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シトロエンDS3はそれまでの価値観では語れない、独創的な個性を持っていた【10年ひと昔の新車】

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シトロエンDS3はそれまでの価値観では語れない、独創的な個性を持っていた【10年ひと昔の新車】

2010年5月、2代目C3とともに、シトロエンの新しいラインナップ「DSシリーズ」のトップバッターとして「DS3」が登場した。「DS」という名前の復活は当時どのように受け入れられたのか。Motor Magazine誌はいち早くこのモデルに注目し、試乗テストを行っている。ここではその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年7月号より)

C3より上位の、いわゆるプレミアムモデルという位置づけ
シトロエンの新しいモデルラインであるDSシリーズの位置づけを端的に表現すれば、従来からあるCシリーズより上位の、いわゆるプレミアムモデルということになるだろう。その第一弾として新型C3と同時に発表されたDS3は、C3とは基本骨格を共有しながら、明らかに異なった味付けが施されている。

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とくに、このDS3が仮想敵としているのがMINIだということは改めて言うまでもないだろう。本国でキャンペーンなどに使われている「アンチレトロ」や「ドント・ルックバック」というメッセージの矛先は明らかにMINIに向けられたものだ。

このMINIこそ、コンパクトカーに本当の意味でのプレミアム性を持ち込んだ最初の例だと言えるだろう。単に内外装が立派だというだけでなく、他に代わるものがない圧倒的な個性を有し、結果としてクラスレスな印象を醸し出す。コンパクトさですらも大きな価値へと変えてしまう。いや、そんな特質はあるいはオリジナル・ミニから引き継いだものと言うこともできるかもしれない。

凝りに凝ったデザインと素材、狙いはレトロではなく先進性
いずれにせよ、DS3が同じようなところを狙っていることは明らか。ただし大きく異なっているのが、個性のレトロ要素を用いていないということだ。DSという名称は懐古趣味ではなく、あくまで革新性やモダンの証として。あくまで一歩先を行くこと、アバンギャルドであることこそシトロエンのアイデンティティなのである。

実際、内外装のデザインは凝りに凝ったものだ。エクステリアは、フロントマスク左右のLEDライトが強烈なアイキャッチ。サメの背びれのようにも見えるBピラーは、上側をブラックアウトすることでフローティングルーフのように見せる。実用的な5ドアのC3に対して3ドアのみというのも、キャラクターを明確にする意欲の表れと言えるだろう。ツートーンのボディカラーも組み合わせは鮮烈だ。

インテリアも、やはり隅々までデザインされている。形状自体はC3とほぼ共通だが、各部の大胆なクロームのアクセントやピアノブラック仕上げのセンターコンソールによって印象は特別なものに。この見せ方、雰囲気の出し方の巧さはさすがと言うほかない。

特筆すべきは、内外装ともども色やデザインを、実に多彩にコーディネートできるということだ。ボディ、ルーフ&ドアミラー、シート、ダッシュボード、ホイールやそのセンターキャップの色の組み合わせは、まさに数えきれないほど。さらにシート地もレザーとファブリックから選べるし、ルーフステッカーやその他の様々なアクセサリーも用意されていて、月並みな言い方だが、まさに自分だけの1台をつくり出すことができるのだ。

グレードは2種類。1.6L自然吸気エンジンに4速ATを組み合わせた「シック」と同直噴ターボエンジンに6速MTを組み合わせた「スポーツシック」が用意される。今回試乗したのは後者。「シック」とはパワートレーンの他にも外装のクロームデコレーションや17インチタイヤ&ホイール、シート形状&表皮などが異なっている。

スペック云々の前に、まず感心させられるのが操作系全般を貫くタッチの上質さだ。ステアリングホイールの操舵感にはしっとりとした重みがあり、適度にショートストロークでかつドライに過ぎないシフトフィールも、MTに乗る楽しさを満喫させてくれる。

