『10年10万キロ・ストーリー』の著者、金子浩久がボクスターから718ボクスターに変えたストーリーの連載22回目は、新型の911との比べ合い。911がいいなあ、と思うところなきにしもあらず、ではあるけれど……。
新型911とわが718
特別なGクラス登場! ブラック・パーツが印象的なmanufaktur Editionとは
我がポルシェ718ボクスターの“兄貴分”とも呼べるポルシェ911のふたつのモデル、「カレラS」と「カレラ4S」に乗った。
この連載の第3回でも触れているように、718ボクスターを語る際に911は避けて通れない。911はポルシェスポーツカーの源であり、カイエンをはじめとしてバリエーションを急拡大している現在のポルシェにとっての代表モデルとして君臨しつつ、世界のスポーツカーの基準を更新し続けている。
第3回にもその理由を書いたように、僕はこれまで911の偉大さを最大限にリスペクトしつつも、自分のクルマにしてみたいと思ったことがなかった。“911原理主義”から最も遠いところにいる、“軟派な”911タルガには大いに惹かれるけれども、自分の使い方を考えるとボクスターを選んでしまう。驚くべき実用性の高さも、この連載で書いてきた通りだ。
911は2019年にフルモデルチェンジして、内容が一新されている。コードナンバーは、先代の「991」から新型は「992」になった。
外見からも、違いは一目瞭然だ。ボディがマッシブになった。まず、991よりもボディ全長が20ミリ長くなった。さらに991では、後輪駆動版であるカレラ(およびカレラS)と4輪駆動版であるカレラ4(およびカレラ4S)とでは全幅寸法が異なっていたが、992ではどちらも1852ミリと同じとなった。
だから、カレラSのドアミラーが写し出すリアフェンダーの張り出しは迫力満点で、立派なクルマに乗っていることをつねに自覚させられる。991型以前の911では、こうした眺めは高性能版の「ターボ」や「GT3」などによるものだけだった。
なんでも“昔が良かった”とは言いたくないけれども、911の大型化には驚嘆させられるばかりだ。ポルシェ社の広告画像でもそれを隠さずに、1964年にデビューした時の911と並べたりしている。そのフォルムやウインドウグラフィック、ライト類の配置などを意図的に維持することによって視覚イメージを保とうとしているが、新型911が大型化していることは一目瞭然だ。
世の中の他のクルマもおしなべて大きくなっているのだが、それらの多くはフォルム自体を変えてきているので目立たないが、911は誰がどの世代の911を見ても“あっ、ポルシェ911だ!”とわかる。視覚イメージの一貫性をキープしているのは、ポルシェの執念だろう。
それでも、近付いてみるとディテイルはつねに改められていて、テールライトのすぐ下に“PORSCHE”というロゴが配されるのは、僕の718ボクスターと共通する最近の流儀だ。
乗り込むと、そこに先代までの911のインテリアはなかった。リアルの針を持つメーターは真正面のタコメーターだけで、他のメーター類とセンターディスプレイはすべてデジタル化されているではないか。センターコンソールのモニター画面も10.9インチと718ボクスターよりも大きい。気持ち2倍の大きさだ。
それだけでなく、シフトレバーはもはやセンターコンソールからニョッキリと屹立している“レバー”ではなく、小さく短い“スイッチ”にしか過ぎない。
これは大変身だ。それも、ただ改めただけでない。タコメーターと、その左右に2個ずつのメーターを並べるというレイアウトはこれまでの911がずっと変えずに採用してきた配置だ。伝統というと大袈裟になってしまうけれども、様式を守っているところにうれしくなるファンは少なくないだろう。
中央部分のタコメーターをはさむパネルでは、タコメーターを除く4個のメーターにさまざまな機能を映し出すことができる。それらをステアリングホイール上のスイッチで切り替えられる。
911に限らず、現代のクルマは多機能で、ひとつひとつの機能が高度だから、少し前までのクルマのようにひとつの機能にひとつの計器を組み合わせていたら、車内が計器だらけになってしまう。また、それら多くの機能は「クルマが知能化する時代」に於いて欠かすことのできないものばかりだけれども、使用する頻度が使い方や乗り方によって著しく異なってくる。だから、コンピューターの階層を切り替えるようにメーターも切り替えていく必要が生じてくる。
