XC40、XC60が2年連続日本COTY受賞というトピックもあるが、なにかと注文の多い評論家先生たちからも評価の高い最近のボルボ。
最近の国内データを見てみても、2018年の販売台数が22年ぶりに年間2万台を突破し、世界販売台数でも同年約64万台、前年比6.4%、5年連続記録更新という破竹の勢いを見せている。この勢いはどこからくるのか?
【利点はどこに? 円形に戻した車も??】 異形ステアリングはなぜ定着しないのか?
ベストカーをご覧いただいている方ならご存知の通り、昨年(2018-2019)のカー・オブ・ザ・イヤーはボルボ、そして一昨年(2017-2018)の日本カー・オブ・ザ・イヤーもボルボのXC60が受賞している。
カー・オブ・ザ・イヤー2年連続受賞は過去にトヨタも受賞している。が、車種がわずか10数車種くらいしかないボルボが受賞するのは、いかにボルボのクルマの素性が素晴らしいかということを物語っているのではないだろうか。
本企画では、最近のボルボのなにがすごいのか、また現行10モデルの優れた部分を総チェック。さらに現ボルボオーナーでもある自動車評論家 国沢光宏氏にボルボの強さの秘密を分析してもらった。
※本稿は2019年5月のものです
文:永田恵一、国沢光宏/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年6月10日号
■ボルボ 国内最新ラインナップ 10車種はこんなクルマだ!
(TEXT/永田恵一)
■XC60……トルクフルでパワフルなパワートレーンが魅力
XC60は現在のボルボのラインナップでは40シリーズと90シリーズの間に位置する60シリーズのトップバッターとなるプレミアムSUVである。
日本へは2017年から導入が開始されており、ボルボとしては初となる日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。車格としてはベンツGLCやアウディQ5など相当となる。
兄貴分譲りのたくましいリアビュー
エンジン、トランスミッション、駆動方式といったパワートレーンはディーゼルが190馬力のD4となる以外はXC90に準ずる。
乗った印象はXC90に非常に近い堅実なもので、このことはボルボらしい強いポリシーの象徴といえるだろう。
縦横基調でまとめられたインパネは機能的だ
XC90に近いといえばインテリアもそうで、ベーシックグレードでもボルボらしい室内の明るさと居心地のよさを備えており、この点もXC60の大きな魅力だ。
またXC60はXC90にはないRデザインも設定されており、価格がクロスすることがあるXC90と迷った際には決め手になるかもしれない。
独自デザインのシートがカッコいい
●価格:644万~924万円
●エンジン:2Lターボ/2Lターボ+SC/2Lターボ+SC+モーター/2Lディーゼルターボ ※SC:スーパーチャージャー
■XC40……こいつはSUV界のデザイン革命児だ!
40シリーズは現在のラインナップでは最小となるシリーズで、車格としては欧州でCセグメントと呼ばれるクラスに属する。
XC40は車名のとおりSUVで、このクラス用に新開発されたCMAプラットフォームを初採用したモデルとなる。
日本導入は2018年から始まり、XC60に続く2年連続となる日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。
全長4425mmのコンパクトなSUV。VWティグアンのライバルだ
パワートレーンは全グレード8速ATと組み合わされる2L直4ターボで、標準のT4とハイパワーのT5が設定され、駆動方式はT4がFFと4WD、T5が4WDのみとなる。
乗り味はボディが小さいためもあり、ボルボとしてはスポーティな印象も備える。また60シリーズ以上とは違ったテイストのカジュアルなインテリアも大きな魅力だ。
今後の展開としてはディーゼルが日本に導入される可能性は低いようで、その代わりにハイブリッドや1.5L 3気筒ガソリンターボが加わる見込みとなっている。
最新モデルは後方死角から近づく車両を知らせる機能も付いた
●価格:389万~599万円
●エンジン:2Lターボ
■XC90……パワートレーンもエンジンも独自開発
