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ホールデン 知る人ぞ知る豪州初の自動車メーカーをさっくり解説

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ホールデン 知る人ぞ知る豪州初の自動車メーカーをさっくり解説

歴史の一部となったホールデン

ゼネラルモーターズ傘下のホールデン(Holden)は、1948年にオーストラリア初の国産車を世に送り出した。以降、オーストラリアの自動車ブランドとして名を馳せてきたが、2017年に国内生産が終了、2021年にはブランドそのものが消滅してしまった。

【画像】ホールデンが生んだ高性能モデル【欧州へ渡ったヴォグゾール車とHSV W427を写真で見る】 全80枚

会社としてのホールデンは160年以上の歴史を持つが、さまざまな不幸が重なり、悲しい結末を迎えることになった。今回は、同社の歴史を写真でさっくり振り返りつつ、名車にスポットを当てて紹介する。

始まり

ホールデンは1856年に馬具メーカーとして創業したが、創業者ジェームズ・ホールデンの孫であるエドワードが入社すると、自動車産業への道を歩み始めた。ホールデン・モーター・ボディ・ビルダーズ(HMBB)が設立され、1920年代にはフォードとGMに年間1万2000台のボディを供給するまでに成長。しかし、世界恐慌により市場は崩壊し、1931年にHMBBはGMに買収された。

戦後、ホールデンとHMのおかげで、オーストラリア初の国産自動車「48-215」が誕生する。当初は北米市場向けのシボレーとして構想されたモデルだが、小さすぎるという理由で却下された。そこで、ホールデンはこれを独自のモデルとして国内向けに販売することにしたのである。

48-215

ホールデンは独自の鋳造工場と鍛造工場を設立し、セダン、ビジネスセダン、パネルバンをラインナップする。48-215は単純に「ホールデン」として販売され、5年間で12万台以上生産された。ホールデンはまた、ピックアップトラックを指すオーストラリア独自の言葉「ユート(Ute)」を作ったことでも知られている。ちなみに、ユートの語源はユーティリティ(Utility)。

FJ

ホールデンの2番目のモデルであるFJは、1953年に発売された。48-215の実質的なマイナーチェンジ版で、2.2L直6エンジンの出力が61psから66psに増強されているのが特徴。3年間で約17万台が販売され、現在でもオーストラリアを代表するモデルの1つとなっている。2005年には、コルベットをベースにしたコンセプトモデル、エフィジーを生み出した(この記事の最初の写真は、そのエフィジーのイメージ)。

FEからEKへ

1956年に発売されたFEと、その2年後に発売されたFCと呼ばれる改良型は、ホールデンの海外進出の先陣を切るものであった。東南アジアやアフリカの大部分で販売されたものの、ホールデンの中心は依然として国内市場にあり、50%のシェアを誇っていた。

1960年には、3番目の新型車FBが登場。しかし、ライバルのフォードと比較して時代遅れとみなされてしまう。1962年、ホールデンはEK(写真)を発表し、1968年までほぼ毎年改良を重ねていく。

EH

1963年のユートは新型EHをベースに、2.4Lと2.9Lのエンジンに3速トランスミッションを組み合わせたモデルである。

トラーナ

FBベースのモデルの製造が続く中、ホールデンは英国ヴォグゾールのビバを国産化し、小型セダンのトラーナとして発売した。1.2L 4気筒エンジンを搭載していたが、1974年にはビバより350mm長いだけの5.0L V8モデルも登場している。

HK

1968年、ホールデンはシボレーとポンティアック向けの生産を終了し、新型車としてHKを発表する。このときホールデンは、スポーツ・マッスルカーに与えられる「モナーロ」をはじめ、さまざまな名称のバリエーションを導入している。

販売は順調に推移し、売上は増加の一途をたどった。累計10万台の達成から10年後の1969年には、200万台を達成。HKの後継モデルであるHTには、オーストラリアで初めて設計された量産型V8エンジンが搭載された。

HQ

1970年代初頭に発売されたHQ以降、ホールデンは一部を除いてほぼすべてのモデルの設計と生産を国内で行うようになった。HQは瞬く間に成功を収め、3年間で48万5600台を販売している。

また、ホールデン・プレミアのボディにロータリーエンジンを搭載したマツダ・ロードペーサーAPもこの頃に誕生した。価格の高さ、燃費の悪さ、性能の低さなどから販売は伸び悩んだが、GMのボディにロータリーエンジンを搭載した唯一の市販モデルとして記憶されている。

ハリケーン・コンセプト

1969年に発表されたハリケーン・コンセプトは、道路上の磁気ストリップで制御するナビゲーションシステムなど、多くの新技術を搭載していた。

トラーナGTR-Xコンセプト

1970年に発表されたトラーナGTR-Xも魅力的なコンセプトであった。しかし、十分な販売台数が見込めず、お蔵入りとなっている。

コモドア

1975年にヴォグゾール・カデットをベースにしたジェミニが、1978年にはカールトンをベースとしたコモドアが発売された。コモドアは発売初期こそ成功を収めたものの、より大型で車内が広いフォード・ファルコンの後塵を拝するようになる。

