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還暦のパゴダルーフ メルセデス・ベンツSL(W113型) 時代を超越する優雅 中編

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還暦のパゴダルーフ メルセデス・ベンツSL(W113型) 時代を超越する優雅 中編

当時の基準としては軽くない1211kg

2代目メルセデス・ベンツ230 SLに積まれたM127型の直列6気筒エンジンは、もとは1950年代初頭の設計。ショートストロークの高回転型ユニットで、振動を軽減するクランクシャフトが組まれ、アウトバーンでの高速走行を長く支えたユニットだ。

【画像】パゴダルーフのメルセデス・ベンツSL(W113型) 初代300 SLにR107型、SLS 最新AMGも 全122枚

230 SLのシャシーも1959年のサルーン、220 SE譲りだが、ホイールベースは約350mm短い2400mm。ドアとボンネット、トランクリッドはアルミニウム製で、可能な限り軽く仕上げられていた。

それでも、スーパーライトの頭文字が与えられた2代目SLの車重は1211kgあり、当時の基準としては軽くない。進化版の280 SLでは1420kgに達していた。大きなエンジンが生むトルクで、動力性能は担保されたが。

230 SLのメカニズムで触れるべきは、ディスクブレーキを備えること。当初はフロント側のみだったが、メルセデス・ベンツの量産モデルとしては初となる。

サスペンションは、リアがロールセンターを低く抑えたスイングアクスルの独立懸架式。中央部に横向きの補助スプリングが組まれ、幅の広いトレッドでキャンバー角の変化を最小限に留めている。

フロント側は、サルーンと同様のダブルウイッシュボーン。3200km毎にグリスアップが必要とされた、キングピンを備えている。これはオーナーにとって手間だと考えたメルセデス・ベンツは、進化版の250 SLでグリスポイントを大幅に減らした。

より静かでトルクの太いエンジンの250 SL

230 SLで小さな弱点といえたのが、トランスミッション。全体のギア比を低くすることでレスポンスを高め、6500rpmまで使い切ることを許していた。一方で、ZF社製の5速MT以外では、3速とトップギアとの間のギア比が大きく離れていた。

確かに、当時の基準としてもギア比は低いといえる。110km/h前後での巡航で要求される回転数は、4000rpmに接近した。

4速ATは、滑らかなトルクコンバーター式ではなく、自社で開発された効率で勝る流体クラッチ式。稀に、ギクシャクした変速をする場合があった。動力性能へ、大きな影響はなかったが。

1966年11月までに生産された230 SLは、約2万台。その後はW108型サルーン、250 SE譲りとなるロングストローク型の直6エンジンを獲得した、250 SLへ進化。1967年3月から提供が始まっている。

中期の250 SLでは、当時のSクラスと同様に四輪へディスクブレーキを採用。ホイールカバーとステアリングボス、テールライトなどが外観上の違いといえる。スペアタイヤは荷室へ縦に積まれるのではなく、床面に水平に搭載された点も特徴といえた。

進化の目的の1つが、より静かにエンジンを回しトルクを太くすること。前期型の230 SLの最大トルクが21.9kg-mだったのに対し、250 SLは24.7kg-mへ改善されている。

直6エンジンはストローク増大に合わせて、メインベアリングを4枚から7枚へ変更。バルブは大径化され、オイルポンプは容量が増やされ、スロットルリンケージも改良を受けていた。

最高出力を182psへ高めた2.8L直列6気筒

ところが、250 SLの販売期間は約10か月と短かい。生産数は5186台で、1968年1月に後期型の280 SLへバトンタッチしている。

ベルギー・ブリュッセルで発表された280 SLは、1963年の230 SLから大幅に車重が増えていた。それでもシリンダーがボアアップされ、直列6気筒エンジンは2778ccを得たことで、動力性能は向上している。

最高出力は182psに届き、最大トルクは26.6kg-mへ増やされていた。静止状態から160km/hまでの加速時間は5秒短縮。0-97km/h加速を9.3秒でこなし、最高速度は199km/hに届いた。

実際のところ、同時期の高価な2シーターモデルとしては驚くほどの数字ではなかったが、市場の反応は好意的なままだった。英国価格は5000ポンド以上もしたが、生産が終了される1971年2月までに、さらに約2万4000台が売れている。

特別な思い入れを持つ人に選ばれる230 SL

1963年の230 SLの発表から60年が過ぎようという現在だが、近年はW113型がクラシックカーとして注目度を高めてきている。新車だった頃以上に。特に後期の280 SLは、かなり強気な価格で取り引きされているようだ。

今回ご登場願った3台のうち、ホライゾン・ブルーのクルマが250 SLで、サンドベージュ・メタリックが280 SLとなる。ともにメルセデス・ベンツSLを中心に扱うクラシックカー・ガレージ、SLショップ社のショールームに並ぶパゴダルーフだ。

「230 SLは、特別な思い入れを持つ人に選ばれますね。280 SLには、より大きな費用的な決断が必要になります」。と同社の代表、ブルース・グリーサム氏が説明する。

「レストアに必要なコストは、どちらもさほど変わりません。購入後にレストアするのではなく、既に仕上がった状態の230 SLや250 SLを選ばれる傾向が高いです。特に初期のW113型の場合、入手が難しい部品も出てきているためです」

SLショップ社の現在の在庫は、3代目となるR107型より、パゴダルーフのW113型の方が多いという。「課題といえるのが、メカニズムへ余り感心を示さないオーナーの方へ、弱点を理解してもらうこと。運転への気遣いも」

「1960年代の殆どのクラシックカーより、SLは遥かに運転しやすことも事実ですが」。とグリーサムが付け加える。

この続きは後編にて。

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