プレイベントとは思えぬ本格的な状況に焦る……
9月29日に、兵庫県・六甲アイランドにある神戸ファッションマートにて開催された新たなeスポーツ「JeGT(Japan electronic Grand Touring)GRAND PRIX」。レーシングシミュレーター・グランツーリスモSPORTを用いたこの大会に、WEB CARTOP編集部も即席チームを結成して参戦した。そのリポートをお届けしよう。
レーシングドライバーの判断は? 今流行の運転シミュレーターゲームで運転技術は向上するのか
今や世界中で人気となっているのが、ゲームやシミュレーターを用いてオンライン対戦で勝敗を決めるeスポーツ。海外ではプロスポーツとして、賞金も用意されるメジャースポーツになりつつある。シューティングゲームや格闘ゲーム、スポーツゲームなど多彩なジャンルが展開されており、もちろんモータースポーツもさまざまな大会が催されている。
JeGTは、2020年度より全国各地でのラウンド制として、シリーズ戦を予定している新たなeスポーツ大会だ。今回はシーズン発足を記念したプレ大会として、プロゲーミングチームはもちろん、スーパーGTを戦う現役レーシングドライバーなども集結。プレ大会とは思えぬ豪華なメンバーが神戸に集結した。
そんな強敵ぞろいのなか、わがWEB CARTOPチームは、編集部のなかで「一番ゲームをやっているだろう」という安直な理由で編集長から指名された原田と、モータースポーツ好きの斎藤の2名が参加することに。そして、エースとして迎え入れたのは、数々のレースに参戦し、アストンマーティンのワークスドライバーとしてニュルブルクリンク24時間耐久レースにも参戦経験のある、レーシングドライバーでありモータージャーナリストの桂 伸一さん。
桂さんはニュル24時間レース参戦前は、グランツーリスモを使って事前に練習してからドイツへ向かっていたという。しかし、本格的にプレイしていたわけではないとのこと……。今回はイベントの盛り上げ役に徹しようと、事前に打ち合わせて神戸へと向かったのである。
会場には立派な大型モニターと、バケットシート付きのプレイ台がズラリと並ぶ。プレ大会ながら、本大会のようなステージに圧倒されてしまった。もう、変な汗かきまくりである。
マシンは、ゲーム内のグループ3カテゴリー(実車でいうFIA GT3マシン相当)から選ぶことになっている。WEB CARTOPチームは日産GT-R NISMO GT3をチョイス。カラーリングは、姉妹誌のCARトップにて筑波サーキットにて1分切りを目指してタイムアタックを行った際のスペシャルカラーリング仕様とした。レーシングカーを市販車風に仕立てるという、なんとも不思議なマシンになってしまった。
予選レースはGTドライバーと同組に!
プレ大会のルールは、2グループに分けて予選レースを行い、各グループ上位3チームずつが決勝に進めるというもの。予選落ちしてしまったチームは敗者復活レースに進むことになり、その上位2チームと合わせて合計8台で優勝を争う決勝戦が行われるというもの。
われわれはAグループに振り分けられ、同じグループには現役GTドライバーのジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手(D’station Racing)や、ヤン・マーデンボロー選手(RAYS e-Racing Team)のほか、全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKIに千葉県代表として参戦し、実車でも学生日本ドリフト王座決定戦で優勝経験もある新川真也選手(NISSAN×TRUST Racing×1’sBD)の名前が! これは勝てないだろ……と戦う前から白旗を上げたくなる気分に……。
しかし、予選レースA組のコースはなんと筑波サーキット! 姉妹誌CARトップでも長年新車のテストを行ってきており、馴染み深いコースだ。筑波アタック仕様のカラーリングも映えるというもの! 筑波でのレース経験も豊富な桂さんに、予選レースのステアリングを託した。
いざスタートした予選レース! くじ引きで決まったグリッドは6番手。後ろはオリベイラ選手というプレッシャーのなかスタートしたものの、1コーナー立ち上がりで抜かれてしまう。そこからは基本的に10周後のチェッカーまでひとり旅に。残念ながら敗者復活レースへ出場することになってしまった。
レースを終えた桂さん曰く、グランツーリスモSPORTは進化を続け、リアルワールドに近いくらいの精度になっているそう。しかし、今回はステアリングとペダルの各種コントローラーの操作感を掴むのに苦労してしまい、本領を発揮できず消化不良な結果となってしまった。
それでも完全に終わってしまったわけではない。敗者復活レースが控えている。予選落ちした8チームが2ヒート制で戦い、合計順位などで決まった上位2チームが決勝へ駒を進められる。敗者復活レースは、首都高を模したグランツーリスモSPORT独自のコース。第1レースは自宅で何度か走行したことのある編集部原田が出走し、桂さんはモニターでコースを覚えてもらうことにした。
eスポーツと実車が融合した満足度の高いイベントだ!
ビビリでオンライン対戦すらしたことのなかった編集部原田。初レースは予選5番手からスタートダッシュを見事決め、3番手に浮上! これはイケるぜ! と調子に乗った矢先、ヘアピンカーブで多重クラッシュに巻き込まれて最下位に……。ここで原田の戦いは実質終了……。第2ヒートの桂さんは、どんどんコツを掴んで表彰台目前の4位! 今大会のベストリザルトだったが、第1ヒートの成績が悪すぎたおかげで、予選敗退となってしまった。
初めてeスポーツの大会に参加したが、これはもうリアルなモータースポーツと変わらない楽しさと迫力がある! ガッツリ走り込めば全身汗だくになるし、疲労度も半端ない。免許が取得できない若者でも、これなら早い段階でモータースポーツに触れられるし、そこから実車に興味を持ってもらえれば、なお良いのではないだろうか。
その証拠に、会場内は若者の姿も多数見られた。トラストやHKS、ブリッツといった有名チューニングパーツメーカーのブースには、雑誌でしか見ることのなかったデモカーなどが展示されており、じっくりと眺めている姿が印象的だった。
また、会場には日産GT-Rの統括責任者である田村宏志さんも来場。多くの来場者とコミュニケーションを取っていた。
トークショーにも参加され、「このようなシミュレーターが広まり、実車はいらないというような状況になってはいけない。シミュレーターでドライブして、じゃあ実車に乗ってみたいと思ってもらえる環境を作り続けなければならない。そのためには、シミュレーターで楽しい! と思えるような実車を作り続けなければならない。GT-Rを作り続けなければならないんです」とコメントした。
会場の外では贅沢にも日産GT-R 2020年モデルや新型トヨタ・スープラに乗れる試乗会も行われ、最新のスポーツカーに触れられる機会が設けられていた。まさに、リアルとデジタルが融合したイベントといえるだろう。
ちなみに、決勝レースは鈴鹿サーキットを舞台に、50分の耐久レースとなっていた。優勝したのは、BLACK選手と宮園拓真選手のODDEYE Gaming。マーデンボロー選手やオリベイラ選手を抑えて、プロゲーマーチームの実力を知らしめた結果となった。今回の残念な結果のおかげで、完全に火がついてしまったWEB CARTOPチーム。たっぷりと練習して、また機会があればぜひ参戦してみたいと心に誓ったのであった。
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