この記事をまとめると
■三菱の新型アウトランダーPHEVにはヤマハのオーディオが用意される
純正オーディオが自慢のクルマはスピーカーの数も自慢げに書くけどなんで? スピーカーが多ければ多いほどいいのか元プロミュージシャンの自動車ジャーナリストが解説!
■2種類の構成が存在しアウトランダーPHEVのために専用設計されている
■ヤマハのクルマ用オーディオは日本車としては初採用となる
日本車初採用のヤマハスピーカーをテスト
現代の音楽好きの多くは、音楽をスマホにイヤホンを接続、または車内でのオーディオで聴くことがほとんどではないだろうか。自宅にホームオーディオを構築したオーディオルームをもつことなど、最近では極めて困難だからである。
そこで、元プロミュージシャン、いまでも生活に音楽が欠かせず、しかもできるだけいい音、つまり制作者の意図した原音に近い音で音楽を楽しみたいと考える筆者は、クルマの純正プレミアムサウンドシステムをマイリスニング空間にしている。ひとりで運転していれば、誰にジャマされることなく、いや、誰にも迷惑をかけず、好きな音楽をコンサート会場にいるような音場・音像で、イヤホンとは違った空気感あるリスニング空間で聴くことができるのである。
さて、10月31日にマイナーチェンジを行った三菱のいまやフラッグシップモデルとなるアウトランダーにも、まったく新しいプレミアムオーディオが用意されることになった。
マイナーチェンジ前にはアメリカのBOSEを採用していたのだが、今回はなんと日本を代表する楽器メーカーでもあるヤマハ製プレミアムオーディオを、最上級の新グレードとなるPエクスクルーシブパッケージとPに標準装備。Pエクスクルーシブパッケージには最上級のダイナミックサウンドヤマハアルティメットが、Pにはダイナミックサウンドヤマハプレミアムが搭載され、前者はP、Gグレードでもオプション装着することが可能になっている。
それぞれのシステムは以下のとおりだ。
ダイナミックサウンドヤマハアルティメイトはインパネまわりにセンタースピーカー1基、左右にミッドレンジスピーカー2基、左右Aピラーにフロントツイーター2基、フロントドアのフロントウーハー2基、フロア左右にパワーアンプ2基、リヤドアにリヤツイーター2基、ラゲッジルーム左側にサブウーハー1基を配置する12スピーカー+デュアルアンプで構成。音楽スタジオなどでも使われるヤマハスピーカーのフラッグシップモデルであるNS-5000の設計思想を継承したサウンドシステムであると謳われ、最高峰の車内リスニングルームを目指したものだ。
ダイナミックサウンドヤマハプレミアムはAピラーのフロントツイーター2基、フロントドアのフロントウーハー2基、リヤドアにリヤコアキシャル2ウェイスピーカー(ツイーターとウーハー)の8スピーカーで構成。もちろん、両システムともにスピーカーがマウントされるドア内部のデッドニング、補強も重量増に配慮しながら行われている。
試聴音源は、日本を代表する女性シンガーソングライターのコンサート会場で以前、サウンドチェック用の音源として使われていたトラック、リッキー・ピーターソンの「SMILE BLUE」というCDアルバムの1曲、筆者のカーオーディオ試聴用トラックとしても長年使っている「WHAT YOU WON’T DO FOR LOVE」。強いアタック、繊細な楽器の鳴り方、左右配置、めくるめくステレオ感などが詰め込まれた曲で、下手な純正カーオーディオではすべての音源を再生しきれないかもしれない、チェック用としては最適と思える1曲なのである。ちなみにリッキー・ピーターソンのその曲を知らなくても、原曲となる1978年に発売された日本でも大ヒットしたボビー・コールドウェルの「風のシルエット」なら覚えているはずだ。
試聴はまず、マイナーチェンジ前のBOSEサウンドシステムから行った。西海岸フュージョンミュージックだから、BOSEとの相性は絶対に悪くない。カーオーディオにおいても臨場感ある音質、深みある響きの低音が中高域に隠されることなく聴かせてくれるところも特徴だ。大音量でも小音量でも低中高域のバランスに優れているのもBOSEらしさ。
