現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > EVの価値を上げ、次の段階へ進むために 。日産が福島に使用済みEV用バッテリーの再製品化専用工場を作った背景

ここから本文です

EVの価値を上げ、次の段階へ進むために 。日産が福島に使用済みEV用バッテリーの再製品化専用工場を作った背景

掲載 更新
EVの価値を上げ、次の段階へ進むために 。日産が福島に使用済みEV用バッテリーの再製品化専用工場を作った背景

EVの価値を決めるのはバッテリー。バッテリー容量で航続距離が決まるからだ。厄介なのは、そのバッテリーが「劣化」すること。劣化したバッテリーをどう再生するか。日産がひとつの回答を示した。日産と住友商事が合弁で立ち上げたフォーアールエナジー社(4Rエナジー)が、福島県浪江町に、使用済みEV用バッテリーの再製品化専用工場を開設したのだ。

電気自動車(EV)の価値を決めるのは、結局のところ「電池」である

NAVER LABSとHERE:3D屋内地図自動作成テクノロジーで協業

電気自動車(EV)の価値を決めるのは、結局のところ「電池」である。そしてその電池は、必ず劣化する。劣化すると、航続距離が短くなりユーザーは不満を覚える。その不満はEVのリセール価格に悪影響を与え、それがEVの評判を下げ……という悪い循環に繋がってしまう。その循環を変えるには、EVで使った高性能リチウムイオン電池を再生し再利用するサイクルを確立することが重要だ。数年間乗ったEVのバッテリーに価値があれば、当然クルマの価値が上がる。距離を重ねてバッテリーが劣化したEVは、再生バッテリーに交換することで再び航続距離を回復しクルマとしての魅力を取り戻す。

電気自動車・リーフを開発し世界に先駆けて市販した日産は、そのことを早い段階から理解していた。リーフ発売前に、住友商事と合弁で「フォーアールエナジー株式会社」(以下4Rエナジー)を立ち上げたのは、その証左である。4Rの意味は、使用済みEV用バッテリーの再利用(Reuse)、再販売(Resell)、再製品化(Refabricate)、リサイクル(Recycle)。とはいえ、EVが普及しないことには、中古バッテリーも出てこない。今回、4Rエナジーが、福島県浪江町に「使用済みEV用バッテリーの再製品化専用工場」を開業したのは、ある意味、機が熟したから、と言える。といっても、リーフの開発・導入時点での「原子力発電によって得られる電力でEVを走らせる」という前提条件は、11年の東日本大震災とそれに起因する福島第一原発の事故によって頓挫してしまった。そこからわずか十数kmしか離れていない浪江町にこの再製品化専用工場ができたことには、やや皮肉な巡り合わせを感じる。

さて、発売後8年目を迎えた第一世代リーフが買い換えのタイミングとなり、電池材料の高騰や自動車メーカーに使用済み電池の回収を義務づける法規が中国で発効されるという背景もあって、EV用バッテリーの再生ビジネスもいよいよ本格化してきた。


バッテリーパックのたったひとつのセルが劣化しただけで全体のパフォーマンスは低下する

記事上のメインカットは、25℃に保たれた恒温室で測定中のバッテリーパック。その壁を挟んで隣の部屋にあるのが、充放電装置だ。ここで充放電を繰り返し、各セルのバッテリー容量、出力を正確に測定する。1パックの測定には準備を含めて4時間かかるという。測定に関わるノウハウがこのビジネスのキモだ。

充放電装置のモニターには、各セルの状態が表示されていた。セルの温度は24.1~24.5℃。電圧はほとんどのセルが3.810~3.829Vの範囲内だったが、いくつかのセルは0.000V、0.001Vと表示されていた。これが劣化したセルなのだろうか。


EV用バッテリーの劣化は、使用条件によって千差万別。しかも、搭載しているバッテリーパックの中のたったひとつのセルだけが大きく劣化した場合、ほかのセルもそれに引きずられてパック全体が本来の性能を発揮できないことがあるという。たとえば、第一世代のリーフは、1モジュールに4つのバッテリーセルが収められいる。1パックで48モジュール、つまり192セル。その192セルが均等に劣化するわけではないところが難しい。さらに言うと、中古バッテリーのセル毎、モジュール毎の性能を正確に測定することも想像以上に難しい。1パックの性能を測定するのにかかる時間は、約4時間(従来技術では16日間かかっていた!)。測定したモジュールを性能別に「松・竹・梅」に分け、松クラスだけで再製品化すれば、再製品化前よりも性能が上がり、再びEV用として使える。再生したEV用バッテリーの価格は24kWhで30万円(税・工賃別)である。

R&Dセクションに置かれた恒温槽。内部はマイナス40℃~プラス80℃までさまざまな温度環境を再現できる。このなかにバッテリーモジュールを入れて、バッテリーの変化を測定する。今後このスペースにはさまざまな測定機器が置かれてグローバルの研究拠点となる。

測定の結果、モジュールの3段階に分類。同程度の性能のモジュールを揃えて再製品化すると再生前よりも高性能にすることも可能だ。程度の良いモジュールで組み直された再生バッテリーは再びEV用として中程度のものは電動フォークリフトなどに、標準より劣化したものは工場受変電設備のバックアップなどで使用する。


第一世代に続いて第二世代、そして現行リーフのバッテリーもいずれは中古として再利用する時がくる。浪江事業所は、2020年に年1万台分のバッテリーを再生したいと目論む。他社製、例えば三菱i-MiEVのリチウムイオン電池(GSユアサ、東芝製)の再生も、「メーカーからの技術開示があれば、ぜひやりたい」ということだった。バッテリーが再生できれば、EVの価値が上がるだけでなく、再生バッテリーを蓄電デバイスとして利用することで再生可能エネルギーの普及にも役立つ。日産、住友商事、そして4Rエナジーは、そこまで見越して事業展開を考えているのだ。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

「3月決算=大幅値引き」は過去のハナシ!? 新車で“イチバン”の買い時はいつなのか 関係者を直撃
「3月決算=大幅値引き」は過去のハナシ!? 新車で“イチバン”の買い時はいつなのか 関係者を直撃
乗りものニュース
フォルクスワーゲン「新ゴルフGTI」登場! 265馬力ターボ×光る「VWエンブレム」採用! 新たな「世界のホットハッチ」は何が変わった?【試乗記】
フォルクスワーゲン「新ゴルフGTI」登場! 265馬力ターボ×光る「VWエンブレム」採用! 新たな「世界のホットハッチ」は何が変わった?【試乗記】
くるまのニュース
王者・坪井が求める開幕ダッシュと“富士以外”での強さ【SF全チーム情報2025/VANTELIN TEAM TOM’S】
王者・坪井が求める開幕ダッシュと“富士以外”での強さ【SF全チーム情報2025/VANTELIN TEAM TOM’S】
AUTOSPORT web

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

408 . 1万円 583 . 4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

13 . 8万円 450 . 0万円

中古車を検索
日産 リーフの買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

あなたの愛車、今いくら?

申込み最短3時間後最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!

あなたの愛車、今いくら?
※1:本サービスで実施のアンケートより (回答期間:2023年6月〜2024年5月)
メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

408 . 1万円 583 . 4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

13 . 8万円 450 . 0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

あなたの愛車、今いくら?

申込み最短3時間後最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!

あなたの愛車、今いくら?
※1:本サービスで実施のアンケートより (回答期間:2023年6月〜2024年5月)
メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村

carview!新車見積もりサービス