現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > V型4気筒にモノコックボディ ランチア・ラムダ 100年前の革命児 体験を一変 前編

ここから本文です

V型4気筒にモノコックボディ ランチア・ラムダ 100年前の革命児 体験を一変 前編

掲載 2
V型4気筒にモノコックボディ ランチア・ラムダ 100年前の革命児 体験を一変 前編

モノコック構造とV型4気筒のラムダ

100年前のランチアは、現代の革新的なモデルとは比べ物にならないインパクトを持っていた。1922年のパリ・モーターショーで発表されたラムダは、それまでの自動車に対する概念を書き改めたといってもいい。

【画像】V型4気筒にモノコックボディ ランチア・ラムダ 同時代のクラシックと写真で比較 全120枚

エンジンとサスペンション、数名の乗員、走行時の負荷を一手に受け止めたモノコック構造は、セパレートシャシー構造が一般的だった時代の革命児だった。世界初の、独立懸架式となるフロント・サスペンションも同様だろう。

前後のアクスルにはブレーキも組まれていた。エンジンは高性能なオーバーヘッドカムのV型4気筒。他に類を見ないパッケージングによって、1920年代のドライビング体験を一変させた。

確かに1913年のラゴンダは、オールスチール製のモノコックシャシーを採用していた。1899年には、デイムラーがコンパクトなV型エンジンを開発していた。だがランチアは、これらを1台に融合し完成させていた。

ロンドンの西、ハートレー・ウィントニーの町に拠点を置くフェニックス・グリーン・ガレージ社は、そんな歴史的なクラシックカー・オーナーが集まる場所。定期的にランチア・ラムダを集めたミーティングも開かれている。

そこで今回は、ラムダ・エイト・シリーズ・サルーンとトルピード・ツアラーという2台へ試乗する機会を得た。さらに、ヒストリック・モーターカー・ワークショップ社へ場所を移し、フォー・シリーズも体験させていただいた。

軽さと強さが走行性能に貢献する

同一モデルのシリーズ違いは、変化が限定的な場合も多い。いわゆるマイナーチェンジでの違いに近い。だが、前期型と後期型へ大きく分けられるフォー・シリーズとエイト・シリーズでは差が小さくない。9年でナイン・シリーズまで進化を遂げている。

デザイナーのピニン・ファリーナ氏は、ブランド創業者のヴィンチェンツォ・ランチア氏が大西洋を渡る船の構造に影響を受けたと、後に話している。レーシングドライバーでもあった彼は、軽さと強さが走行性能に大きく貢献することを理解していた。

1910年のランチアのカタログには、次のように記されてる。「重さは強さとは異なります。不完全な設計や安価な材料が導くことも珍しくありません。軽く速く、頼れる自動車の強みは過小評価できません」

ラムダが誕生する4年前、1918年にランチアはモノコックボディ構造の特許を申請した。プロペラシャフトが中央を走るトランスミッション・トンネルを備え、その両側には乗員の足もとへ余裕をもたせる窪みが与えられていた。

このボディは、剛性シェルと特許図面では呼ばれていた。アクスルより下側へ空間を広げ、強度を増す事が可能だとも記されている。

この事実を受け、「興味深い特許です。安全性やロードホールディング性、サスペンション設計の改善に効果的なだけでなく、重量の大幅な削減も期待できます」。と、当時のAUTOCARはラムダを予見したように紙面で紹介している。

前後のブレーキに独立懸架式サス

その頃のランチアで主任技術者を務めていたのが、バッティスタ・フェルチェット氏。革新的な設計の旗振り役となった。

100年前の自動車業界では、フロントタイヤ側のブレーキに懐疑的な考えを持つ技術者が多かった。ベントレーを創業した、WO.ベントレー氏も否定的だったという。

それに対し、フェルチェットは試作車でフロント・ブレーキだけを効かせ、安定性に問題がないことを証明。リア側のブレーキも機能させると、一層効果的であることも確認した。

独立懸架式のフロント・サスペンションは、ヴィンチェンツォも望ましいとは考えていなかった、リジットアクスルに対する回答だった。フェルチェットは14種類の設計を試したが、左右個別に掛かる負荷が課題になった。

