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NSXに“スーパーカーとしての価値”はあるか?

掲載 更新 11
NSXに“スーパーカーとしての価値”はあるか?

NSXに乗るたび考えさせられる、「スーパーカーとは何か」というシンプルで根源的な問いかけ。東京から京都への道すがら、その答をいまいちど考えてみた。そのうえで、NSXが提供しうる“スーパーカーとしての価値”に迫ってみた。

Rei.Hashimoto“スーパーカーとしての価値”とは

SUVとなった令和の“スペシャリティカー”

NSXには意外と黄色がよく似合う。初代にもインディイエローパールがあった。黄色に塗るといっそうスーパーカー感が増す。もっとも黄色や橙色(サーマルオレンジパールという)といった、いかにも! なカラーを選ぶ人はさほど多くないようだ。カーセンサーネットで検索してみれば、たいてい白かイメージカラーの赤メタで時折青メタが混じる程度である。

もしリセールバリューを気にして無難な色を選んでいる場合が多いのだとすれば、それは随分と的ハズレ、というかもったいない話だ。

確かに白やイメージカラーは日本では売り易いと言われている。けれどもスーパーカーの場合、それは必ずしも将来的な価値とはリンクしない。新車時に人が選ばなかった色ほど、あとから価値がついてくるからだ。要するにレアである。イエローやオレンジのNSXには、そういう期待がもてる。今後加わるであろう、新色も(奇抜であればあるほど)大いに期待できると思う。

それはそうと、ホンダのホームページを覗くと「現行モデルの販売は終了いたしました」という表示があって一瞬ドキッとしてしまった。マイナーチェンジか何かが予定されて、我知らぬ間に終わってしまっていたのか、と思った。事実は日本における2020年モデルの販売が終了したということで、また改めて21年モデルのオーダーが始まるということらしい。

そもそも現行型のNSXはアメリカで生産されており、しかも生産に加担する人(熟練工)の割合がいまどき極端に高いクルマである。半手造りだと言っていい。それゆえ生産キャパは日に最大8台と言われている。オーダーの落ち着いた今ではそれよりも少なくなっているのだが、もともと日本への割当て=右ハンドル仕様の生産、は少なかった。スーパーカーとしては、悪くない計画生産状態になっていると言っていい。

そう、NSXに乗るたび、初代でも現行でも、考えさせられることがある。それは、「スーパーカーとは何か」というシンプルで根源的な問いかけだ。京都への道すがら、その答をいまいちど考えてみようと思った。そのうえで、車両価格2420万円~というNSXが提供しうる“スーパーカーとしての価値”にも迫ってみたい。

スーパーカーとは、クルマ=カーを超えて=スーパーな存在だ。まずそのことが“見た目”でアピールされなければならない。背の高いクルマ全盛の世の中にあって、低いことはもうそれだけですでに異様だろう。その低さをよりいっそうアピールするために、ある程度の幅とボディサイズも必要となる。つまり、大きめのパワートレーンをリアもしくはフロントへ完全なミッドシップとしてレイアウトした場合にのみ、図抜けた異様さが生まれるものだと思う。

とはいえ、決してレーシングカーであってはいけない。性能の追求と技術の実験であるという点でスーパーカーとレーシングカーは似た者同士だけれども、ロードカーとして各種のレギュレーションに合致させるか否かでは天地の違いがある。要するにスーパーカーには、秀でた性能と分かりやすい非日常性とともに、手荷物くらいは呑み込むグランツーリズモとしての素養もまた少なからず求められているのだった。否、奇抜なカタチをしながらもGT的であればあるほどに良い。

Rei.Hashimotoライバルたちにはないユニークな魅力がある

NSXはどうだろうか。ミッドに積むエンジンはより強力な非日常性を提供するために本来は8気筒以上が好ましい。けれどもダウンサイジング全盛の今となっては、NSXの積む3.5リッターV6でも最早十分に“大排気量マルチシリンダー”だと言うこともできる。しかも3つの電気モーターの力を借りて8気筒相応のパワースペックも得ているのだ。V6エンジンをドライバーの背後、リアアクスルの前に縦置きした結果、初代に比べてもいっそうスーパーカーらしいスタイリング、幅広く平べったい、を手に入れた。正しく、スーパーカーらしいカタチを……。

インディイエロー・パールIIにペイントされた最新のMY20に乗ってみて、NSXは着実に進化を続けていると確信した。実はMY19でいちどナカミの“改良”を受けている。そこでスポーツカーとしてのドライブフィールがいっそう磨かれた。SH-4WDの制御も滑らかになって、実に素直なハンドリングマシンになっていたのだ。そこからこんどはGTカーとしてのパフォーマンスも引き上げられたように思う。東京と京都の往復が実に快適なドライブだったからだ。

車両本体価格2400万円強。オプションを奢れば乗り出し2800万円を越えてくる。それがマーケット的に意味するところは、マクラーレンのスポーツシリーズ(540C)あたりと同価格帯であり、ちょっと頑張ればV10ミドシップのランボルギーニウラカンRWDまでターゲットに入ってくる。

この事実を知って、「オレならランボルギーニだな」、と即断する向きもあっていい。スーパーカーもまた多分に“ヘリテージイメージ”に支えられたブランドビジネスの際たるものだから。

けれども、わが日本の(米国産だが)ホンダNSXに勝ち目が全くないか、と問われれば、そんなことはないと応える。SH-4WDという素晴らしい車両制御テクノロジーや他に先んじたハイブリッドシステムなど、同価格帯のライバルたちにはないユニークな魅力があると思う。

NSXに2500万円は高い。そうおっしゃる方は多い。けれどもそんな意見もまた間違っている。この15年間、つまりNSXが“途切れていた”間にこのクラスの高性能車の価格レンジはほぼ倍になっているのだ。クルマが高くなったのではない。日本人の所得が上がっていないだけである。クルマの価格上昇に帯する怒りはメーカーではなく政府に向けた方がいい。何より、NSXの性能には2500万円の価値が十分にあると思った。

文・西川 淳 写真・橋本玲 編集・iconic

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みんなのコメント

11件
  • ちょっと前に乗らせてもらった感想は、良い車だと思うけど、これに2500万出すなら、俺は911GT3を買うな、と思った。
  • 筆者はこのNSXを買って乗っているのか? ただのホンダのゴマすり物書きか? 
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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