現行のボルボにおいて60シリーズ以上のために開発されたSPAプラットフォームを最初に使うなど、新世代のボルボのトップバッターとして日本には2016年から導入が開始された3列シートを持つ7人乗りのラージSUV。
車格はBMW X5やレクサスRXに相当する。
上品で端正なデザインのリアビュー
予防、衝突ともに書ききれないほど安全装備が充実しているのはほかのボルボと共通だが、XC90は道路からコースアウトした際の衝撃で乗員が受けるダメージを軽減するためにフロントシートベルトを締めつけるなどするランオフロード・プロテクションを最初に採用したモデルである。
全グレード3列シートモデルとなっている
駆動方式は全グレード4WDで、全グレード8速ATと組み合わされるエンジンはすべて2L直4となる。
ガソリンエンジンはターボのみのT5、ターボ+SCのT6、T6に前後モーターを加えたPHVのT8の3つ、ディーゼルターボのD5も設定されておりラインナップは豊富だ。
上級モデルはウォルナットで加飾される
乗ってみると全体的にボルボらしい堅実な印象で、特に車重が2トンを超えるSUVというのもありディーゼルとの相性がいい。
価格も車格や内容を考えるとリーズナブルといえる。
●価格:789万~1309万円
●エンジン:2Lターボ/2Lターボ+SC/2Lターボ+SC+モーター/2Lディーゼルターボ
■V90……期待のディーゼルモデルもラインナップ
ボルボでは車名の頭文字の「V」は「ステーションワゴン」を表わしており、V90は90シリーズのステーションワゴンで、ベンツEクラスやBMW5シリーズのステーションワゴンがライバルとなる。
エンジンラインナップはXC90に準じており、駆動方式はD4とT5がFF、T6とT8が4WDとなる。
インテリアは温かみのある配色となる
XC90に比べれば車重が軽いこともあり、T5でも十二分な動力性能を備えている。
また動力性能なども加味しながらベンツEクラスやBMW5シリーズのステーションワゴンと価格を比べるとリーズナブルで、この点でもV90の競争力は非常に高い。
●価格:679万~964万円
●エンジン:2Lターボ/2Lターボ+SC/2Lターボ+SC+モーター/2Lディーゼルターボ
■V60……ちょうどいいボディサイズで新登場
V60は60シリーズのステーションワゴンで、日本へは2018年から導入されている。
直接的なライバルはベンツCクラス、BMW3シリーズといったプレミアムカーであるが、V60はライバルに対し、ボディサイズが若干大きいという特徴を持つ。
そのボディサイズは全幅については1850mmとXC60より小さく、日本での使い勝手に配慮されている点は好感が持てる。
タッチスクリーン式ディスプレイを縦に配置
エンジン&駆動方式はT5にFF、T6とT8が4WDとなっており、ディーゼルは未導入だ。
クルマの印象は乗り味、インテリアともにボルボらしい安心感あふれるもので、飽きずに長期間付き合えるだろう。
●価格:499万~819万円
●エンジン:2Lターボ/2Lターボ+SC+モーター
■V40……ボルボ人気に火を付けた立役者
ボルボの日本での大躍進は2013年から導入された現行V40がきっかけである。
V40はプラットフォームこそ古く、室内もやや狭いものの、安全装備はボルボの上級車とほぼ変わらず、走りはスポーティ、内外装もボルボらしい華があるという魅力あふれるクルマだったため、日本では人気車に成長。
ガッチリしたボディが何より気持ちいい
モデル末期の今でも激戦区であるCセグメントにおいて高い競争力を保っているのは、V40の素晴らしさといえる。
ラインナップはモデル末期ということもあり、特別仕様が中心となっている。カタログモデルには300万円を切るT2もあり、購入条件次第では現行モデルもいい選択だ。
●価格:299万~455万円
●エンジン:1.5Lターボ/2Lターボ/2Lディーゼルターボ
■S60……本国では新型が登場。日本はいつ?
※こちらは現行車
S60は60シリーズのセダンだ。日本では先代モデルが販売されているが、すでにフルモデルチェンジされており、日本にも今年中に導入される見込みとなっているので、以下では新型を紹介する。
新型S60の大きなトピックはアメリカの新工場で生産されることである。
新S60。カッコイイ。日本での登場は今年の秋を予定か?