最終的に、ダンパー内のオイルの流れを制御するバルブを備え、固定されたストラットをハブが上下するスライディングピラー機構を開発。ランチアの特長として40年間も採用されることになった。

V型4気筒エンジンも同社独自の設計。担当したのはプリミティーヴォ・ロッコ氏とアウグスト・カンタリーニ氏という2人で、ブロックの長さが短く操縦性の向上に繋がった。

このユニットも、1976年にフルビアが製造を終えるまでランチアの特長として受け継がれた。シリンダーを微妙にずらして並べることで小さくし、エンジンルーム内からトランスミッションへアクセスすることも可能だった。

ラムダでは、試作を繰り返しバンク角を13.6度に設定。2119ccから当時としては優秀な48ps/3250rpmを発揮させている。

当初はオープンのトルピード・ツアラーのみ

他方、スタイリングも注目に値する。プロトタイプでは丸みを帯びたツアラーボディだったが、最終的には平面的でスクエアなデザインに帰結している。当時の流行でもあった。

セパレートシャシー構造であれば、その頃は一般的だったコーチビルダーやカロッツエリアによるボディの架装が可能だった。しかし、モノコック構造はシャシーと一体なため、当初はランチアで製造されるボディへ選択肢が限定されていた。

ファイブ・シリーズまでは、オープンボディのトルピード・ツアラーのみが作られている。クロスとウッドで仕立てられたバロン・スモンタービレ・ハードトップが用意され、乗員を風雨から守った。

1922年から1931年まで9シリーズ作られたラムダは、モデルチェンジと呼べるほどではなかったが、進化を重ねた。サイズが大きくなり、エンジンの出力も高められつつ、当初のテンプレートは最後まで保たれた。

初期のフォー・シリーズまでの違いは小さく、ファイブ・シリーズからは4速マニュアルが搭載されている。だが最も大きなステップは、1925年のシックス・シリーズだろう。

オプションとして、320mm延長した3420mmのロングホイールベース版の選択が可能になっている。最大で6名乗車が可能なボディが用意され、ドラムブレーキも制動力が強化された。

当初、ラムダのボディの製造を担っていたのはフィアットだったが、ロングボディの誕生を機に契約を終了。直後は職人によるハンドビルドでまかなわれたが、アルビノ・アーリ社に生産が移管されている。

