「ベストカー」本誌6月26日号にて、「好きなクルマ嫌いなクルマ」という読者アンケート企画が行われた。
その結果、「好きな現行車」の第1位はマツダロードスター、第2位はスバルWRX STIとなった(3位は日産GT-R、4位スバルレヴォーグ、5位スズキジムニー)。
マツダとスバルに対する高い支持と関心とが浮き彫りになったわけだが、そんななかで今回はマツダ車・スバル車各々のイイ点はもちろん弱い点も浮き彫りにしたみたいと考え、「マツダ・スバル対決」を企画してみた。
同一ジャンルのモデル対決だが、ただ単に各モデルの良し悪しの評価にとどまらず、判定人のお二人には両者のクルマづくりの姿勢や現在についても触れてもらった。
マツダとスバル、お互いに他社とは一線を画すクルマ作りをしながら、一方、両社の間にも明確な違いもあるのが面白い。
※本稿は2019年6月のものです
文:国沢光宏、片岡英明/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年7月26日号
■コンパクトSUV対決[CX-3 vs XV]
(TEXT/片岡英明)
●マツダ CX-3(価格:212万7600円~309万4480円)
VS
●スバル XV(価格:213万8400~282万9600円)
日本の道路で運転しやすいジャストサイズのクロスオーバーSUVがマツダのCX-3とスバルのXVだ。両車とも全長4.5m、全幅1.8mの枠内に収め、全高は立体駐車場を使える1.55mの高さに抑えた。
SUVらしいルックスなのはCX-3だ。が、悪路や雪道で気になる最低地上高はXVのほうが40mm高い200mmとなっている。
ご存知のようにCX-3はデミオをベースにしたクロスオーバーSUVだ。デビューしたのは2015年春だが、昨年春にパワーユニットを変更し、現在は1.8Lの直列4気筒ディーゼルターボと2Lの直噴ガソリンエンジンを搭載する。6速ATに加え、6速MTを設定しているのもCX-3の売りのひとつだ。
CX-3のエンジンルーム。CX-3のベースとなっているのはBセグモデルのデミオ。それだけに室内はタイトであるのだが、走りのほうはスポーティに振られている
スバルXVはインプレッサから独立したクロスオーバーSUVで、新世代のスバルグローバルプラットフォームを採用し、走りの実力と安全性能を高めた。
エンジンは直噴の2L水平対向4気筒DOHCと1.6Lの4気筒DOHCだ。アドバンスは2Lエンジンにモーターを組み合わせたe-BOXERを名乗る。
ハンドリングは、CX-3がスポーティな味わい、XVはロングドライブで疲れない素直な味つけとし、乗り心地にも強くこだわった。CX-3もマイナーチェンジで穏やかな方向に味つけを変えたが、ホイールベースが短いこともあり、より軽快感が強い。
XVはアクティブトルクスプリット4WDだけの設定とし、路面にかかわらず安定した走りを見せる。これが最大の特徴だ。
CX-3にも4WDはあるが、余裕の最低地上高に加え、脱出性能を高める「X-MODE」も搭載するXVのほうが実力は一歩上だ。シャシー性能でも差をつけている。
エンジンは互角の実力だ。CX-3は力強い加速を見せるディーゼルターボだけが注目されている。だが、ガソリンエンジンも高い実力の持ち主だ。
ただし、スバルの水平対向エンジンと同様に、実用燃費はそれなりの数値にとどまっている。e-BOXERも瞬発力は鋭いが、燃費を含めモーターの恩恵はわずかだ。
こちらはXVのエンジンルーム。XVに追加設定された2Lの「e-BOXER」も走りは軽快