現代のクルマが、運転の自動化という今まで存在していなかった大きな課題から逃れられないのは911も例外ではなく、ACC(アダプティブクルーズコントロール)やLKA(レーンキープアラート)などをはじめとする各種の運転支援機能も装備されている。それらの発達具合というのは、いわゆる“完全自動”と呼ばれる、ドライバーが運転状況を監視しないで済む段階には未だほど遠いので、運転支援機能を働かせながらも、ドライバーはその働き具合をつねに監視し、いつでも運転に戻らなければならない。だから、運転支援機能がどれだけ効いているのかをつねに知っておかなければならないし、クルマもドライバーに知らせなければならないのだ。運転支援機能が組み込まれたクルマのドライバーインターフェイスにおいて最優先されなければならないのは、ドライバーに情報をどれだけ明瞭に伝えられているかということになる。大きく表示し、作動具合が良くわかるように見える必要がある。
911 vs. 718
2020年げんざい、そこが最も行き届いて設計されていると思われるのは、テスラ各車とプジョーとシトロエンの各車だ。次いで、ボルボやメルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、レクサスやホンダ、マツダなどの一部のクルマだ。そこに、この最新の992型911も仲間入りした。これには、激しく嫉妬した。
乗っていたボクスターを718ボクスターに買い換えようと考えたのは、こうした「クルマの知能化」に拍車が掛かる時代に、スポーツカーライフはどう変わっていくのかを自分で確かめるためだった。連載のテーマだ。
クルマの知能が進化して諸課題を解決しようとすることと、スポーツカーを運転する喜びと楽しさが矛盾なく並存できることを身を以て証明できてきたつもりだった。でも、最新のカレラSには知能化において半歩先を行かれてしまった!
まぁ、それは仕方のないことだろう。最も日進月歩の著しい分野であることは、ここでも再三書いてきた。718ボクスターだって、次の改変で911に差を付けるかもしれないではないか。それはいい。
走り始めると、718ボクスターとの感触の違いは大きい。数時間前に自宅から100km弱を運転してきたから良くわかる。
718ボクスターは2.0リッター水平対向4気筒ターボエンジンをキャンバス製トップを持つコンバーチブルボディの中央に積む。重量は1385kg。それに対して、911カレラSは3.0リッターの水平対向6気筒をリアアクスルよりも後方に搭載している。重量1515kg。
718ボクスターも決して軽いとは言えないが、較べてしまうと日本の日常的な道路交通下では911カレラSから受ける感触は重厚である。クーペボディがその印象をさらに深めていて、走行中の音や振動などを遮断し、快適そのものだ。
スポーツモードを選び、アクセルペダルを強く踏み込むと、エンジンは先ほどまでの優しい反応から一転して鋭く吹き上がる。吹き上がりのレスポンスじたいは718ボクスターも鋭いけれども、911カレラSのボクサー6気筒から発せられるチカラが緻密だ。そんなものは眼に見えないのだけれども、パワーの粒子が小さくてツブツブがたくさん詰まっている。
それに対して、718ボクスターのボクサー4気筒が発するツブツブはそれより少し大きい。同じくらいの速度や加速を得るために、718ボクスターはより深くアクセルペダルを踏む必要があるが、1.5倍大きなエンジンを積んでいる911カレラSは、どこまでも余裕だ。
どちらのツブツブも径の大きさが揃っているから、アクセルペダルの踏み方にとても忠実で、加減速が非常に滑らかだ。ひと昔前のターボエンジンのような不自然なパワーの出方なども皆無で、一気に7000回転を越えようとする。スポーツモードでの、レスポンシブで滑らかさの変わらなさは両者のエンジンに共通する美点だ。
続けて、4輪駆動のカレラ4Sにも乗ったが、カレラSから感じられる貫禄が、さらに増している。速度を上げていった際の安定感の強さはなおさらだ。
718ボクスターの前に乗っていたボクスターと、当時の911を比較した時にも似ているところと違うところを感じることができたが、モデルチェンジを経てその相似性は今回も明らかだった。似ているけれども、まったく違うクルマだ。
911の進化したインフォテインメントは羨ましいけれども、自分の使い方には718ボクスターが好ましく、適していることを再確認できた。活気が感じられ、すべてが手に収まっている感じが好きだ。
自宅から300km以上離れたところに月のうちに3、4回以上も頻繁に出張するような仕事でも任されたら911カレラ4Sが欲しくなるだろうけれども、幸か不幸かそうした案件はまだない。これが、スキーやシーカヤックなどのレジャーになるとカイエンやパナメーラ・スポーツツーリスモを選びたくなってくるから、ポルシェの経営戦略には抜かりがないということなのだろう。
文・金子浩久 写真・金子浩久、安井宏充(Weekend.)
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