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【なぜ販売失速&SUV首位陥落!?】トヨタ C-HRの長所と短所

掲載 更新 14
【なぜ販売失速&SUV首位陥落!?】トヨタ C-HRの長所と短所

 トヨタのコンパクトSUV、ライズが2020年1月と2月の登録車新車販売台数において2カ月連続の総合1位を獲得した。

 その一方で、2017年、2018年のSUV販売年間1位を獲得した、同じトヨタのコンパクトSUV、C-HRは販売不振に陥っている。

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 C-HRといえば、2016年12月に発売され、2017年4月にはコンパクトSUVながら、登録車1位を記録し、発売から2017年6月までの7か月間で2位2回、3位1回、4位2回を達成。2017年、2018年と2年連続でSUV販売NO.1に輝いている。2019年は僅差の209台差でSUV販売NO.1の座をヴェゼルに明け渡した。

 2020年1月の販売台数はライズの1位、1万220台に対し、C-HRは17位、3543台。2月はライズの1位、9979台に対し、C-HRは18位、3912台といずれもライズの半分以下である。

 しかし、トヨタは何もせず手をこまねいたわけではない。2016年12月の発売以来初となるマイナーチェンジを2019年10月18日に行い、内外観の小変更とトヨタGAZOOレーシングが手掛けるスポーツブランドのGRと6MTを追加し、テコ入れを図った。

 しかし2019年11月の販売台数は、5097台(対前年比88.0%)と盛り返したものの、2019年12月3577台(対前年比76.9%)、2020年1月3543台(対前年比 81.9%)、2月3913台(対前年比 64.3%)と前年の販売台数を超えることはできず、マイナーチェンジの効果は長続きしなかった。

 なぜ、ここまで販売が落ち込んだのか? その理由を探るとともに、改めてC-HRの長所と短所をモータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する

文/渡辺陽一郎
写真/ベストカー編集部 ベストカーWEB編集部 TOYOTA

【画像ギャラリー】スポーツ走行したいならC-HR GRスポーツ詳細写真

C-HRの販売が落ち込んだ原因はどこにある?

左から2019年10月のマイナーチェンジ前のC-HR、C₋HR GRスポーツ、マイナーチェンジ後のC-HR

 最近はSUVの人気が高い。新車として売られる乗用車の約15%を占める。フィットやフリードのクロスターなど、コンパクトカーやミニバンに設定されたSUV風のグレードまで含めれば、販売比率はさらに高まる。

 SUVの中で特に話題になったのがトヨタC-HRだ。2016年12月に発売され、2017年には11万7299台(1ヵ月平均で1万台弱)を登録してSUVの販売1位になった。小型/普通車の販売ランキングでも、プリウス、ノート、アクアに次いで4位に入った。

 2016年のSUV1位はヴェゼルだったが、2017年はC-HRに続いて2位になり、同年の登録台数は6万4332台だ。C-HRとの開きは5万台以上だ。SUVで3位のハリアーは5万8732台、4位のエクストレイルは4万9873台であった。

2019年のSUV販売は僅差でNO.1に輝いたホンダヴェゼル

 ところが2018年に入ると、C-HRの売れ行きが大幅に下がり、2018年1~6月の対前年比は52%に落ち込んだ。

 2018年の登録台数も7万6756台で、12万台近くを売った2017年に比べると約65%にとどまる。2019年になると、C-HRの登録台数は5万5677台になったから、2017年の半数以下だ。

 クルマの売れ行きが発売から時間を経過して下がるのは当然だが、C-HRは下落の幅が激しい。2017年、2018年の売れ行きはヴェゼルに大差を付けてSUVの1位だったのに、2019年は僅差でヴェゼルを下まわった。

 ヴェゼルの対前年比は2018年/2019年ともに約93%で落ち込みが少ないが、C-HRは2018年が前述の65%、2019年も73%と順次下降したからヴェゼルよりも下がった。