キャビンやラゲッジルームなど、実用性の高さはXVの圧勝である。CX-3はデミオをベースにしているからキャビンは狭い。囲まれ感が強いデザインも災いし、後席は窮屈だと感じられる。
XVは前席だけでなく後席も広く、快適だ。ラゲッジルームの積載性と使い勝手もいい。インテリアの質感と見栄えでもCX-3に差をつけた。
先進安全装備と運転支援システムもXVが一歩上を行っている。CX-3もマイナーチェンジで充実させた。が、進化したアイサイトに一日の長がある。また、歩行者エアバッグを標準装備するのも強みのひとつと言えるだろう。
コストパフォーマンスも全車を4WDとしながらFF車と変わらない値づけとし、安全性能も高めたスバルXVに軍配が上がる。
ただし、バリエーションが豊富で、選択肢が多いのはCX-3だ。XVにはないディーゼルターボや6速MTを設定している。
とはいえ、これから買うのなら、新世代プラットフォームを採用し、基本設計も新しいスバルXVのほうが魅力と感じるだろう。ファミリーカーとしての実用性能も高い。
XVに軍配が上がった(各10点満点)
■ミドルサイズSUV対決[CX-5 vs フォレスター]
(TEXT/国沢光宏)
●マツダ CX-5(価格:257万0000~387万7200円)
VS
●スバル フォレスター(価格:280万8000~309万9600円)
結論から書くと、現状ならCX-5であります。そもそも現行フォレスター、デビュー時から指摘されていたことながら、クルマに「華」がない。スバル車としても歴代フォレスターを見ても、これだけ地味なモデルなどありません。
ちなみに一番派手だったのは2.5Lターボ+6速MT搭載のSTiバージョンをラインナップしていた2代目モデルですね。WRCで大暴れしていた頃のモデルとあり、ブレンボのブレーキまでつけちゃったほど。スバル、面白くなくなりました。
スバルに聞くと「ハイブリッドがスペシャルモデルという位置づけです」と言うけれど、そんなこと誰も納得しないでしょう。
せめてWRX S4の直噴ターボ300psを搭載するモデルがあってよかったと思う。じゃなければアメリカで売ってるアセント』に搭載している新世代水平対向2.4Lターボの260psですワな。
このエンジンを搭載するグレードあれば、現行フォレスターもクルマ好きを熱くさせたと考えます。繰り返すが現行フォレスター、スバルの魅力が薄い。
CX-5のインパネ。2.2LディーゼルエンジンがCX-5のストロングポイントだ
CX-5はどうか? このクルマのストロングポイントは190ps/45.9kgmを発生するディーゼルである。45.9kgmってガソリン車なら4.5Lのターボなしエンジンに匹敵するのだった。
一般道を走った時にパンチ力じゃフォレスターのSTiバージョンと比べたって負けていない。CX-5に試乗したことのある人ならわかっていただけるとおり、パワー不足感なし。こいつをベースにライトチューンし、200ps/50.1kgmくらいになったら素晴らしい!
残念なのはあとから追加されたガソリンターボ。ディーゼルエンジンからターボをひとつ取り、大幅なコストダウン。スペックも2.5Lターボなのに230psと地味。排気ガス処理系のコストだって大きく下がっているのに、価格同じである。
ディーゼルより20万円安くたって不思議じゃない。100歩譲って同じ価格にするのなら、280ps/45.9kgmくらいの元気さがほしかった。ただハイパワーエンジンという点でゼロ回答のフォレスターより5万倍くらい魅力的だと思う。
フォレスターのインパネ。e-BOXER車がスペシャルモデルというが……?