「WHAT YOU WON’T DO FOR LOVE」は他車のBOSEサウンドシステムでも試聴しているが、西海岸サウンドにはバッチリ似合うことを改めて確認した。
ヤマハオーディオがもつ脅威の性能
次に試聴したのは新型アウトランダーのPグレードに標準装備される8スピーカーのダイナミックサウンドヤマハプレミアム。アルティメイトの12スピーカー&デュアルアンプの存在を知ってしまうと物足りなさを想像してしまいがちだが、なんの、引き締まった低域から鮮明な中域、耳にやさしくもある高域のバランスが取れたサウンドを何の調整もなく、聴かせてくれたのだ。ガチな音楽ファン、オーディオマニアでもない限り、「クルマのなかでこんなに素晴らしい音が聴けるなんて!!」と驚くはずのリスニング空間となっていたのである。筆者としても、車内でいい音を聴くのにこれで十分すぎると思えたほどだ。
最後に試聴したのが、Pエグゼクティブパッケージに搭載される12スピーカー+デュアルアンプのダイナミックサウンドヤマハアルティメイト。アルティメイトではサウンドタイプ(Signature/Lively/Powerful/Relaxing)からSignatureを選び、リスニングポジション(前席/運転席/助手席/前席/後席)からまずは「全席」を選んで試聴。すると、とくにフロントドアのウーハーからの低域の厚み、豊かさはダイナミックサウンドヤマハプレミアムより1枚上手。もう1曲、ライブ音源も聴いてみたのだが、もうライブ会場の特等席で聴いているような臨場感溢れるサウンド、音の広がりは圧巻だ。
次に同じ2曲を「運転席」ポジションで試聴。するとどうだ、さらなるダイナミックさ、臨場感、めくるめく音の渦に巻き込まれたような、作り手の意図がそのまま伝わってくるような音場体験が叶うことになった。ポジションの選択によってボーカルの定位が手前に来たり奥まったりするため、好みの調整ができるのもマニアックで楽しい。個人的には、ドライバー本人が最高の音で聴くには「運転席」のポジションが最適と思えた。
そういえば、例の「WHAT YOU WON’T DO FOR LOVE」を教えてくれた音楽プロデューサーのスタジオにもヤマハのNS-100シリーズがモニタースピーカーとして鎮座していたのを思い出した。音源の基本であるステレオ再生はもちろん、シアターサウンドにも対応するプロ御用達のスピーカーであり、ヤマハはそうした現場でも大活躍していることを思い出せば、アウトランダーが新たにヤマハと手を組み、共同開発に挑んだのは、欧州への輸出開始を含め、メイド・イン・ジャパンの総出演という意味でも大正解だったのではないかと思える。
ちなみにヤマハのカーオーディオが国産車に搭載されるのは、このアウトランダーが初でもある。それだけに、ヤマハも相当な熱量をもって共同開発したのではないだろうか。
とはいえ8スピーカーのダイナミックサウンドヤマハプレミアムでも、カーオーディオとしては文句なしの”大音量に耐えうる”上質なサウンドを聴かせてくれることは間違いない。
今回は主に停車中のアウトランダーで試聴したが、走行中でもロードノイズに応じた補正(低域をもち上げる)が行われ、さらに空調使用時、ワイパー作動時にも音を補正してくれるというのだから、現実的なリスニングルームとしての走行中のアウトランダーでも、素晴らしいヤマハのプレミアムサウンドシステムを堪能できることになる。
なお、P、Gグレードでも約20万円のオプション料金でダイナミックサウンドヤマハアルティメイトにグレードアップが可能だ。アルティメイトとプレミアムのどちらを選んでも、ヤマハスピーカーの真髄に満足できること必至だと思える。
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みんなのコメント
元ミュージシャンだからってオーディオの善し悪しが分かるとは思えない