この続きは後編にて。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

外装のアクセントカラーは460億通り! 「ベントレー・コンチネンタルGT」オプションの無限の可能性
外装のアクセントカラーは460億通り! 「ベントレー・コンチネンタルGT」オプションの無限の可能性
LE VOLANT CARSMEET WEB
日産「崖っぷち」からの大逆転なるか? 800億円赤字、工場閉鎖…「技術の日産」再興でスバル化戦略? e-Powerの未来どうなる
日産「崖っぷち」からの大逆転なるか? 800億円赤字、工場閉鎖…「技術の日産」再興でスバル化戦略? e-Powerの未来どうなる
Merkmal
東京ガス、EV充電サービス「EVrest」に新料金メニュー…充電器ごとの柔軟な設定が可能に
東京ガス、EV充電サービス「EVrest」に新料金メニュー…充電器ごとの柔軟な設定が可能に
レスポンス
【RQ決定情報2025】スーパーフォーミュラの新チームをサポートする『KDDIレースアンバサダー』のメンバーが発表
【RQ決定情報2025】スーパーフォーミュラの新チームをサポートする『KDDIレースアンバサダー』のメンバーが発表
AUTOSPORT web
ホンダe:HEVと日産e-POWER 元エンジニアが判定「長所」と「短所」をガチで比べるとどっちがいいの?
ホンダe:HEVと日産e-POWER 元エンジニアが判定「長所」と「短所」をガチで比べるとどっちがいいの?
ベストカーWeb
「マイクロバス」はトヨタの商品名だと知ってた? 60年以上むかしのトラック「ダイナ」ベースのバスがとってもおしゃれ! 昭和懐かしのクルマを紹介します
「マイクロバス」はトヨタの商品名だと知ってた? 60年以上むかしのトラック「ダイナ」ベースのバスがとってもおしゃれ! 昭和懐かしのクルマを紹介します
Auto Messe Web
ユーザーがクルマの「リコール」を放置すると車検に通らない場合も! そもそも「リコール」ってどんな場合に出されるもの?
ユーザーがクルマの「リコール」を放置すると車検に通らない場合も! そもそも「リコール」ってどんな場合に出されるもの?
WEB CARTOP
ママチャリとロードバイクが合体!? トップチューブレス設計のスポーツバイク「ママチャリロード2」発売
ママチャリとロードバイクが合体!? トップチューブレス設計のスポーツバイク「ママチャリロード2」発売
バイクのニュース
ホンダ「WR-V」一部改良! 高級インテリア採用&精悍すぎる「ブラックスタイル」登場! 値上げ実施も“全車250万円台以下”をキープ!
ホンダ「WR-V」一部改良! 高級インテリア採用&精悍すぎる「ブラックスタイル」登場! 値上げ実施も“全車250万円台以下”をキープ!
くるまのニュース
2025年2月の新車販売ランキング、スペーシアが2位浮上 N-BOXはトップ変わらず
2025年2月の新車販売ランキング、スペーシアが2位浮上 N-BOXはトップ変わらず
日刊自動車新聞
テストでは最多周回を走り込んだメルセデス。弱点の克服を実感「開幕戦には完全な準備ができたマシンを持ち込む」
テストでは最多周回を走り込んだメルセデス。弱点の克服を実感「開幕戦には完全な準備ができたマシンを持ち込む」
AUTOSPORT web
ジャガーは何をやろうとしているのか 1900万円の新型EV、狙いは? 独占インタビュー
ジャガーは何をやろうとしているのか 1900万円の新型EV、狙いは? 独占インタビュー
AUTOCAR JAPAN
レクサス最新「“5人乗り”コンパクトSUV」に注目! リッター「28キロ」走る“最安&最小”な「LBX エレガント」がスゴイ! “豪華内装×特別カラー”など気になる仕様とは?
レクサス最新「“5人乗り”コンパクトSUV」に注目! リッター「28キロ」走る“最安&最小”な「LBX エレガント」がスゴイ! “豪華内装×特別カラー”など気になる仕様とは?
くるまのニュース
タカラトミーが Juju 選手とパートナー契約…スーパーフォーミュラマシンに「TOMICA」のロゴ
タカラトミーが Juju 選手とパートナー契約…スーパーフォーミュラマシンに「TOMICA」のロゴ
レスポンス
2025年2月の外国メーカー車販売、前年比3.6%増の1万8601台 2カ月連続プラス VW増加で底上げ
2025年2月の外国メーカー車販売、前年比3.6%増の1万8601台 2カ月連続プラス VW増加で底上げ
日刊自動車新聞
【中国】約200万円! トヨタ新型「bZ3X」25年3月発売に反響多数! 「RAV4より広くて快適そう」「価格安すぎ」「先進運転支援システムが気になる」の声も! 新たな「bZシリーズ」登場!
【中国】約200万円! トヨタ新型「bZ3X」25年3月発売に反響多数! 「RAV4より広くて快適そう」「価格安すぎ」「先進運転支援システムが気になる」の声も! 新たな「bZシリーズ」登場!
くるまのニュース
トヨタ「アルファード」でスポーツVIPを表現! 愛車に「リンファード」と名付けた理由は給油口を見れば納得…実は家族愛あふれる1台でした
トヨタ「アルファード」でスポーツVIPを表現! 愛車に「リンファード」と名付けた理由は給油口を見れば納得…実は家族愛あふれる1台でした
Auto Messe Web
黒いトヨタのエンブレムがカッコいい! ヤリス&ヤリス クロスに特別仕様車「Z“URBANO(ウルバーノ)”」が登場。
黒いトヨタのエンブレムがカッコいい! ヤリス&ヤリス クロスに特別仕様車「Z“URBANO(ウルバーノ)”」が登場。
くるくら

みんなのコメント

2件
  • 無人島に一台のクルマと島流しにあうとしたら
    迷わずラムダを選ぶ。一生分のタイヤをそえて…

                     小林彰太郎
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1690 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

100 . 0万円 550 . 0万円

中古車を検索
デイムラー デイムラーの買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1690 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

100 . 0万円 550 . 0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村