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メルセデス・ベンツ 124シリーズをふり返る。自ら「過剰品質」と評したEクラスの偉大なる祖先

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メルセデス・ベンツ 124シリーズをふり返る。自ら「過剰品質」と評したEクラスの偉大なる祖先

Mercedes-Benz 124 series

メルセデス・ベンツ 124シリーズ

メルセデス・ベンツ 124シリーズをふり返る。自ら「過剰品質」と評したEクラスの偉大なる祖先

100万km乗っても壊れないベンツ

1984年11月26日、メルセデス・ベンツはスペイン・セビリアで新型のミドルクラスサルーンを発表した。

W124。

「オーバークオリティ(過剰品質)」「金庫のような剛性感」「100万km乗っても壊れない」。数々の賛辞が捧げられたが、そのいずれもが大げさな虚飾でなかったことは35年の時が証明している。

W201並の軽量施策とW126レベルの安全性

まず発表されたのはサルーンの「200D」、「250D」、「300D」、「200」、「230E(イタリアへの輸出仕様)」、「260E」、「300E」。1984年12月より市場導入をスタートした。追ってエステートのS124が1985年に、クーペのC124が1987年、ロングホイールベース版のV124が1989年、カブリオレのA124が1991年に登場している。

W124は1982年に登場した若者向けのコンパクトサルーン、190(W201)と機構を共有し、高張力鋼板をはじめ、軽量化素材の採用といった点も類似している。一方で独自のデザインとエンジニアリングを採用するとともに、より安全性能を高めている。W201はもとより、W126(Sクラス)をベンチマークとして開発された。

側面衝突や横転の衝撃から乗員を守る堅牢なキャビン。フロント及びリヤエンドに設けたクラッシャブルゾーン。オーバーラップ率40%のオフセット前面衝突試験の基準もクリア。さらに、対歩行者/サイクリスト傷害軽減を考慮したボディ構造も採用していた。

ブルーノ・サッコやピーター・ファイファーらによるデザイン

機能性に重点を置いたW124のデザインは、ブルーノ・サッコ、ヨーゼフ・ガリッツェンドルファー、ピーター・ファイファーが手掛けた。W201と通じる点がありつつも独自の存在感を発揮している。

後方に向けて次第に絞られていくラインはリヤエンドの左右上端で円弧を描いているが、これは風洞実験で得た知見を反映させ空気抵抗の低減を図るための施策である。Cd値はW123の0.44から0.29~0.32(タイヤやエンジン、ラジエーターサイズなどにより異なる)に向上。エステートモデルでは123の0.42から0.34~0.35に改善している。空力性能アップにより燃費は先代よりも改善した。

ワイパーやトランクリッドに見る機能美

シングルアーム式のワイパーの構造も革新的だった。アームの回転軸に独自のリンク機構を用いることで、フロントウィンドウの86%もの面積を拭き取ることを可能にした。さらに、ヒーテッドフロントウィンドウウォッシャーノズルを全車に標準装備していた。

特徴的な台形のトランクリッドは、テールランプの間を斜めにエッジを切り込むことで荷室開口部下端を低くして荷物の積み卸しをしやすくするためのアイデアだった。

外観デザインは基本的にシリーズで共通だったが、6気筒モデルはテールパイプが2本出しとなり、300Dやエアコン付きモデルのフロントエプロンにはルーバーのようなエアインレットが刻まれている。

60台を総動員した過酷なテスト走行

W124プロジェクトの発足は1977年で、まずは 1:5スケールのクレイモデルが10台分製作された。この時点で目標とされたCd値は0.32。原寸大のクレイモデルが7台作られ、経営陣が最終デザイン案を承認したのが1981年のことだった。

最新世代の車両をトータルでテストするべく、メルセデス・ベンツは1982年より一連の衝突試験を開始。60台ほどの車両をもちいて異なる天候のもとで公道試験を行なった。W124は灼熱地帯のアフリカをはじめ、イタリア・ナルドでの高速コース、標高3392mに及ぶスペインのソル・イ・ニエブの高山地帯、カナダやスウェーデン・アリエプローグ、アルプス山脈などあらゆる場所で駆け回った。

過酷な開発試験を経たW124は、1984年11月26日から12月8日にスペイン・セルビアで行われたジャーナリスト向けの試乗会に供された。72hpの200Dから190hpの300Eまでずらりと揃えられた車両は専門家の賞賛を獲得。もっとも注目されたのは、新開発の6気筒ガソリンエンジン、M103を搭載した260Eと300Eだった。

先進の車両挙動制御システムをはじめとした革新的機構

1985年には3種類のディーゼルモデル(200D、250D、300D)、2.0リッターのキャブレター仕様(200)、4種類のインジェクション仕様(200E、 230E、300E)を市場へ導入。その後124はシリーズ化し多彩なモデルを展開していくことになる。

1985年以降は6気筒搭載モデルに4輪駆動仕様を設定。電子制御ロッキングデフ(ASD)やトラクションコントロール機構「アクセレレーション・スキッド・コントロール(ASR)」を導入した。

