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話題の「運転外来」ってなに? 高齢者ドライバーの免許更新事情とは

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話題の「運転外来」ってなに? 高齢者ドライバーの免許更新事情とは

■「自動車運転外来」が生まれたきっかけとは

 近年、増加傾向にある高齢者ドライバーによる交通事故。2019年4月に東京都豊島区東池袋で発生した事故をはじめ、連日のように報道されています。

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 そんななか、2017年10月に高知県高知市の愛宕病院が日本で初めて開設した「自動車運転外来」というものがあります。最近では、「禁煙外来」や「肥満外来」といった身体にまつわるものが大半でしたが、運転に関する外来とはどんなものなのでしょうか。

 自動車運転外来とは、増加傾向にある高齢者ドライバーによる交通事故をきっかけに出来た外来診療科となり、2017年3月の高齢認知症ドライバーに関する道交法改正を受けて開設されました。

 高齢者ドライバーの事故が報道されるたびに、「高齢者は免許を返納すべき」との声が挙がり、日に日にその大きさは増しています。

 しかしながら、東京都心ならともかく、地方都市ではクルマがなければ生活に大きな支障をきたします。ましてや高齢者だけの世帯ともなれば、なおさらです。そこで高齢者ドライバー支援を目的に開設されたのが、「自動車運転外来」です。

 自動車運転外来の開設経緯について、愛宕病院リハビリテーション部の沖田学副部長は、次のように話します。

「免許継続となった多くの高齢ドライバーは認知機能が低下していた軽度認知障害でした。認知機能が低下していても認知症ではないために免許が継続されますが、家族や本人のなかには『不安』を感じている人もいます。

 一方で自信過剰な高齢ドライバーは、認知機能が低下していても不安もなく運転をする人もいました。リハビリテーション医学では認知症の人でも重症でなければ、認知機能が改善できることが分かっています。

 また、軽度認知障害の人も認知症へ進行しないようにできることも分かっています。そこで、リハビリテーションにより認知機能が低下した高齢ドライバーの健康安全運転寿命を伸ばすことができるのではないか、考えた結果として、運転外来を開設しました」

 運転外来設置前でも交通違反などのほか、免許更新時で認知症の疑いを指摘された高齢者が診断書の提出を求められるケースに対応していたといいます。

 具体的な診察内容として、前出の沖田学副部長は次のように説明しています。

「外来の開設以前から公安警察の紹介で認知症診断の提出命令の人の認知症検査をしていました。これらは、リハビリテーション部の作業療法士が認知症検査を担当しております。

 そこでは、認知症検査の結果が良ければ免許継続となり、認知症と診断されれば免許停止となります。一般的な認知症検査は、認知症の診断用に米国で開発された30点満点からなる質問形式などを利用しています。

 しかし、詳細な認知機能は分かりにくいこともあり、当院では100点満点からなる別の診断方法を利用することで、認知機能が低下していることが分かりやすくなりました」

■「自動車運転外来検査」はリハビリまでノンストップ!

 具体的に愛宕病院では、認知機能に不安がある人や、交通違反をした高齢者ドライバーにドライブシミュレーターによるチェック、高次脳機能検査、超伝導MRI(Magnetic Resonance Imaging/磁気共鳴画像診断装置)による精細な脳画像診断をもとに、自動車の安全運転に不可欠とされる運動機能および認知機能評価を厳密におこないます。

 その結果を受けて、医師の処方に基づいた個々人に合わせたオーダーメイドのリハビリテーション治療による安全運転能力の向上を目指します。

 愛宕病院の運転外来の大きな特徴は、認知機能・運動機能の検査・診断から、その結果に応じたリハビリテーションまでノンストップで実施できることです。

 ただし、「リハビリテーションでは『認知機能の低下』について保険適応できません。リハビリテーションは症候学的に分析して患者さん固有の症状にオーダーメイドで治療加入する医療です。そのため、認知機能や運転など生活の質(QOL)に関連する能力の向上を治療対象としています」と前出の沖田学副部長は説明します。

 これまで同医院の運転外来を受診したドライバーは開設以来31名で、そのうち12名が任意検査だったといいます。その結果、運転免許を返納したドライバーは5名、免許停止者は4名でした。

 自動車運転外来は、徐々に広まりつつあるようです。しかし、診療科は内科から脳神経外科、リハビリテーション科、眼科などさまざまです。

 なかには富山西総合病院のように検診・人間ドックのひとつの分野として「運転ドック」と名付けている医療機関もあります。

 同病院の運転ドックも愛宕病院と同じく認知機能検査、MRIによる脳画像診断、ドライブシミュレーターによるチェックを実施、医師による説明がおこなわれるといいます。この運転ドックは、富山西総合病院と富山西リハビリテーション病院が連携して検査を実施しています。

 また、医療法人社団名芳会・イムスグループの自動車運転評価外来では、脳梗塞や脳溢血などのほか外傷による脳障害治療後の運転再開のための能力評価をおこなっています。

 ここでは運転再開にあたって問診後、神経心理学的検査(注意、記憶、判断力など高次脳機能検査)、視覚系検査(視力や視野、有効視野などの検査)など各種検査とドライブシミュレーターによるチェックを実施。

 必要であれば提携している自動車教習所で実車によるテストをおこない、脳障害治癒後の運転適性を総合的にチェックして診断するそうです。

 いずれも増加する高齢者ドライバーの認知機能を医学的に検査し、自動車運転適格者かどうかを決定。そのうえで運転者を支援するリハビリを含めた運転外来という流れが、これから増えていくかもしれません。

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