9月28日(日)に決勝レースが行われる2025WEC第7戦富士。初めて富士スピードウェイに登場したアストンマーティン・ヴァルキリーは、予選で今シーズン3回目のハイパーポール進出、しかも過去最高位となる予選3番手を獲得。WEC参戦初年度で国内ファンからも注目を集めるヴァルキリーが、WEC富士で美声を響かせた。
2台のキャデラックに続いたのは009号車をドライブしたベテラン、マルコ・ソーレンセン。「ファーストイヤーであることを考えれば予選3番手は上出来だ。自分たちのクルマが確実に進化していることを結果で証明することができて嬉しいよ」と予選後に笑顔を浮かべていた。
2025年WEC第7戦富士:決勝スターティンググリッド&スタートドライバー
●「フラットかつスムース」な富士にハマった硬派な素性
一方、ハリー・ティンクネルがドライブした007号車はわずか0.032秒差でハイパーポール進出を逃したが、ヴァルキリーが2台揃って好調であることは間違いない。「トラックウォークで富士を1周歩いた時から、このサーキットがヴァルキリーに合っていると確信した。なぜなら路面が非常にフラットかつスムースで、縁石もそれほど高くないからだ」とティンクネル。
「イモラ(イタリア)やサンパウロ(ブラジル)で苦戦したことからも分かるように、ヴァルキリーは路面が荒れていて縁石が高いサーキットは少し苦手だ。なぜなら我々のクルマは非常に硬く、他のハイパーカーがダウンフォースの高いGTカー的な動きをするのに対し、ヴァルキリーは“純”プロトタイプというかフォーミュラ的な挙動を示すからだ。だから、できるだけ車高を下げたいのだけど、路面に凹凸が多いとそうはいかないからね」
ティンクネルによると、足まわりのセッティングが硬いというよりも、クルマのシャシー自体が硬いのだという。それもあって、メカニカルグリップが必要とされる低速かつツイスティなコーナーではグリップを得ることに苦労しがちだが、テクニカルな富士のセクター3でのハンドリングも決して悪くなく、続くロングストレートで巻き返すことができるため、クルマと富士との相性は非常に良いと感じているようだ。
「ヴァルキリーはLMH(ル・マン・ハイパーカー)の中で現在唯一の後輪駆動車で、自然吸気のV12エンジンを搭載している。だから4WDハイブリッドのライバルと異なり、ドライブ感覚は昔ながらのレーシングカーに近い自然なものだ」
「ハイブリッド車は調整可能な領域がとても多く、持ち込んだクルマのバランスが多少悪くとも比較的容易に修正することができるだろう。そのためドライブフィールはやや人工的なものにもなりがちだろうが、その点ヴァルキリーの運転感覚はとても自然だ」
「ハイブリッド車はシステムでターンインを容易にすることができるけど、ヴァルキリーは荷重移動、ピッチ変化、ローテーションという昔ながらのドライビングが求められる。クルマの反応はとても良いしグリップも基本的には優れているけど、グリップを失った時のコントロールがやや難しい。今年は何度かスピンしているしね(笑)。」
●「制御でタイヤのライフは驚くほど大きく変わる」
エンジンの特性はどうだろうか? ベース車となる市販車のヴァルキリーのV12は1万1000回転も回り、ハイブリッドでもあることから合計1000馬力以上を発揮する。ただ、ハイパーカーでは規則により決められたパフォーマンスウインドウに収める必要があり、そのためパワーは700馬力以下と、かなり“デチューン”されている。高回転でのパワーを得る必要がないため、フリクション(摩擦)を下げて燃費を稼ぐために回転数を抑えた設計となっているのだ。
「それでも素晴らしいエンジンサウンドを響かせているだろ(笑)?」とティンクネル。
「パワーはさることながら、自然吸気エンジンのレスポンスはやはり素晴らしいよ。ただし、ハイブリッドやターボを備えた最近のエンジンもレスポンスは悪くないし、いろいろなことを制御で変えられるから、どちらが優れているとは言えない」
「ハイパーカーはもちろんクルマの素性の良さが重要だけど、制御の部分も非常に重要なんだ。例えばトラクションコントロールの使いかた次第でタイヤのライフを伸ばすことができる。他にもエンジンブレーキ、デフのコントロールなどによって、クルマのハンドリングやタイヤのライフは驚くほど大きく変わる」
「自分たちはハイパーカー初年度で、最初はそういった制御に関する知識や経験がまったく足りていなかった。だから、シーズン序盤はただただ機械的なグリップに頼っていた。それでも、レースを重ねるごとに制御が洗練されていき、それもここ数戦の速さに繋がっているのだと思う。まだまだやるべきことは沢山あるけどね」
ティンクネルによると、ヴァルキリーのパフォーマンスを最大限引き出すためには、とにかくスムースに走ることが重要だという。「繰り返しになるけど、僕たちのクルマは硬く、柔軟性にやや欠けている。だからスライドは厳禁なんだ。オーバードライブせず、冷静にスムースにクルマを操ること。とくに富士のセクター3ではそのように走ることが重要だ。それでも、富士はここまで走ってきたサーキットの中でもっとも自分たちのクルマに合っているかもしれない。決勝はそう簡単には行かないだろうけど、楽しみだよ」
ヴァルキリーを走らせるTHOR(ジ・ハート・オブ・レーシング)のチーム代表であり、同チームのGT3ドライバーでもあるイアン・ジェームズは「ここまで非常に大きな進歩を感じているし、ここ富士でも非常に好調だ。ドライバーたちも大きな手応えを感じているようだ。来年ジョーカーを使う予定は今のところないが、ヴァルキリーのパフォーマンスをフルに発揮させるために引き続き開発を続けていくよ」と述べる。
ティンクネルらハイパーカーのドライバーからは、フロントのダウンフォース増加、コーナリング中盤から後半にかけての回転性能向上、より多くのトラクションを得るための柔軟性アップなど多くのリクエストが寄せられているようだが、クルマの素性の良さには自信があるという。もちろんBoP(性能調整)によって大きなアドバンテージを得ていることは間違いないが、初年度に大苦戦したライバルチームのクルマが多かったことを考えれば、ここまでヴァルキリーは健闘していると言えるだろう。
[オートスポーツweb 2025年09月28日]
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未来の為の環境技術が過去の遺物に負けるとかさ、何のためにハイブリッドを導入しているのか分からなくなる