※カッコ内は登録車新車販売台数の総合順位

 販売低迷の背景には2つの理由がある。ひとつは同じトヨタが扱う車種の販売動向だ。

 時系列で見ると、2015年12月にまず現行プリウスが発売された。この外観は個性的で好みが分かれ、プリウスの初期の売れ行きは、先代型の発売直後に比べて伸び悩んだ。

 その1年後に、プリウスと共通のプラットフォームやハイブリッドシステムを搭載するC-HRが加わったから、プリウスのユーザーはC-HRに奪われた。

 この時期に販売店からは「C-HRを購入するお客様の中には、プリウスを使われていた方も相当に含まれている。

 同じ個性的なデザインでも、プリウスよりC-HRの方がカッコ良く見えるらしい」という話が聞かれた。

 つまりプリウスの販売が落ち込んだ反動で、C-HRの売れ行きに弾みが付いた。その代わり2018年になると、CH-Rも落ち込み(対前年比のマイナス)が大きくなった。

 さらに2019年4月には、オフロードSUVの雰囲気を兼ね備えたRAV4が登場して好調に売れている。RAV4は2019年5月から10月にかけて、国内におけるSUV販売の1位になった。

マイナーチェンジで挽回できなかった

マイナーチェンジ前のC₋HR

2019年10月のマイナーチェンジ後のモデル。開口部が広くなったフロントバンパー開口部とフロント上部に設置されたフロントフォグランプが特徴

 この間、トヨタは販売減を見て、何もしなかったわけではない。2019年10月に発売以来初のマイナーチェンジを行っている。

 エクステリアでは、一見何も変わっていないように見えるが、エアインテークを左右に広げ、ワイドスタンスを強調するとともに、フロントフォグランプをエアインテーク上部に配置(G、G-Tグレード)した。

 ヘッドランプは上部に長く伸びるLEDクリアランスランプには右左折時に車両内側から外側に流れる点灯するシーケンシャルランプとなり(G、G-T、S”GR

SPORT”、S-T ”GR SPORTS”)、S、S-Tについてはパラボラ式LEDを採用した。リアコンビネーションランプはLEDタイプとなる

 さらにGAZOOレーシングが手掛けるスポーツブランドのGRスポーツを追加設定したほか、カローラスポーツの1.2Lターボに設定された6速iMTがC-HRの1.2Lターボにも新たに設定された。

 2種類のパワートレイン、1.2L、直4ターボ(116ps/18.9kgm)と、1.8LハイブリッドTHSII(エンジン:98ps/14.5kgm+モーター:72ps/16.6kgm)に変更はない。GR SPORTSのパワートレインも標準車から変更はない。

 しかし、マイナーチェンジの効果は出なかった。その一方で、身内から足をすくわれるほどのライバル車が出現したのだ。そう、2019年11月に登場したトヨタライズ&ダイハツロッキーである。

 ライズは2019年12月には小型/普通車の販売2位、2020年の1月と2月には、カローラシリーズやノートを抑えて1位になった。そうなるとCH-Rはますます下がり、2020年2月の対前年比は64%と低迷する。

2019年11月に登場したトヨタライズ。2020年1月、2月には2カ月連続で登録車新車販売台数NO.1を達成した

■2019年暦年SUV販売台数TOP10


1位:ヴェゼル 5万5886台(93.7%)


2位:C-HR 5万5677台(72.5%)


3位:RAV4 5万3965台


4位:エクストレイル 3万6505台(72.6%)


5位:フォレスター 3万2384台(112.6%)


6位:CX-5 3万1538台(82.4%)


7位:ランドクルーザー 2万8475台(96.8%)


8位:CX-8 2万3294台(75.9%)


9位:ライズ 1万6601台


10位:UX250h 1万4409台


※カッコ内は対前年比

■直近の2020年2月のSUV販売台数
1位:ライズ 9979台、総合1位
2位:RAV4 5739台、総合13位
3位:C-HR 3912台(64.3%)、総合18位
4位:CX-30 3708台、総合20位
5位:ヴェゼル 3544台(60.0%)、総合21位
6位:ロッキー 3411台、総合24位
7位:CX-5 2987台、総合26位
8位:エクストレイル 2580台(46.9%)、総合30位
9位:フォレスター 2448台(73.7%)、総合31位
10位:ハリアー 2179台(57.8%)、総合34位
※カッコ内は対前年比

 2020年2月はコロナウイルスの影響もあり、国内の新車販売台数は前年の90%であった。

 市場全体の縮小も考える必要はあるが、それにしてもC-HRは下降幅が大きい。2020年2月は3912台だから、好調に売れた2017年2月の1万2985台に比べると、わずか30%にとどまる。