1987年にはプレチャンバーと呼ばれる予燃焼室を設けたディーゼルエンジンにターボを装備した300Dを追加。1986年9月からはガソリン仕様に三元触媒コンバーターを標準装備し排出ガス削減に注力している。

ポルシェとタッグを組んだ500E

124シリーズはエグゼクティブ層に広く受け入れられたが、その一方でセダンとエステートはタクシーとしても使われ高い信頼性を証明した。また、そのシャシーは救急車両や霊柩車などにも使用されている。

さらに、クーペやカブリオレに加え、V8を搭載した279hpの400E、326hpの 500E、さらに381hpのE60AMGといった高性能モデルも輩出している。

1990年10月のパリ・サロンに登場した500Eは1991年2月より生産を開始。ポルシェとのコラボレーションにより生まれた特別なモデルは、一見して標準仕様とは明らかに異なる外観を与えられた。500SLに搭載した5.0リッターV8に4速ATを組み合わせ、0-100km/h加速5.9秒という圧倒的なパフォーマンスを誇った。最高速度は250km/hに制御され、フルスロットルでのホイールスピンを防ぐべくASRが標準装備となった。

フロントエプロンに嵌め込まれたフォグランプや象徴的なウイングをはじめ、16インチの8穴アルミホイール、225/55ZR16サイズのタイヤ、ノーマル比で23mm低められた車高などが孤高のムードを創出。リヤアクスルには油圧レベライザーが標準装備された。

登場時の価格は13万5000ドイツマルク。ボディシェルの最終アッセンブリはシュトゥットガルトのツッフェンハウゼンにあるポルシェで、塗装とデリバリー工程はジンデルフィンゲン工場で行われた。

124からEクラスへ

1993年6月、メルセデス・ベンツの新しいモデル名戦略により124はEクラスと名称を変更。同時にラインナップ構成も変更、500EはE500に、200Dは E200 ディーゼルと呼ぶようになった。

1995年、ジンデルフィンゲンでのサルーン生産が終了。1996年にはCKD用のパーツキットの製造が段階的に取り止めとなった。

11年間で生産されたサルーンの累計は221万3167台。シリーズ全体では273万7860台と、メルセデス・ベンツのベストセラー記録を塗り替えている。

いまなお“前途有望”なヤングタイマー

ところで現在、124シリーズのトップレンジおよびクーペやカブリオレ仕様はコレクター垂涎の対象となっている。ヒストリックモデルの市場価値を判定する「ヒストリック オートモービル グループ インターナショナル(HAGI)」のメルセデス・ベンツ クラシック インデックスに鑑みてもそれは明らかだ。

HAGIはクラシックカーの大手ブランドを専門に扱う独立系市場調査及び出版社。発表する指数は、クラシックカーの市場価格の動きを示すものとして知られる。個人、業者、競売会社のヴィンテージカーすべての取引を中立的立場から判断した結果に基づき、価格のトレンドを業界へ提供。金融分野と同じ手法で調査を行ない弾き出される指数や分析は、『フィナンシャル・タイムズ』『ウォール・ストリート・ジャーナル』『ニューヨーク・タイムズ』各紙などでも参照されている。

HAGIのディートリッヒ・ハトラパ曰く、V8を積んだ500EのAMGモデル、そしてカブリオレとクーペはもっとも“前途有望”なメルセデスであるという。メルセデス・ベンツ クラシック インデックスの記載がはじまった2011年末に比較すると、2019年9月時点で指標は2倍に膨れあがっているそうだ。

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みんなのコメント

4件
  • 電子制御が本格的に入る前のクルマの集大成的な存在だったね。
    現代のクルマで、このクルマの持つ骨太感を超えるものには未だに出会っていない。
    当のメルセデス自体が「最善か無か」を薄めて多くのユーザーを取り込まないとという危機感を持ってリーズナブル路線へも踏み込みましたからね。
  • W124は500E含めて何台も乗るほど大好きな素晴らしい車でした。
    ハンドル、車体、ドアなど良い意味で重かった。
    全ての形状に意味があった。
    足回りが良過ぎて下手にハイグリップなタイヤにしない方が良いくらいでした。
    「最上か無か」の言葉通りの作りで徹底されていて、例えばリアのトランクを上げるだけでそこには三角表示板があった。
    直4エンジン車はフロントが軽くて軽快だったし、直6エンジンはシルキー6って代名詞のBMWの6発よりも滑らかでパワフルだったし、V8に至ってはトルク型NAエンジンの最高と言えるエンジンで高回転で走れば車体の安定性もあり同時代の跳ね馬よりも実走行で速く最強だった。
    (当時、東名で何台もの跳ね馬がカモられたが実はその500Eのオーナーは跳ね馬オーナーとして超のつく有名オーナーだった)
    今の例えばE400の足回りも素晴らしいし、E53も凄いがやっぱりW124が私は好きだし名車だと思うね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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