乗り換えた感想
当サイトでも何度か書いたとおり、筆者は6年近く乗ったトヨタ86前期C型をMTの新型BRZ Rグレードに乗り替え、約1000km走った。ここからは初代86からの進化を中心に、新型BRZを自分のものにした印象をパートごとにお伝えしていく。
ワインディングで新型BRZ「R」グレードをインプレッションするオーナーの永田氏。前期C型86から新型BRZのRグレードに乗り換えた感想は??
動力性能はスペックどおり全域でパワフルになっており、スポーツカーとしての車格が上がったように感じたくらいだ。特に低いギアで7400回転のレッドゾーンまで回してみると、排気量が2Lから2.4Lに拡大されながら、初代前期型では7000回転あたりから頭打ち感があったのが、レッドゾーンまでキッチリ回るようになっている点にも感心した。
また、3000回転前後までの常用域も格段に力強くなっており、この恩恵はMTだと1速-3速-5速といった飛ばしシフトアップや高いギアで緩加速する際の粘り強さなどで強く感じられる。
MTも各ギアへの入りやすさの向上(ギアオイルが柔らかいものとなっているそうなので、サーキットでの連続走行などをする際には換えたほうがいいかもしれない)、2速から3速のようなクランク状のシフトもやりやすくなっており、地味ながら進化幅は大きい。
「シャープなGR86に対し、リニアなBRZ」となっている電子制御スロットル(アクセル)の操作感は、筆者はGR86の方向に近いと思われる初代86に慣れているためか、シフトダウンのブリッピング(回転合わせのための空吹かし)など、個人的には「GR86のほうがよかったかも」という感もある。しかし、この点に関しては雪道などでのシビアなアクセルワークというシーンもあるため、結論は先送りとする。
■燃費
流れの速くない高速道路を中心に慣らし運転をしながら約1000kmを走った燃費は12.5km/Lだった。この燃費は初代86前期型とMT同士で比べると5%落ちというイメージで、動力性能の向上を考えれば得たもののほうが多いといえ、カタログ発表ほども燃費は落ちていない印象だ。
■ハンドリング、乗り心地、快適性
この3点はボディ剛性の大幅な向上を基盤にした、スバルが提唱する動的質感の大幅な向上が公道を普通に乗っただけでも感じられた。
高速道路を巡行する新型BRZ「R」グレード。雨の高速道路ではクルマ自体に加え、空力性能の向上も貢献しているようで、スタビリティ(走行安定性)の劇的な向上も確認
まず、ハンドリングはハンドル操作に対するクルマの動きの正確性が格段に向上しており、ワインディングロードなどを普通に走ってもより楽しめるクルマになった。また、雨の高速道路ではクルマ自体に加え、空力性能の向上も貢献しているようで、スタビリティ(走行安定性)の劇的な向上も確認できた。
乗り心地は筆者の新型BRZが先代プリウスとのタイヤとなる17インチのミシュランプライマシーHPを履くことが、いいほう、悪いほうのどちらに作用しているのかは定かではない。が、荒れたところを含め路面の凹凸を乗り越える際に、「コトン」とか「コンコーン」という心地よい音を伴いながら、凹凸の通過が「気持ちいい!」と感じることがしばしばあるくらい快適だった。
新型BRZの乗り心地のよさはボディ剛性の強化に加え、ダンパーの進化によるところも大きいのだろう。ボディとダンパーがこれだけよくなっていると、スポーツ走行の際の荷重コントロールなどもしやすく、サーキットなどでもより速く楽しいクルマになっているに違いない。
快適性をスポーツカーに求めるのは野暮なのかもしれないが、静粛性の向上も印象的だった。具体的にはエンジン音は街乗り領域だと法規が厳しくなっていることもあり、スポーツカーとしては静か過ぎるくらい、ボディ剛性の向上も貢献しているのかロードノイズも格段に小さくなった。
また、初代86は遮音材が最低限だったこともあり、強い雨のなかだとルーフに当たる雨音が「バタバタバタ」と非常に大きく、怖さを感じることもあった。それが新型BRZではルーフがアルミ製となったことによる吸音の効果が大きいようで、強い雨のなかでもルーフに当たる雨音は「シトシト」という上品なものとなっている点にも感心した。
■実用性
人は乗らなくとも荷物を置く際などに便利なリアシート、ラゲッジスペースとも初代86と同等のスペースが確保されており、文句はない。
■インテリア
初代86オーナーから見た新型BRZに対する最大の不満は、メーターを中心としたインテリアだ。
まず、ダッシュボードはよく見るとプラスチックとなる部分が意外に目立つ。しかし、この点に対して筆者はこれだけ性能が向上して、据え置きに近い価格でフルモデルチェンジしてくれたことを考えると、許容範囲と判断している。
新型BRZ「R」グレードの内装。ぱっと見での「S」グレードとの違いはシートの生地とアクセントカラーのストライブ、メーターフードのファブリック調カバーが無い
ただ、初代でよかった後方視界を広くしてくれたフレームレスインナーミラー(これは初代で年数が経つと腐食するという問題もあったが)、特にセンタートンネル側がありがたかった左右の膝を柔らかく支えてくれたニーパッド、筆者がエアゲージを入れるのに使っていた前席シートバックポケットが、新型BRZでは上級のSグレードでも装備されない点はちょっと残念だ。
最大の不満点となるメーターは、走行モードをスポーツ走行用のトラックモード、横滑り防止装置全オフにするとタコメーターがバーになるのだが、筆者個人としては見にくいと感じている。もちろん、この設定もあっていいのだが、せっかく選択幅が広い液晶メーターにしたのであれば、トラックモードと横滑り防止装置全オフでも通常の丸いタコメーターを選べるなどの、カスタマイズ機能が欲しかった。
なお、筆者はプロトタイプの試乗会でトラックモードと横滑り防止装置全オフでは水温と油温が数字で表示される機能があるのを見つけ、「これなら後付けのメーターが不要なので、安上がり!」と喜んでいた。
しかし、この表示は自分のBRZでいくら探しても見つからず、どうやらGR86だけの機能だったようだ。新型BRZも油温はザックリとした数字でのバー表示はあるが、この点は新型BRZとGR86で迷った際に人によっては無視できない違いとなるかもしれない。
メーターに関しては、後からでもソフトウェアのアップデートとして筆者が欲しい機能が加わると嬉しい。
■まとめ
メーターを中心に文句はつけたが、総合的に見ると新型BRZは期待以上の進化により、初代モデルの登場から9年分シッカリ大人になっており、筆者は価格を含め大満足で、「買ってよかった!」と断言する。
筆者は自分の新型BRZに対する満足度が初代同様ジワジワと高まっており、まだしていないスポーツ走行など確認できていないことも多々あるのもあり、新型BRZに乗りたくてしかたない。10月にはクローズドコースでのドリフト練習を2週連続で予約しているので、機会があればこの際の印象もお伝えしたい。
今回の新型BRZ「R」グレードのインプレッションを終えて、内装以外は大満足だったオーナーの永田氏。これからもオーナー目線の細かいレポートに期待!!
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