 この販売減少には、2つ目の理由として、C-HRの商品力も大きく影響している。まず外観に強烈なインパクトがあることだ。

 C-HRのプロトタイプは「C-HRコンセプト」の名称で、2014年と2015年に海外のモーターショーに出展された。

 当時はプロトタイプに多い突出したデザインだと思ったが、2016年にショーモデルとほぼ同じボディスタイルで発売されている。

 そのためにC-HRの外観は、SUVというカテゴリーを超越して目新しさと目立ち度が抜群だった。

 スポーツカーのような魅力があり「今スグに欲しい!」と思わせた。愛車の車検満了を待たずに急いで購入するユーザーも多く、売れ行きを一気に伸ばして(発売後1ヵ月後の受注台数は4万8000台)、販売ランキングの上位に入った。

 その代わり発売直後に集中的に売れたから、欲しいユーザーに行き渡るのも早い。スポーツカーと同様、短期間で需要が終わり、売れ行きは早々に下降を開始した。

 2017年には好調に売れたが、登録台数を月別に見ると、小型/普通車の上位5位以内に入ったのは7月までだ、8月以降は10位前後に下がった。2017年に4位に入ったのは、上半期に数多く売れた実績があったからだ。

C-HRの長所と短所

デザイン優先だけに仕方のないかもしれないがC-HRの後席は狭い

 2019年にかつて大幅にリードしたヴェゼルを下まわった背景には、C-HRの実用性も影響した。これがC₋HR最大の短所になるだろう。

 SUVが好調に売れるのは、外観の迫力とカッコ良さに加えてワゴンの居住性や積載性も備わるためだが、C-HRは後者の実用性が低いのだ。つまりカッコ優先ということだ。

 そのために燃料タンクを前席の下に設置して後席のスペースと荷室容量を拡大したヴェゼルに比べると、人気の持続力も低くなってしまう。

 実用的なヴェゼルには、車検期間満了が近付くと購入するユーザーが多いから一定の台数を淡々と売るが、C-HRは落ち込む。

 具体的に両車の実用性を比べると、身長170cmの大人4名が乗車した場合、後席に座る乗員の膝先空間はヴェゼルが握りコブシ2つ半、C-HRは握りコブシ1つ半だ。

 しかもC-HRは後席のサイドウインドウが狭いので、閉鎖感が強まってしまう。SUVには子育てを終えて3列シートミニバンから乗り替えるユーザーも多く、車内の開放感が大切だが、C-HRの後席はクーペに近い雰囲気だ。

 C-HRはリアゲートの角度を寝かせたから背の高い荷物も積みにくく、居住性と積載性は、2013年に登場した設計の古いヴェゼルが格段に優れている。

 C-HRは外観が個性的な代わりに後方視界も悪い。サイドウインドウが狭く、ボディ後端のピラー(柱)も太いから、斜め後方はほとんど見えない。

 そうなると駐車場から後退しながら出庫する時など、後ろの様子を映すモニターに頼るが、視野が狭いために左右から急速に接近する自転車などは分かりにくい。トヨタの視界に関する社内基準も辛うじてパスしたという。

 ここまで視界が悪いと、運転のしやすさだけでなく安全性も阻害する。外観に強い魅力を感じないユーザーは、C-HRのボディ形状を大きな欠点と受け取ってしまう。

C₋HRの長所は?

2019年10月のマイナーチェンジでGRスポーツが追加されたことは非常に大きい

 一方、C-HRの長所は走行安定性だ。SUVでは天井が低めで、2WDの全高は1550mmだから立体駐車場も利用しやすい。

 低重心になり、プリウスから採用を開始したTNGAの考え方に基づくプラットフォームも熟成が進んだ。そのために操舵に対して車両の向きが自然に変わり、後輪の接地感など安定性も優れている。