パワートレーンはV60に準ずるようだが、ボディ剛性の高さなどスポーティなクルマを作りやすいセダンということもあり、新型S60にはボルボのスポーツ部門であるポールスターが手がけるモデルが導入される可能性もありそうだ。
価格も含めDセグプレミアムセダンの強力なライバルとなるだろう。
●価格:454万~614万円
●エンジン:1.5Lターボ/2Lターボ/2Lターボ+SC/2Lディーゼルターボ
■V90 Cross Country……ディーゼルモデルもおすすめです
ボルボのラインナップにおいてクロスカントリーは、各シリーズのステーションワゴンをベースに最低地上高を上げ、オーバーライダーなどと呼ばれるフェンダーの黒い部分を加えるなどしてSUVの要素を盛り込んだクロスオーバーである。
V90クロスカントリーはベンツEクラスステーションワゴンで例えるならE220d 4マチックになるオールテレーンに相当するモデルだ。
SUVとワゴンのいいとこ取りがこのクルマの魅力
ラインナップは全グレード4WDで、エンジンは2L直4ガソリンターボのT5、SCを追加したT6、2L直4ディーゼルターボのD4となる。
最低地上高は平均的なSUV以上となる210mmが確保されており、深い雪道などでも心強い。
センターに備わる9インチの縦型ディスプレイはタッチパネル
もちろん予防、衝突含めた安全装備は完備されており、走行安定性などを含めロングツアーとしても頼もしい。
また巡航中のエンジン音も耳に心地いいV90クロスカントリーのディーゼルもおすすめしたい。
長時間座っていても疲れ知らずのシート
●価格:739万~864万円
●エンジン:2Lターボ/2Lターボ+SC/2Lディーゼルターボ
■V60 Cross Country……V60より最低地上高を65mm上げてカッコよく
ボルボの最新モデルであるV60クロスカントリーは過去の日本車で例えればレガシィツーリングワゴンに対するアウトバックのような存在である。
V60クロスカントリーもV90クロスカントリー同様に210mmという平均的なSUV以上に高い最低地上高を確保しているのに加え、全グレード4WDということもあり、深い雪道や悪路への対応も万全だ(ディーラーオプションでアンダーガードも用意されている)。
ボルボらしい北欧デザインは女性からの支持も高い。なによりそのオシャレ感はマル
またV60クロスカントリーは2トンまでの牽引にも対応しているので、船やジェットスキーなどをけん引して遊びに行くといった使い方にも対応してくれる。
エンジンは2L直4ターボのT5のみの設定となる。
モアパワーを求めるのであれば、ディーラーオプションでパワーが8馬力、トルクは排気量に換算すると500cc分に相当する5.1kgm向上しながら、補償も継続されるコンピューターチューンも18万8000円で設定されるので、購入後にでもこちらを考えるのもいい。
リアシートをたためば大きなラゲッジルームが出現。アウトドア遊びにはもってこい!
乗ってみると「V60に対しクロスカントリーはほとんど失った部分はなく、得たものは多い」という印象。
4WDとなることを考えるとV60に対し割安感は大きく、V60を買うならこちらを基本に考えるべきだろう。
シャープなフロントデザインが新たなボルボのトレンドか。トールハンマーデザインも映える!
●価格:549万~649万円
●エンジン:2Lターボ
■V40 Cross Country……より安全性が増したCCの最小モデル
V40は日本車で例えるならインプレッサに対するXVのような存在だ。ただし、最低地上高はV40に対し10mm高いだけの145mmと乗用車並みと決して大きくないので、クロスオーバーというキャラクターは薄い。
パワートレーンはFFが6速ATと組み合わされる1.5L直4ターボ(T3)、8速ATと組み合わされる2Lディーゼルターボ(D4)、4WDが8速ATと組み合わされる2Lガソリンターボ(T5)の3つで、クロスカントリーなのに4WDの設定が少ないのはちょっと残念である。
全高はノーマルのV40に比べて+30mmの1470mm。なので、多くの立体駐車場でも駐車が可能。これは便利。エンジンは2L直列4気筒のターボほか。上級モデルのミッションは8速ATだ
乗ってみると「よくも悪くもV40とさほど変わらない」という印象。
雪道をはじめとした悪路走破性を求めるなら、ジャンルが異なり納期が長い可能性も高いが、XC40を選ぶべき、というのが率直なところだ。
それだけに次期モデルでは最近のボルボの流れを見れば心配はないにせよ、クロスオーバーとしてのキャラクターを強めてほしい。
●価格:354万~459万円
●エンジン:1.5Lターボ/2Lターボ/2Lディーゼルターボ
■死角性能・安全性・コスパ etc… 今のボルボに死角はない!
(TEXT/国沢光宏)
●デザインの「変遷」と「変貌」
ボルボはこのところ世界的規模で人気上昇中だ。もちろん日本も例外じゃない。
欧州と北米、日本という世界の3大COTYのなかで一番輸入される車種にとってハードル高いといわれている日本COTYをXC60とXC40が2年連続で受賞!
はたまた北米COTYのSUV部門もXC60。そうかと思えばXC40が激戦区の欧州COTYを取っているから驚く。
なぜボルボ人気なのか? 私は3つの大きな要因があると考えている。デザインと安全性、そしてコストパフォーマンスだ。以下紹介してみよう。
まずデザイン。フォード傘下のメーカーだった先代60シリーズまでのデザインを見ると、皆さん「普通ですね」と思うハズ。特に悪くもない代わり、スタイリッシュという雰囲気もなし。フォードらしく質実剛健。
ボルボ245。240シリーズを母体とするステーションワゴン。日本でも人気になった。
しかし現行V40から大きく変化し始めた。私はV40を購入したのだけれど、安全性のほか、デザインにも魅力を感じた次第。
いや、正確に表現すると、安全性だけならV40を選ばなかったと思う。
この時期、どうやらボルボ内部でもデザインの方向性が変わりつつあったらしい。そりゃそうだ。ボルボの特徴は実用性。なのにV40ときたら競合車であるVWゴルフなどと比べ狭かった。
V40
大きく変わるのはフォード傘下から抜けた後にデザインされるXC90からである。
『トールハンマー』(北欧神話に出てくる電撃金槌)をイメージしたヘッドライトに加え、ボディ全体のシルエットもまったく変えてきた。
わかりやすく表現すると「低くワイドに」というクルマのカッコいいデザインの王道を選択。個人的にXC90はなじめなかったけれど、次のS90/V90などスーパーカッコいい!