低回転からひたすらフラットにパワーを供給し続けるエンジン
「スポーツシック」のスペックは最高出力156ps、最大トルク240Nmと、サイズからすれば強力そのものだが、昔のいわゆるホットハッチと違うのは、出力特性がピーキーではないという点だ。1400rpmという低い回転域から早くも最大トルクを発生、そのまま中高回転域までひたすらフラットにパワーを供給し続ける特性のおかげで、極端に言えば、どのギア、どの回転域にあっても踏めばパワーが出る。6速1500rpmからでも加速する粘り強さはコンパクトカーに乗っていることを忘れさせるほどだ。

一方、高回転域は6000rpmからのレッドゾーンのさらに先まで引っ張れるが、そこまで回しても旨味はなさそうである。要するに刹那的な刺激より持続的な余裕を狙ったエンジンであり、速さを引き出すというよりは操作自体を楽しむためのMT。そんな風に解釈することもできるだろう。

静粛性の高さも印象的だ。吸音材の大量採用やシール性の向上などによって、騒音レベルは従来型C3に対して半減と謳われているが、それは乗ればすぐに実感できるはずだ。

操作感に優れたステアリングホイールはレスポンス自体も上々。切り始めたと同時にノーズが反応するような小気味良さが演出されている。一方、そこから先は安定志向。切ったなりには曲がるが、クルマの方から嬉々として曲がりたがるというものではない。今回は雨の中でしか乗れなかったので断定的なことは言えないが、その限られた状況下では、多少攻めてもリアがどっしり落ち着いていたのが印象的だ。誰でも、どんな条件でも安心して楽しめるという意味では、良い落としどころかもしれない。

一方で直進安定性には目を見張るものがあった。ホイールベース2455mmのクルマとしてはツアラーとしての資質は高そう。やはり、これはあくまでシトロエンなのである。

ただし、乗り心地は「しなやか」とまでは評せない。C3と較べると突き上げ感があり、タイヤサイズのせいかバネ下も重く感じる。しかしながら衝撃の最後の部分ではしっとりとカドが丸められているので、長い距離を乗っていても辟易するようなことはなさそう。路面が悪くなければ、フランス車らしいフラットな姿勢を保ったままの心地よいクルージングが楽しめそうだ。

ホットハッチ的な刺激的な走りっぷりを求めると肩すかしを喰らうことになるだろう。シトロエンDS3は、どうやらそういうクルマではなさそうだ。質にこだわった毎日の暮らしに溶け込んで、走りのふとした瞬間、あるいはショーウインドウに映り込む自車の姿が目に入ったときなど様々な場面で、良いクルマがともにある生活の歓びを実感させてくれる。生活をプレミアムなものにしてくれる。言ってみれば、そんな存在ではないだろうか。

当然、その背景にはパーソナリゼーションという要素も効いている。そもそも輸入車を買おうという人は、生活への彩りや個性を期待しているのだ。それに最大限のかたちで応えたプジョー・シトロエン・ジャポンの努力はまさに賞賛ものだと言えるだろう。

シトロエンDS3は、実に今っぽいクルマだ。まさに新しい時代に相応しい価値をもったコンパクトカー。そんな風に言うことができそうである。(文:島下泰久/写真:永元秀和)

シトロエン DS3 スポーツシック 主要諸元
●全長×全幅×全高:3965×1715×1455mm
●ホイールベース:2455mm
●車両重量:1190kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:115kW(156ps)/6000rpm
●最大トルク:240Nm(24.5kgm)/1400-3500rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FF
●車両価格:269万円(2010年当時)

シトロエン DS3 シック 主要諸元
●全長×全幅×全高:3965×1715×1455mm
●ホイールベース:2455mm
●車両重量:1180kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1598cc
●最高出力:88kW(120ps)/6000rpm
●最大トルク:160Nm(16.3kgm)/4250rpm
●トランスミッション:4速AT
●駆動方式:FF
●車両価格:249万円(2010年当時)

[ アルバム : シトロエン DS3 はオリジナルサイトでご覧ください ]

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