 これらの相乗効果で、C-HRでは運転の楽しさを味わえる。背の低いクーペなどに比べると、同じカーブを同じ速度で曲がっても、C-HRはボディの傾き方が少し大きい。

 この挙動変化を穏やかに仕上げた結果、C-HRには低重心のクルマでは得られない操る感覚が生まれた。

 1.8Lエンジンをベースにしたハイブリッドはプリウスと基本的に同じで、GとSのWLTCモード燃費は25.8km/L、JC08モード燃費は30.4km/Lと良好だ。加速感は滑らかでノイズも抑えた。

 以上のようにC-HRは、ヴェゼルに比べると後席と荷室は狭いが、ドライバー優先の設計で運転感覚は楽しい。

■「トヨタ C-HR GR SPORT」のポイント
・フロア下にフロアセンターブレースを追加しボディ剛性を強化。操舵応答性が向上
・足回りを専用チューニングしてフラットな乗り心地とスポーティな走りを両立
・専用19インチタイヤ
・GR SPORT専用のアグレッシブなエクステリア、インテリア
・インテリジェントマニュアルトランスミッション(iMT)を1.2LターボとGRスポーツに設定

 しかも 6速iMTが設定されたことはクルマ好きにとっては朗報だ。カッコ優先ではなく、本格的なスポーツ走行が楽しめるからだ。

 iMTとはインテリジェント・マニュアルトランスミッションの略で、トヨタとアイシンエーアイが共同開発したもので、MTが苦手だという人に配慮されている点が嬉しい。

 発進時にエンストしないよう補助してくれる発進アシスト機能やシフトダウン時に自動的にエンジン回転数を合わせる自動ブリッピング機能を備えていることが特徴だ

 C-HRはカローラスポーツと違い、iMT専用SWを押すとiMTがスタンバイ状態になる。SPORTSモードで、iMTがスタンバイになるわけではない。また、発進アシスト機能はすべてのドライブモードで作動。

 発進時のクラッチ操作を検出し、エンジン出力を最適に調整(トルクアップ)することでクラッチのみでの発進操作をよりスムーズに行えるようにしている。

 販売店の試乗車を使ってこの2車種を乗り比べると、こうしたC-HRの長所が一層良く分かるだろう。後席と荷室をチェックして、縦列駐車や車庫入れも行い、購入の判断をするといい。


1.2LターボとGRスポーツに設定されている6速iMT。SUVのMTは今やなかなか貴重だ

■C-HRの価格とラインナップ
●1.2Lターボ
◆S-T 2WD(スーパーCVT-i)=240万円、 S-T 2WD(6速iMT)=236万7000円、4WD(スーパーCVT-i)=259万8000円
◆G-T 2WD(スーパーCVT-i)=266万5000円、 G-T 2WD(6速iMT)=263万2000円、4WD(スーパーCVT-i)=286万3000円
◆S-T ”GR SPORTS” 2WD(6速iMT)=273万2000円

●1.8L、THSIIハイブリッド
◆S 2WD=273万円
◆G 2WD=299万5000円
◆S ”GR SPORTS” 2WD=309万5000円
※G系とGR系の価格差はS-T・ハイブリッドともに10万円となっている

■C-HR G(ハイブリッド)主要諸元
全長4385×全幅1795×全高1550mm
ホイールベース:2640mm
エンジン:1797cc直4
エンジン最高出力:98ps/5700rpm
エンジン最大トルク:14.5kgm/3600rpm
モーター最高出力:72ps
モーター最大トルク:16.6kgm
トランスミッション:電気式無断変速機
WLTCモード燃費:25.8km/L
市街地モード:24.7km/L
郊外モード:28.6km/L
高速道路モード:24.6km/L
JC08モード燃費:30.4km/L
価格: 299万5000円

■C-HR S-T 主要諸元
全長4385×全幅1795×全高1550mm
ホイールベース:2640mm
エンジン:1196cc直4ターボ
最高出力:116ps/5200~5700rpm
最大トルク:18.9kgm/1500~4000
トランスミッション:6速iMT
WLTCモード燃費:15.4km/L
市街地モード:12.2km/L
郊外モード:15.6km/L
高速道路モード:17.2km/L
JC08モード燃費:15.2km/L
価格:236万7000円

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みんなのコメント

14件
  • SUVが他にライズやRAV4があるし、その中で実用性を捨ててスタイルが気に入った人が買う。販売台数なんてこんなものだろうと思うけど。
  • 飽きやすい車の代表だと思うけど。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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