そろそろコレクターズアイテムに? プリムス プロウラー
1980年代~1990年代に生産された「ヤングタイマー・クラシックカー」がどんどん勢力を増している現代にあって、前世紀末から今世紀初頭に作られたクルマたちのなかでも際立つ個性を持つものは、次世代のコレクターズアイテムとして注目されつつあるようです。世界最大級と称される自動車のお祭りとして、毎年7月に開催される「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード(FoS)」。そのオフィシャルオークションとして名門ボナムズ・オークション社が催した「Goodwood Festival of Speed」オークションの2024年版に出品されたプリムス「プロウラー」は、まさしくそんな次世代のヤングタイマー・クラシックとして筆者が注目している1台。今回はそのモデル解説と、注目のオークション結果についてお伝えします。
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エンスー経営者と開発チームが創り出した、ホットロッド・ロードスターの復活版とは?
1989年に「ヴァイパー」のコンセプトカーを製品化し、自動車業界を驚かせたクライスラー社は、わずか数年後の1993年、デトロイトで開催された北米国際自動車ショーで、驚くべき「プロウラー」の「ホットロッド」コンセプトカーを初公開し、ヴァイパーにも匹敵するトリックを繰り返すことになる。
有能な自動車メーカー首脳にして、生粋の「カーガイ」としても知られていたボブ・ラッツCEOの率いていたクライスラーのモチベーションは、1950年代からアメリカのカーマニアを魅了していた「ストリート・ロッド」へのノスタルジックな憧れを上書きするような、新時代のホットロッドを創り出すことにあった。
しかし、そんなレトロなルックスにもかかわらず、プロウラーの存在意義のひとつは最新の構造技術、とくにアルミニウムの使用の実験台として機能することであった。プロウラーの車両重量2780ポンド(約1270kg)のうち900ポンド(約400kg)以上がアルミニウムとされ、この軽量で耐食性に優れた素材は、シャシー、サスペンションの各種コンポーネンツ、ボンネットやドアを含むボディパネルに使用され、ブレーキディスクにはアルミニウム複合素材が使用されることになった。
3.5リッターV6エンジンを縦置きに搭載
エンジンとドライブトレインの調達にあたり、プロウラーの開発チームはクライスラー・グループの部品庫をあさり、同社のFF用3.5L鋳鉄ブロックのV6エンジンを縦置き搭載することに決定。リアアクスル側に置く「トランスアクスル」の変速機は4速オートマチックとされた。
1997年初頭から生産が開始され、1年足らずで鋳鉄製エンジンは姿を消し、1999年モデルからはオールアルミ製の3.5L 24バルブV型6気筒エンジンが採用された。
当初のSOHC版は214psと排気量のわりに非力だったが、DOHC 24V版では253psまでパワーアップ。1.3t足らずの軽量ボディも相まって、0-60mph(約0-97km/h)加速5.9秒、0-400m加速14.9秒、最高速度は235km/h(リミッターで200km/hに制限)という、なかなかの俊足を誇っていた。
1998年にクライスラー・グループがダイムラー・グループの傘下に収まった余波で、プリムスのブランドが廃止となったことに伴い、プロウラーも2001年にクライスラー・ブランドに移行。そして2002年がこの注目すべき、そして現在ではコレクターズアイテムにもなりつつあるモダン・クラシックカーの生産最終年となったのだ。
今回の個体はコンディションのせいで安価ながら、いずれは人気アイテムになる?
このほど「Goodwood Festival of Speed」オークションに出品されたプロウラーは、1999年モデル。つまり、まだ「プリムス」のブランドを名乗っていた時代の、24バルブ版ということになる。
ボナムズ社のオークション公式ウェブカタログを作製した段階での走行距離は約2万5000マイル(約4万km)。現時点における最新のMoT車検証は2022年6月に切れており、ごく最近、ブースター式バッテリーパックを介して始動・走行したとのことである。
また、キーフォブのバッテリーもパンクしているなど、これから乗るためには一定のメンテナンスが必要となりそうだ。さらに、現時点ではドキュメント類も少ないため、販売時までにさらなる情報が得られることを期待しているという、ちょっと不安含みの出品となっていたようだ。
やや控えめな落札価格を設定
そして、このコンディション上の不安とヒストリーを証明する書類の不備を意識したのか、ボナムズ社は2万3000ポンド~3万ポンド(約428万円~558万円)という、ちょっと控えめにも感じられるエスティメート(推定落札価格)を設定した。また、この種の比較的安価な出品ロットではよくあることだが「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」での出品となった。
今回のような「リザーブなし」という競売形態は価格の多寡を問わず落札できることから、とくに対面型オークションでは会場の雰囲気が盛り上がり、ビッド(入札)が跳ね上がる傾向もある。その反面、たとえ価格が売り手側の希望に到達しなくても、自動的に落札されてしまうリスクも内包している。
しかし2024年7月12日に行われた競売では、リスクに挑んだことが功を奏したのか、終わってみれば2万3000ポンド。つまり現在のレートで日本円に換算すれば、約428万円で無事落札されることになった。
とはいえ、このハンマープライスは、近年の英国におけるプロウラーのマーケット相場よりもやや低めで、やはり現状のコンディションやヒストリーの不明瞭なことが、エスティメートおよび落札価格を引き下げる要因となっていたことは間違いあるまい。
そもそもプリムス/クライスラー プロウラーは、元来の販売計画が5年間の限定生産だったとのこと。したがって総生産台数は1万1702台(ほかに1万1479台説など諸説あり)と、現代的なスポーツカーとしてもかなり希少であることに、持ち前の強烈な個性も相まって、今後はヤングタイマー・クラシックカーとしてさらなる人気を博してゆくことになるものと予想しているのである。
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みんなのコメント
この手の車はやはりプッシュロットのV8を積むのがアメリカ人の思考からしたら正解だったのだろう ね。
普通はもっとカッコ良くしようとするだろうに、この諦めというか潔さというか 笑