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オアシス再結成がつなぐ親子の絆──ツアー初日に駆けつけた、2世代にわたるファンたちの声

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オアシス再結成がつなぐ親子の絆──ツアー初日に駆けつけた、2世代にわたるファンたちの声

オアシスの再結成が意味するものはギャラガー兄弟の仲直りだけではない。世代間の共通言語として、イギリス中の親子の絆を深めるきっかけを生み出している。

オアシス再結成ツアー初日となった7月4日(現地時間)。開場の2時間半前、英カーディフの街は人という人で溢れかえっていた。どこのパブも、どこのレストランも、どこの店も、どこの通りも、オアシスのロゴを身に纏った男たち、あるいはバケットハット、ポロシャツ、パーカー、ストーンアイランドのジャケットのいずれかを組み合わせた男たちでごった返している。

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セント・デイヴィッズ・ショッピングセンターには、事前予約が必要なバンドのグッズショップが一時的に開店し、建物の最上階を半周する長蛇の列が出来上がっていた。プリンシパリティ・スタジアムでたびたび大きなイベントに関わってきたスタッフの何人かは、街のこんな姿は見たことがないと私に語った。

パイントグラスや缶の入ったビニール袋を握り締めた男たち、タンバリンを鳴らす男たち、チケットを売る男たち、「チケット希望」と書かれたラミネート加工されたA4の紙を首から提げた男たち、タバコ、アルコール、碁盤の目フォーメーションで歩く警官隊、ポテトを盗み食いするカモメ……。そんな混沌のなかを最悪のタイミングでランニングしていたひとりの男性は、自分の街に何が起こったのか混乱している様子だった。ある男性は、新しくできた友人たちと握手、ハグを交わし、「会えてうれしいよ、兄弟」「君たち最高だね。マジでイカしてるよ」と言い合っていた。

そのときプリンシパリティ・スタジアムでは、別々に到着したらしいリアムとノエルのギャラガー兄弟が、本人たちの希望通り、できるだけ離れた楽屋でそれぞれ準備をしていた。再びオアシスとして、ステージに戻る準備だ。

それこそが、このお祭り騒ぎの理由である。誰もが待ち焦がれた、本人たちは不本意かもしれない、おかしな家族の再会物語だ。おそらく現代のカルチャーで最も有名な兄弟喧嘩を乗り越え、ある家族が再び集まったのだ。そして、この兄弟は再び一緒になることで、国中の父と息子を勇気づけている。

世代をつなぐ共通言語

父親たちの多くは90年代半ばのバンドの全盛期を知る年齢であり、その全盛期の経験から「オアシス」と「クール」という概念が切り離せないものとなっている。今、彼らにはバンドが最後に一緒に演奏していたときにはまだ生まれていなかった、あるいは少なくともこのようなギグに参加するには幼すぎた息子たちがいる。オアシスが解散した日に生まれた人は、来月16歳。ファーストアルバム『Definitely Maybe』がリリースされた日に生まれた人なら31歳だ。

しかし、音楽の世代を超えた魅力を物語るように、その息子たちの多くも今やオアシスの大ファンだ。恥ずかしげもなく親から叩き込まれたからなのか、それともあくまで本人の音楽的好奇心からなのかはわからないが、父親が愛するバンドを自身も愛し、そして今ようやく彼らをライブで観る機会を得た少年や青年たちがいる。これは稀な出来事と言ってもいい、ひとつの文化的事件だ。多くの人は、この日が本当に来るとは信じられずに祈り続けてきた。スタジアム周辺で売られていた特に人気のTシャツのひとつには、「THE GREAT WAIT IS OVER(待ちに待った日が遂にやってきた)」と書かれている。

「彼らを観るのは私は5回目ですが、子どもたちは初めてです」と、48歳のギャビンは20歳の息子ダンと17歳の娘ルビーを指して言う。ダンとルビーに、オアシスにハマる以外の選択肢はなかったのかと尋ねると、家族全員が笑った。「そんなことあり得ない」と、ダンは言う。「私たちはずっと、車の中でオアシスを聴きながら育ちましたからね」

「子どものクラブ、ラグビーの試合、体操、水泳、子どもたちを送り迎えするときはいつもね」と、ギャビンは付け加える。「それが人生でした」

「だから、チケットが発売された瞬間に飛び付きましたよ。ウンコにハエがたかるみたいにね」と、ダンは言う。

熾烈を極めたチケット争奪戦

チケットの入手は一筋縄ではいかなかった。1000万人以上がトライしたが、大半は落選した。しかし、ここで息子たちが本領を発揮する。父親たちは初日に尽力してくれるかもしれないが、息子たちは技術的なノウハウでそれを引き継ぐ。