XC90
見た瞬間「どうしちゃったの?」と思ったほど。続くXC60など「このクルマ、ぜひとも欲しい!」(現在所有してます)。
ベンツやBMWのSUVってアメリカを意識し過ぎて大味なデザインになったり、商用車部門の開発のため作りも「う~ん」。ポルシェやアウディの場合、後述の安全デバイスがまったく遅れており、事故を起こしたくない私だと対象外。
XC60
ふたつ目の魅力は「事故を起こさないための装備」が充実していることである。特に日本仕様は安全装備がすべて標準で付く。ボルボに乗っていたら事故を起こすのが難しいと思えるほど。
実際、ボルボは「2020年までに新世代のボルボ車は死亡事故やそれに匹敵する重篤なダメージを起こさないようにする」という目標を立て、真剣に実現させようとしている。
●先進安全機能は至れり尽くせり
最新の安全スペックを紹介してみよう。
前方に出現する「危険性」については自動ブレーキで対応。これ、車両だけでなく、歩行者や自転車までしっかり見ている。
歩行者についていえば競合車の多くは昼間だけしか認識できないものの、ボルボについちゃ夜間までカバー。
さらに正面衝突が避けられなくなると急ブレーキをかけ、生存率を2倍に高める機能まで付く。
日本のカー・オブ・ザ・イヤーを受賞したXC40
左右方向も万全。事故割合多い高速道路の車線変更など、左右にハンドル切った場所に他車がいるようなら、警告灯(そもそもこの安全デバイスはボルボが考案した)だけでなくハンドル切ってもソチラにいかないのだから素晴らしい!
はたまたバック時に運転席の死角になっている左右から車両や自転車が接近すると、警報鳴らして注意喚起するだけでなく自動ブレーキかけるようになっている。
その上、車線をはみ出し対向車と接近すると自動でハンドル切って回避してくれたり、交差点で飛び出してくる車両を検知し、ドライバーがハンドル切ったら、その後はすべて車両側でコントロールしてくれる等々。
PHVも用意されるV90
事故の可能性あれば自動的に止まるか、接触する方向にハンドルが切れないよう制御するか警告鳴らすかの3択。心強いです。360度の安全確認をクルマが常時してくれるという寸法。
それだけじゃない。万一事故に遭遇したって、衝撃に対する対応策は世界トップだと考える。実際に起きた事故のデータを車体設計に反映してきたため、世界中の衝突安全試験の内容を先取りしている格好。
だからこそアメリカで突如始まったスモールオーバーラップ衝突試験も、ベンツやBMWが軒並み最低評価になったのを横目にボルボだけ何の対策をすることなく最高評価に輝いた。
3つ目がコストバリューだ。例えばXC40はサイズも価格もアウディQ3やBMW X2と同じクラスになり、欧州だと「Cセグメント」というカテゴリーに属す。ドイツ車なら例外なく「車両価格」により上質度が異なる。
BMWならX2シリーズは間違いなくX3シリーズよりチープな仕上げ。けれどスウェーデンにはこういった「サイズによる上質度の差をつける文化」がないのだろう。
興味深いことにXC40より大きいXC60に乗れば、落ち着いていてトラッドな感じ。XC40はスポーティ&カジュアルという“味や雰囲気の違い”あるものの、上級か中級かみたいな差についていえば「ない」。
むしろXC40のインテリアは明るく、乗り心地だって好ましい。ドイツ車だと予算ある人は基本的に上級の車種を選ぶが、XC60を買う予算ある人でもXC40にしようか迷う人も出てくるんじゃなかろうか。
こちらも一昨年(2017-2018)の日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したXC60
そしてお買い得感が高い。XC40であれば同じ予算で前述のライバルたちよりパワフルなエンジン搭載車を買える。
はたまたXC60だと大きさ的にはBMWならX3とX5の中間サイズながら、価格は極めてX3に近い。
それでいて安全性はもちろんインテリアの質感まで高いのだった。といったことを総合して考えれば、世界的な人気は当然かもしれません。
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