この記事をまとめると
■2025年シーズンのスーパーGT最終戦がモビリティリゾートもてぎで行われた
「FFのBRZ」に「スバル製エンジン搭載のMR-S」! 魔改造車がゴロゴロ参戦する全日本ダートラD1クラスが注目必至!!
■同レースでは61号車が使用するエンジン「EJ20」がラストランを迎えた
■最終戦では表彰台を獲得しラストに相応しい結果を残した
スバルの名機がいよいよラストラン
スーパーGTで16年、スバル/STIのモータースポーツを支えて36年と長きに渡って走り続けてきた名機EJ20エンジンがラストレースを迎えました。歴史を辿ると、最初はパーツメーカーのキャロッセがクスコレーシングとしてマシンを製作し全日本GT選手権に参加していましたが、スバル/STIがスーパーGTに参戦を開始したのは意外と遅く、2009年のスバル・レガシィB4からです。
そのときからR&Dスポーツとスバルはタッグを組み、山野哲也選手・佐々木孝太選手により走らせてきました。
その後スバルは、2012年にBRZにマシンチェンジを行い、2013年の鈴鹿1000kmレースでは第3ドライバーとして初めて乗った井口卓人選手とともに、BRZで初勝利を掴みました。その2年後の2015年には、山内英輝選手が加わり、現在の井口・山内体制が2025年の現在まで続いています。
長い歴史のなかでマシンがたびたび変更されてきましたが、エンジンは一貫してEJ20を使い続けてきました。WRCで活躍してきたインプレッサに使われたエンジンと同じものをスーパーGT用にアレンジしていますが、基本設計などはWRC時代からそう大きく変更はされていないと言います。
そんなスバル/STIのモータースポーツを支えてきたEJ20エンジンが、2025年シーズンをもって引退すると、スーパーGT第7戦オートポリスを前に発表され、オートポリス戦、最終もてぎ戦には多くのスバルファンが会場に足を運びました。
そのスーパーGT第8戦『MOTEGI GT 300km RACE GRAND FINAL』で、スバルBRZは力強い走りを見せてくれました。運命の最終戦は、サクセスウエイトを降ろした状態での戦いとなり、開幕戦の岡山と同じく軽量な状態でレースに挑みます。
今シーズン、ニューマシンに刷新しましたが、幾度となくエンジンや駆動系などにトラブルが発生してしまい、苦しいレースを行ってきたBRZにとって、最終戦はその鬱憤を晴らすかのような快走を見せます。練習走行からトップタイムを刻み、予選Q1では井口が全体トップ、予選Q2の山内はライバルを1秒以上引き離す圧倒的な速さでポールポジションを獲得。このポールポジションにより、山内は自身がもつ最多ポールポジション記録を塗り替え、16回に更新しました。
予選を終えて井口は、ピットに戻ってきた山内に勢いよく抱きつき喜びを爆発させていました。
ポールポジション会見で山内は「EJエンジンラストレースということで、EJは『い~じぇ』と言えるようなレースをしたい」と笑顔で冗談が飛び出すほど絶好調なことを見せてくれます。
最後のレースに相応しい大活躍
迎えた決勝では、井口がスタートドライバーをつとめ、練習走行や予選で見せた快調をそのまま見せつけ、スタートからライバルをどんどん引き離していきます。
最近のスーパーGTでは、レース途中のクラッシュやトラブルが発生した際にルール上、ピットに入れないことも多くあるため、ドライバー交代ができるミニマム周回でピットに入り後半に繋ぐことも多いのですが、今回は27周目というレースの約半分まで井口選手がドライブを担当しました。
その後、山内選手はタイヤ交換と給油を済ませて、実質3位でコースに復帰します。ここでライバルがタイヤ無交換作戦を実施し10秒ほど先行していきます。チームとしてはライバルのタイヤがタレてきて終盤に逆転できるだろうと判断していましたが、意外にもライバルも好調な走りを見せ続け、なかなかタイムが縮みません。後続のライバルに接近される場面もありましたが、山内は冷静な走りで2位をキープ。そのままフィニッシュとなりました。
レースを終えてピットに戻ってきた山内からは悔し涙が溢れ、「優勝で戻ってこられなくてゴメン」とこぼしていました。そんな山内を井口はしっかり支え労いをかけていました。
