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ジャガー Fペイス×レンジローバースポーツ、同門でつくり分ける理由とは?【Playback GENROQ 2016】

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ジャガー Fペイス×レンジローバースポーツ、同門でつくり分ける理由とは?【Playback GENROQ 2016】

JAGUAR F-PACE × LAND ROVER Range Rover Sport

ジャガー Fペイス×ランドローバー レンジローバースポーツ

ロールス・ロイスのSUV「カリナン」で味わうロングドライブ 【Playback GENROQ 2019】

挑戦の果てに辿り着いたジャガー製SUVの境地

近年流行のプレミアムSUVセグメントは言うまでもなく激戦区。その中で圧倒的存在感で君臨しているのがランドローバーである。同グループのジャガーは共食いをしないよう差異を設けているのか? 走行性能から使い勝手、ジャガーブランドの理念から考えた。

「ジャガー創設者がブランドの理念に掲げた“Space”と“pace”」

ジャガー創設者のサー・ウィリアム・ライオンズは、ブランドの理念として「Grace Pace and Space」という3つの言葉を掲げた。まず1940年代の終わりから50年代にかけて、当時最速と言われたスポーツカーをラインナップしたし、ル・マンをはじめモータースポーツでも活躍したから「Pace(速さ)」はわかる。

またEタイプをはじめとする歴代スポーツカーから丸目4灯でおなじみの歴代サルーンまで、過去のモデルを振り返ってみれば、その美しさから「Grace(優雅)」というのも納得できる。

「Space(広さ)」も重視していたとは一瞬意外な気がしたが、考えてみればかつてのジャガーは高性能ではあったが、同じ英国のロールス・ロイス/ベントレーのようにプレミアム・ブランドではなかった。目的別に何台も所有できる貴族ではなく、そこそこ成功した庶民に喜んでもらうべく、一台に高性能と実用性の両方を盛り込むべし、というのがサー・ウィリアムの目指すところだったのかもしれない。

「ディーゼルは1920kgの車重をキビキビ動かすにはパンチが足りない」

ともあれ、今回、同じグループのレンジローバースポーツと乗り比べるかたちでFペイスを試乗した。

試乗はまず2.0リッター直4ターボディーゼルエンジンを搭載するダークサファイアの20d Rスポーツから。このエンジンはすでにXFやXEにも載っている。最高出力180ps、最大トルク430Nmというスペックはモデルが違っても共通。数値面では2.0リッターディーゼルとしてトップクラスだが、実際に乗ってどうか。

騒音、振動ともによく抑え込まれている。が、いかんせん1920kgの車重をキビキビ動かすには少々パンチが足りない。1660kgのXEであれば、発進でも中間加速でもアクセルさえ踏めば車体をグイグイ前へ押し出してくれるのだが、プラス260kgは大きい。ギヤ比は最適化されているのだろうが、ガソリンV6モデルに比べ、とりわけ発進加速において物足りない。

もちろん、一般的な尺度を当てはめれば決して遅いというわけではないが、このアグレッシブな顔つきから期待するほどではなかった。メルセデス・ベンツGLEやBMW X5とガチンコ勝負を展開するならディーゼルにもV6が欲しいところ。

「山道を走らせてみて思った。これはSUVの挙動ではない」

と、こんなことを感じるのも、Fペイスのボディがいくらでもパワーを受け止めてくれそうなほどしっかりしていたからだ。80%がアルミのモノコックは、その3分の1が再生アルミだということも彼らの自慢のひとつのようだが、再生か新しいかは別にして、運転中の体感的なボディ剛性の高さに舌を巻いた。

路面の不整に対してはそれを正直に乗員に伝えながらもダンパーが吸収してくれる。コーナリングなどの大きな負荷に対しては、音を上げるような気配を一切感じさせない。

山梨・小淵沢の山道を走らせてみて思った。これはSUVの挙動ではない。ステアリング操作に対する反応がよくできたスポーティセダンのそれ。操作に対して遅れなくヨーが立ち上がり、それでいて重心が高いはずのボディはまったくぐらりとこない。足まわりがガチガチに硬いわけでもないのにだ。

