2段構えのエッグ形状の燃焼室
ここ数年のディーゼルエンジンをめぐる不正騒動や、軽油そのものが問題であるという世論がたどり着いた結論を考えると、自動車メーカーがディーゼルエンジンの開発をやめないことが不思議に思えてくる。マツダが新型CX-60に搭載する3.3L直6エンジン「eスカイアクティブD」は、その最新の一例である。
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ディーゼルエンジンは、火花を使わずに圧縮比を高めて燃料に点火するため、熱効率に優れ、燃費の面でも有利なのは周知の事実であろう。この点に関して、マツダは「DCPCI」と呼ばれる先進技術で一歩リードしている。DCPCIとは、「空間制御予混合燃焼」という意味を持つDistribution-Controlled Partially Premixed Compression Ignitionの略だ。
DCPCIの具体的な仕組みはまだ明かされていないが、2段のエッグシェイプ(卵)形状を持つ燃焼室によって、空気と燃料の混合を高めているという。
しかし、一般にPPCI(部分予混合圧縮着火)は新しいアイデアではなく、世界的にも長年にわたって研究されてきた。PPCIは、燃料と空気がシリンダー内で均一に混合されていない通常のディーゼル点火と、均一に混合されているHCCI(予混合圧縮着火)の中間にあたるLTC(低温燃焼)方式である。
LTCの利点は、NOxと粒子状物質の排出を同時に減らすことができ(内燃機関ではなかなかできないこと)、燃費の向上も可能なことだ。したがって、あとはどれを選ぶかが問題となる。
PPCIはHCCIに比べて点火タイミングを制御しやすく、燃料と空気をよく混ぜ、EGR(排気ガス再循環)をうまく使えば温度を低く抑えることができる。その結果、NOxの発生を抑え、効率を上げることができ、燃費の向上にもつながる。
燃費の向上は、燃料を燃やしたときに発生する熱を大気中に放出せず、どれだけ機械的な仕事に変換できるか(熱効率)が密接に関係している。
マツダは、eスカイアクティブDが40%以上の熱効率を持つ最もクリーンなディーゼルの1つであり、あらゆる面で優れているとしている。
マツダが新エンジンの設計に至った経緯はまだ不明だが、研究においては、光学式の研究用エンジン(特殊撮影技術とレーザー技術により、燃料と空気の混合状態や燃焼の挙動を精査できるリカルド社の「ハイドラ1」など)を使用することがよくあるという。
新型eスカイアクティブDのようなエンジンは、ここ数年の不祥事で傷ついたディーゼルのイメージを回復できるのだろうか。それは険しい道のりであると言わざるをえない。しかし、ディーゼルエンジンは合成燃料やバイオ燃料において有力な候補であり、PPCI設計はそれらにおいても軽油と同じメリットを享受できることを忘れてはならない。
いずれにせよ、燃料価格の高騰に苦しむドライバーの負担軽減につながるとともに、排出ガスの低減という点でも、PPCIは有効な手段であるといえるだろう。
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