終了後に行われた表彰式とグランドフィナーレでは、笑顔でファンの声援に応えていましたし、レース終了後ドライバーがピットに戻ってくるのを待っていたファンとともに記念撮影を行うなど、最後までスバルファンに対して感謝を伝えていました。
そんなレースを振り返って井口は「今回はマシンもエンジンもタイヤもすごく調子が良くて、決勝レースも気持ちよく走ることができました。後半の山内選手のときは路面の変化や気温も変わったことで少し苦しい展開もありましたが、山内選手が2位を守ってくれて良かったです。本当はもう少し自分のスティントでギャップを作りたかったのですが、タイヤもキツくなってきたところもあり、そこが少し悔いがある部分です。それでも安定して逃げられたのはよかったと思います」
続けて、「EJ20エンジンラストレースということで優勝をもちろん狙っていました。練習走行、予選とトップを取れましたが、決勝で2位になってしまいました。それでも表彰台に乗れたことは嬉しいです。チームもエンジニアもメカニックもとても頑張ってくれたことに感謝します」
最後に、「長年EJ20エンジンに乗ってきて、BRZで初めて優勝したのも、チャンピオンを獲ったのもEJ20でしたので、自分にとって人生を変えてもらったエンジンだと思います。独特の音が印象的ですし、年々パワーアップしてきて高いパフォーマンスを見せてくれました。多くのトラブルが出たこともありますが、最終レースで表彰台にあがれたことは、エンジンチームの頑張りが報われたのかなと思います。来シーズンは新しいエンジンになります。まだなにも言えませんが期待できると思います……というか、期待しかないです」と語ってくれました。
決勝で悔し涙を流した山内選手は「レース後半は路面の変化なのか手応えが薄くなっていきあまり良い状態では無かったです。そこはライバル勢が後ろから追い上げてきたきましたが、守ることができてよかったです。EJ20エンジンラストレースでしたが、そういった苦しい状態でもエンジンに助けられた場面もありました。GT500マシンとの絡みでギャップを作れた場面もあって展開が良かったところもありました」
さらに続けて、「以前から新しいエンジンという構想があり、今年ラストレースということになって、1戦1戦レースを噛み締めながら走ってきましたが、やはりシーズン後半になって想いがすごく強くなってきたところがあります。エンジン部門のみんなと『勝てるように頑張りたい』と話してきたところもあったので、最後の勝てるレースで勝てなかったのは悔しいですし、申し訳ない気持ちでいっぱいです」と語ってくれました。
小澤総監督は「結果的に2位というポジションになってしまいましたが、今回のレースはマシン、セットアップ、タイヤとすべてがよい組み合わせになって、完璧なレースができたと思います。思いのほかタイヤ無交換で走ったライバルが速く、タイヤがタレてきた後半勝負になると思っていたのですが、ライバルのタイヤがタレてこなくて逃げられてしまったのは想定外でした。しかし、いま持てるパフォーマンスはすべて出し切れたのではないかと思います。今シーズンはトラブルがいっぱい出てしまい、今日も不安もありましたが最後まで良い走りをしてくれました」
小澤総監督は最後に、「EJ20エンジンは自分にとってはWRC時代から携わってきたエンジンでした。30年以上前に設計されたEJ20エンジンっていいエンジンだったなと思いますし、最初に作った方々の苦労はすごかったのだろうと思います。そんなエンジンを越えられるように、次のエンジンもさらによくしていきたいです」と振り返りました。
2025年シーズンのスーパーGT、スバル/STI、R&Dスポーツの戦いは終了し、ドライバーランキング、チームランキングともに9位という結果になりました。
2026年シーズンは既報のレポートのとおり、すでに走行テストを行っている模様です。そんな新エンジンとともに、どのような戦いを行っていくのか期待していきたいです。
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みんなのコメント
ラリーではレガシィやインプでWRCを征した名機も時代の流れに勝てなかったね
あの『ドコドコ…』って響くボクサーサウンドが好きだったね
スバルの原点のはずなんだけど。