8割アルミでも2トン弱かよ! と思うかもしれないが、GLEやX5は優に2トン超えということを考えると、ジャガーが割高でもアルミにこだわるのが理解できる。

「Fペイスの本命はガソリンV6だと確信した」

3.0リッターV6スーパーチャージャーエンジンを搭載した35t Rスポーツに乗り換える。V6エンジンはスペックが2種類用意され、Rスポーツは最高出力340ps、トップグレードのSは同380psとなっている。

アイドリングからレッドゾーンまでスムーズに回る。パワーは340psでも十分というほかない。高回転域までパワーが落ち込むこともなく、もっと踏めもっと踏めとドライバーを駆り立てる。

文字通り“ペイス”を上げても高剛性ボディとほどよく硬い足まわりが受け止めてくれるので、なおさら踏んでしまいがち。そしてある段階で速度計を見て「こんなに出てたのかよっ!」と驚くパターンだ。Fペイスの本命はガソリンV6だと確信した。もちろん、経済性の面でディーゼルにも存在理由はあるが。

昨今、SUVをラインナップしない自動車メーカーは蚊帳の外。ジャガーもSUV発売の本音は「よそもやってるから」かもしれない。ただし、出来上がったFペイスは結果的に「Grace Pace and Space」という創業以来の理念を、ブランド史上最も高い次元で達成したモデルとなった。速く、カッコよく、ユーティリティ性能も高い。

「もしいま私が20~30代であればFペイスを選んだだろう」

Fペイスの試乗を終え、レンジローバースポーツHSEで小淵沢から東京へ戻る。Fペイスと同じ3.0リッターV6スーパーチャージャーエンジンを搭載し、最高出力も340psで同一。ただし、こちらは車両重量が2250kg。当然ながら走りだすのも止まるのも曲がるのもマイルドな挙動に終始する。こちらにこそ早くディーゼル追加を望みたい。

重量以外にもFペイスとの大きな違いがあって、それはレンジスポーツにはエアサスが備わるという点。エアサスがレンジスポーツの走りの印象を決定づけている。コーナリングなどの長く大きな負荷に対してはしっかりと踏ん張る一方で、路面の不整に対しては、細かくストロークすることでいなし、不整をなかったことにしてくれる。

Fペイスとレンジスポーツ。もしいま私が20~30代であればFペイスを選んだだろう。ダンピングの強い乗り味は「SUVにしては」というただし書き不要でスポーティだし、スタイリングもわかりやすくハンサムだし。しかし40代も半ばにさしかかったいま選ぶならレンジスポーツだ。歳のせいかどうかは定かではないが、近頃ダンピングの強さをうるさく思うことが多い。年々ソフトな乗り心地を好むようになった。

数年前、ジャガーがSUVを開発中という報道に接し、グループのランドローバーをベースとした単なる顔違いだったらイヤだなと不安だった。だがそれは杞憂だった。登場したのは、パワートレインを除けばレンジローバーとはほぼすべてが異なるオンロード向けSUV。なるほど、これなら両ブランドでSUVをつくり分けるのもアリだな。

REPORT/塩見 智(Satoshi SHIOMI)
PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)

【SPECIFICATIONS】

ジャガー Fペース 35t Rスポーツ〈20d Rスポーツ〉

ボディサイズ:全長4740 全幅1935×全高1665mm
ホイールベース:2875mm
車両重量:1980〈1920〉kg
エンジン:V型6気筒DOHCスーパーチャージャー〈直列4気筒DOHCディーゼルターボ〉
総排気量:2994〈1999〉cc
圧縮比:10.5±0.5〈15.5±0.5〉
最高出力:250kW(340ps)/6500rpm〈最高出力:132kW(180ps)/4000rpm〉
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/3500rpm〈430Nm(43.8kgm)/1750-2500rpm〉
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後インテグラルリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
燃料消費量:10.1〈15.8〉km/リッター
車両本体価格:849〈728〉万円

ランドローバー レンジローバースポーツ HSE

ボディサイズ:全長4855 全幅1985 全高1800mm
ホイールベース:2920mm
車両重量:2250kg
エンジン:V型6気筒DOHCスーパーチャージャー
総排気量:2994cc

圧縮比:10.5±0.5
最高出力:250kW(340ps)/6500rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/3500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
燃料消費量:8.4km/リッター
車両本体価格:983万円

※GENROQ 2016年 10月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

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