そのほか、スバルとマツダで争っているのは、4WDと自動ブレーキであります。CX-5とフォレスターで比べると、4WDについていえば「楽しさでフォレスター優位ながら総合性能の高さでCX-5」ということになる。
ほとんど認知されていないものの、今やマツダの4WD技術は世界トップクラス。WRCをやめて以後、まったく進化していないスバルを大きく凌いでいる。マツダ、デザインとエンジンだけ宣伝してるけど、車体技術のほうが高い。
同じく自動ブレーキもマツダに抜かれた。モービルアイの技術を上手に使っており、夜間の歩行者認知性能や、遮蔽物ある場所(クルマの陰から歩行者が出てくる試験モード)での自動ブレーキ性能は、どんな評価軸でもマツダ優位。
スバルのアイサイト、基本的なスペックを見ると2014年のレヴォーグに採用されたアイサイトVer3から進化していない。これもマツダは上手にアピールしないから知られていないのだった。以上、クルマ好きを熱くさせるのはCX-5のほうだと思う。
CX-5の勝ち!(各10点満点)
■ライトウェイトFRスポーツ対決[ロードスターRF vs BRZ]
(TEXT/国沢光宏)
●マツダ ロードスターRF(価格:255万4200~381万2400円)
VS
●スバル BRZ(価格:243万0000~359万1000円)
毎年筑波サーキットでロードスターを使ったメディア耐久4時間レースというのがある。ここ何年か運転手をしているのだけれど、ひたすら楽しい!
1.5Lのノーマルエンジンにロールケージとサスペンション&ブレーキを組んだだけのスペックながら、元F1ドライバーから私のようなロートル評論家、メディア編集長までがごった煮になって走ります。皆さん頭から汗かいての真剣勝負。このイベントでマツダという会社の原点を思い出します。
一方、BRZも日本のモータースポーツで輝いている! 私は国内の競技にこそ出ていないが、2013年にタイまで運び、プミポン国王杯に出場した。デビューしたばかりとあって大人気!
BRZにとって海外ラリーの初陣であります。足回りのトラブルなど出たものの、大きな遅れなく走り切り総合4位。2WDクラスのトップなど、いくつかのクラス優勝と複数のトロフィーをいただいた次第。
BRZをグラベルで走らせたら超楽しい! 大笑いしながら走りましたね。
標準のロードスターが搭載する直4、1.5L DOHCから2L DOHCに換装されているのがRFの注目ポイント。パワフルさが増している
RFとBRZ、どちらがいいか聞かれたら、相当迷う! なんたってRFは標準の1.5Lエンジンより圧倒的にパワフル。走る楽しさからいえば、30%増しといった感じ。
BRZも私がタイで乗った初期型(アプライドA)から大きく進化しており、世界で最も楽しめる後輪駆動車に仕上がっている。アフターマーケットのパーツの種類だって驚くほど!
ノーマルで乗ったって楽しいが、お好みに応じた味つけにすることが可能。だからこそ今でもクルマ好きに絶大な人気です。
以下、精神論じゃなくハード面を比較してみよう。ハンドリングについては引き分けとしておく。どちらも素材として考えたらイーブンだし、コーナリングスピードなどタイヤで決まります。味つけだって自由。ノーマル車で比べたところで意味なし。
エンジンフィールだけれど、これまた「どちらも100点とは言えない」という点でいい勝負だと考えます。RFは絶対的な出力が物足りず、BRZも中回転域に存在するトルクの谷に泣かされてしまう。
ファントゥドライブ度や走りの質感についていえば「好みですね!」と言い切れる。
そもそもRFはオープンエアモータリングを楽しむためのライトウェイト2シータースポーツカーであり、BRZは狭いながらもリアシートを持つクーペと用途が違う。
FRスポーツとしての走りの楽しさならBRZも負けてない!
オープンカーを買うか、クーペを買うかって、けっこう大きな差があると思います。最大公約数的に考えるなら、4人乗車の機会も多い若い人だとBRZ。もはやひとりで乗ることがふつうであればオープン2シーターなどいいか?
私としちゃ煮えきれない原稿になっているけれど、スポーツモデルってそんなモンだと思う。どちらも生活の必需品じゃない。夢や楽しさが目的です。したがって自分の好みを選んで100点である。
国沢光宏ならどちらを選ぶかといえば、現役で競技に出ているウチはBRZに熱くなるかと。されど競技を止めたら、RFのトップを開けてノンビリと北海道など走ってみたい。どっちを買った人も幸せな日々が待っていると考えます。
こんなクルマがあるから人生楽しめる。
この対決は引き分けなり!(各10点満点)
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