「職場で同時に35台のコンピューターを立ち上げてね」と、27歳のフレディは自身と62歳の父ヘクターのためにチケットを確保するために奮闘したことを振り返る。「全部ダメでした。でも、1日に20回くらいウェブサイトを見て、何枚かのチケットを手に入れることができました。私は4回行きますよ」

39歳のリチャードと17歳の息子ルークがチケットを手に入れたのは、休暇から帰る途中だった(「特別にビッグな休暇でね。スペインを回るクルーズですよ」)。彼らは列車の中でスマホに目を向け続けた。その昔、リチャードはオアシスの存在こそ知っていたが、それほど好きなわけではなかった。ただし、それもつい最近、ルークが興味を示すまでのことである。「ここ数年、息子の影響で音楽の趣味が大きく変わってきました」と、リチャードは言う。「もし再結成されたら、ほかの何よりも観に行きたいとよく言っててね。息子のせいで私までつられたわけです」

3時間の待ち時間の末、彼らは列車の乗り換えで駅に降りた。プラットホームにいたとき、突然の通知とともにチケットが取れたことが知らされた。「大騒ぎしてしまいました」とリチャードは言う。「その場で飛び跳ねたりなんかしてね。正直言って、未だに信じられませんよ」

私はルークに、チケットを手に入れたことは休暇と同じくらいよかったかと尋ねた。「ずっといい」と、彼は即座に答えた。「何よりもね。もしかしたらライブそのものよりも。あのときの気持ちといったら──最高の感覚でした」

誰もがそう簡単にいったわけではなかった。チケットサイトのTicketmasterはウェブサイトで車いす利用者のためのチケットを販売していないため、会場の障害者チケット窓口に直接電話しなければならない。車いすを使用している21歳のジャックを息子に持つ41歳のマットは、発売日当日にウェンブリー・スタジアムの窓口に800回以上問い合わせたが、努力は無駄に終わった。彼は挑戦し続け、つい2日前に初日のチケットを手に入れることができた。「息子は毎日ずっと聴いていますからね」と、マットは言う。「幸せでいっぱいですよ」

親子で観に行くバンド

それはここにいる誰もがそうだ。ここには、ギターの練習で憶えたオアシスのリフが目の前で演奏されるのを心待ちにしている息子たちが、それを教えた父親たちと一緒にいる。63歳のブライアンは、チケットを手に入れる望みはないと諦めていた。31歳の息子ジェームズが、一緒に行こうとしていたガールフレンドと別れたとき、代わりに父親を連れて行こうと決めるまでは。30歳のトムは、現在63歳の父フィルがバンド解散の翌年にリリースされたコンピレーション『Time Flies... 1994-2009』をガソリンスタンドで買い、家族でキャンプに行く車の中でかけていたのを憶えている。それ以来トムは、いつか父親と観に行ければと、ギャラガー兄弟が仲直りしてバンドが再結成されることを願い続けていた。

ダン、ギャビン、ルビーにとっては恍惚とした気分と同時に、ちょっとした悲しみもあった。発売日には一度に7台の端末を操作していたにもかかわらず、家族4人分のチケットを手に入れようとした最初の試みは失敗に終わったのだ。そして数日前に巡ってきたチケットの値段は、3人分までしか買えないことを意味した。音楽好きの彼らは先月のグラストンベリー・フェスティバルの夜も遅くまで起きていて、朝から仕事があるにもかかわらず、ザ・プロディジーを観るために家族一緒にテレビを囲んだ。この日、ギャビンは妻も来られていたら喜んだろうと話した。

「彼女はオアシスのファンというわけでもないですが、90年代を知っているし、家族思いの女性でしてね」と、彼は言う。「チケットが発売されたときは、週末をまるまる潰して手に入れようとしてくれたんです。それができなかったときは本当に落胆していました。今度のチケットが手に入るチャンスが巡ってきたとき、それは高額でした。それでも彼女は『買いなさい』と言ってくれたんです。それから、『私の分は買わないで』ともね。今朝の彼女は自分が行けないことで泣きそうになっていました。ひどく落ち込んでいたんです」

チケットに1人500ポンド(約9万5000円)払った人もいるという話を聞いていたので、ギャビンにいくら払ったのか訊いてみた。「1枚250ポンドでした」と彼が答えると、ダンが叫んだ。「その話はしないで! その話はしないで!」

「チケットを手に入れたときは仕事がありました。それに超過勤務もしていましたからね。このシフトならちょっとはチケットの足しになるかなと思ったんです」と話すギャビンは、チケットにかかった費用を思い出して顔を少ししかめたように見えた。ダンが自身は最低賃金で働いていると付け加えると、ギャビンは言った。「でもね、そんなことはどうでもいいんです。見てください。父と息子の会話を取り戻しました。私の子どもたちがここにいる。それこそが重要なことなんです」

From British GQ

By Killian Faith-Kelly
Translated and Adapted by Yuzuru Todayama

文:GQ JAPAN Killian Faith-Kelly
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