1980年代には、ホールデンは厳しい国内市場での存在感を高めるために、いすゞからさまざまなモデルを譲り受けた。フォードが優れた製品を投入し、日本メーカーも台頭してきたため、次第に苦しい状況へ追い込まれてきたのだ。

最新のコモドアVKの発売が話題になったが、結局のところ単なるマイナーチェンジに過ぎなかった。日産エンジンの採用には異論もあったが、ホールデンの6気筒エンジンを無鉛燃料に対応させる改造コストを懸念しての決断であった。

ピーター・ブロック

オーストラリアの有名なレーシングドライバー、ピーター・ブロック(1945~2006年)は、約40年にわたりモータースポーツにおけるホールデンの代名詞となった。

レースと販売

ホールデンはブロックの活躍を利用し、5.7L V8を搭載した4ドアのモナロGTSを販売。レースにおける「日曜日に勝って、月曜日に売る」精神を積極的に取り入れたのである。

レーサー

ホールデンは、フォードとともにオーストラリア・ツーリングカー選手権とV8スーパーカー選手権を牽引した立役者である。

分割

1980年に登場した新型WBでは、乗用車シリーズと商用車シリーズが分割された。

コモドールSSグループA

ホールデン・コモドアSSグループAは、4.9L V8を搭載し、ツーリングカーレース用のホモロゲーションモデルとして製造された。

逆境

ホールデンにとって不利な為替レートによるパワートレインのコスト上昇が引き金となり、財政は悪化。自動車とエンジン事業の再編成・分離が行われる。品揃えを補うため、多くのモデルが他社から輸入された。

1990年代、ホールデンのラインナップはコモドアを中心に展開する。1997年のコモドアVT(写真)は、フォード・ファルコンのスタイリングを嫌った消費者に受け、ベストセラーとなった。このコモドアはオペル/ヴォグゾール・オメガとの関係性が深い。

コモドアシリーズの拡大

コモドアは、セダンだけでなくステーションワゴンやユートモデルも生み出された。

HSV GTS 300i

2000年に登場したHSV GTS 300iは、最高出力400psの5.7L V8を搭載している。生産台数は117台。

モナロ

モナロはホールデンで最もリスペクトを集めている車種の1つだ。3代目モナロは2001年、24年ぶりに復活した。

モナロのユートモデル

大型のV8エンジンをフロントに搭載し、リアを軽くしたテールハッピーなモデルで、「マルー」と呼ばれた。

英国

ホールデンは英国でもヴォクスホールブランドから販売された。写真のVXR8は、V8エンジンを搭載したコモドアである。

輸入車

1990年代半ばになると、トヨタとのOEM契約が終了し、欧州のコルサ、アストラ(写真)、ベクトラなど当初現地で組み立てられていたモデルも、後に輸入されるようになった。

クルーズ

初期のホールデン・クルーズは、海外仕様のスズキ・イグニスのリバッジエンジニアリングであったが、後にシボレーベースのモデルとなる。

ジャック8

いすゞ・トルーパーのOEM、ホールデン・ジャッカルーをベースにした高性能コンセプトが「ジャック8」である

斜陽

その後の10年で、トヨタはホールデンを抜き、オーストラリアでナンバーワンの自動車メーカーとなった。ホールデンは赤字が続き、2009年にGMは連邦破産法第11条の適用を申請する。

終焉

現地生産モデルの数が少なく、市場が求める中~小型SUVもなかったため、結果として市場シェアは低下しつつあった。従業員は給与カットと将来の給与凍結に同意し、経営陣が政府と資金調達の交渉をしていることも分かっていた。

オーストラリアでの自動車製造は、経済的に厳しい状況に追い込まれていた。2000年代に中国が主導する天然資源への莫大な需要により、オーストラリアドルは非常に高くなり、輸入車がとても安価になっていたのだ。

GMは2013年、オーストラリアでの生産終了を発表し、2017年に工場を閉鎖した。最後に生産されたのはコモドアだった。その後もGMはホールデンのバッジを付けた輸入車(ほとんどがオペル)を販売し続けたが、2021年末にブランドは終焉を迎える。オーストラリアの偉大な企業にとって、悲しい結末だった。

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みんなのコメント

4件
  • オーストラリア旅行の時、ホールデンコモドアっていうデカいセダンにレンタカーで乗った

    マツダ車みたいな大味のクルマだった。
  • マツダロードペーサー。知る人ぞ知る知らない人は知らない車。興味のある方は検索されたし。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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