2000年以降は、イケイケドンドンから冷静な時代の流れに変化した
1980~90年代の活気と熱さは、クルマ好きを有頂天にさせた。とくに1980年代後半から90年代前半は熱かった。ボク個人としても、ギンギンにヒートアップした日々を過ごした。1970年代後半から数年前まで、多くのメーカーのクルマ開発にかかわってきたが、1980~90年代の開発現場は異様なほど熱かった。当然、ボクも熱かった。
【岡崎宏司のカーズCARS】1980-90年代は日本車の黄金時代。初代ソアラでアウトバーンを激走し、1989年、世界に誇る名車の誕生を喜んだ
そんな熱さに深く浸かっていただけに、その後の急激な熱量の下がり方には、なにか気が抜けたような感覚にとらわれてしまった。
急な変化のいちばんの理由はバブルの崩壊である。だが、いわば「イケイケドンドン」的な流れを抑制し、冷静な流れに切り替える時期に来ていたともいえる。
今回の原稿を書くにあたって、編集部から2000年以降のCOTY(日本カー・オブ・ザ イヤー)イヤーカー獲得車のリストが送られてきた。そのリストを見ると、いわゆる「ワクワクドキドキ」系のクルマは少ない。マツダ・ロードスター、ホンダCR-Z、トヨタiQ、7th・VWゴルフなど、好きなクルマはあれこれあるが、ワクワクドキドキとまではいかない。
リストを見ながら「うん、そうだよな!」とうなずきはするものの、よくできた優等生がほとんどで、ヤンチャ坊主はいない。
安全性、燃費、運転支援システムなど、環境と人に優しいクルマが次々送り出されたことは歓迎すべきだ。バブルの崩壊にともなって、消費者マインドもまた、「イケイケ」から「我慢が美徳」といった方向へと向かったこともその流れに拍車をかけたに違いない。その結果、日本車は「間違いのない、いい子」へと舵を切った。
もちろん、それは悪いことではない。日本市場も、海外市場も、優等生となった日本車を受け入れ、高く評価してくれた。でも、ヤンチャなクルマ好きには当然物足りない。
「どれを買っても間違いない」のは大事なことだが、胸躍らせて、とはならない。1980~90年代には、必死に高額ローンを組んで「好きなクルマ!」を買った人は少なくなかった。でも、その後はどうなのだろう。
ボクが最近の国産車で、いちばんワクワクしたのは2022~2023COTYイヤーカーの日産サクラ/三菱ekクロスEVだ。
「軽自動車でもBEVだったらこんなにも気持ちよく自在に走れるんだ!」と感激した。この兄弟車は軽自動車の世界観を大きく変えた。たとえば、重厚で贅沢な邸宅が並ぶ田園調布。そのガレージにはメルセデスあたりが当然のように置かれているが、このあたりでサクラとekクロスEVはかなりの人気者になっている。
古い街なので道路は狭く坂も多い。そんな条件下でサクラとekクロスEVは、生き生きと活発に走る。BEVという、ある種のプレミアムなバリュー感があるのも、手を出しやすくしているようだ。「エンジンの鼓動と音のないクルマなんてイヤ」という人は少なくはないが、これから急速に進むBEV化の中、きっと、多くをドキドキワクワクさせるクルマが次々生まれてくるのではないか。ボクはそんな気がしている。期待もしている。
【プロフィール】
おかざき こうじ/モータージャーナリスト、1940年、東京都生まれ。日本大学芸術学部在学中から国内ラリーに参戦し、卒業後、雑誌編集者を経てフリーランスに。本誌では創刊時からメインライターとして活躍。その的確な評価とドライビングスキルには定評がある。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員
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みんなのコメント
温暖化、物価高騰、変なガソリン税制度、etc
全天候型自転車なんてのが交通の主流になるのかもしれません