近年、1980年代、1990年代に販売された“ちょっと、古い、クルマ”、通称“ヤングタイマー”に注目が集まっている。そこで、クルマをこよなく愛する俳優・永山絢斗が当時の車両を取材する。第4回はメルセデス・ベンツのオフローダー「Gクラス」(2代目)。
希少な3ドア、超希少なカブリオレ
メルセデス・ベンツのオフローダー、Gクラスの日本での大人気がつづいている。2018年に登場した現行モデルは、大量のバックオーダーを抱えているそうで、なかでもディーゼル・モデルの納車待ちは1年を超すという。
【前話】Vol.3 マセラティ・ギブリ(2代目)
「街中でなかなか見かけないショートボディのうえに、珍しいボディカラーとの組み合わせですから、目立ちますね」
俳優・永山絢斗さんはロングボディ(5ドア)のGクラスには乗ったことはあるが、ショートを間近で見るのは初めてという。
「乗ったと言っても助手席ですが(笑)。そういえば以前、友人が『カブリオレ』を探していました。なかなか“タマ数”がないそうですね」
取材車の1998年型のG320は「W463型」で、1979年にデビューした初代からかぞえて2代目になる。1990年に登場し、1991年から日本への正規輸入がスタートした2代目のGクラスの車型は、当初は3ドアと5ドアのみで、モデルライフの途中からショートホイールベースのオープンモデルの「カブリオレ」が追加された。
2018年には、フルモデルチェンジ並みの大幅改良を実施し、ボディサイズが大幅に拡大され、インテリアデザインも刷新されたものの、コードネームはW463型を継承、W463の第2世代と呼称されている。
取材車を委託販売するグラーツ・オートモビールの副社長・平岡佐門氏によれば、日本に上陸したビッグマイナーチェンジ前の2代目Gクラスのうち、ショートは10%ぐらいしかないとのこと。
「使い勝手を考えればロングのほうが有利です。ただし、取りまわしはショートが上です。カブリオレは、ショートよりもさらに流通数がグッと減ります」
試しに中古車情報サイトで検索すると、なんとカブリオレは全国に4台のみ。1999年型のG320カブリオレ(走行距離約6万6000km)の価格は1250万円! 新車価格は870万円だったから、驚きのプレミア・プライスだ。
Gクラスの中古車価格は高騰しており、永山さんも「おいそれともう買えない価格帯になっているんですね……」と、おもわずため息を漏らした。
【俳優・永山絢斗の“ヤングタイマー”探訪記】
Vol.1 メルセデス・ベンツ500E
Vol.2 ランチア・デルタHFインテグラーレ
Vol.3 マセラティ・ギブリ(2代目)
2代目Gクラスの変遷
1990年から2018年まで生産された2代目Gクラスは、1979年に登場した初代Gクラスのエクステリア・デザインを継承しつつ、4WD方式はパートタイプからフルタイムに変更になり、快適になった内装には、電動シートやサンルーフ、オートエアコン、カーナビゲーションなども装備された。
安全装備も大幅にアップデートされ、後期には衝突被害軽減ブレーキやACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)などの運転支援装備も搭載した。
日本には1991年に、3.0リッター直列6気筒ガソリン・エンジンを搭載した「300GE」のショートとロングが導入された。1995年には、3.2リッターに拡大された「G320」に切り替わる。
1997年には直列6気筒が最新のV型6気筒に換装され、1998年には5.0リッターV型8気筒ガソリン・エンジンを搭載した「G500」を追加、さらにG500ベースのメルセデスAMGモデル「G55」も登場した。中古車市場に流通する個体は、1998年以降のG500が多い。
2012年には大幅なマイナーチェンジが実施され、外装ではLEDを使ったデイタイムランニングライトや新デザインのドアミラーを、内装では新しいインフォテインメントシステムを採用した。
2013年には、ディーゼル・エンジン搭載モデルの「G350BlueTEC」が追加され、日本仕様のGクラスとしては約23年ぶりにディーゼルモデルが復活している。
「ディーゼル・モデルは、新型登場の今も人気が高く、高値の相場を維持しています。今後は状態の良い個体も減ると思いますので、気になる人は今、購入されるのが良いかもしれません」と、平岡さん。
3.0リッターV型6気筒ディーゼルターボ・エンジンは211ps/3400rpmの最高出力と540Nm/1600~2400rpmの最大トルクを発揮、当時の新車価格は998万円だった。
中古車情報サイトで検索したところ、たとえば2013年型で748万9000円(走行距離約3万2000km)だから、残価率は約75%! さすがは人気モデルだ。最終モデルの2018年型「G350d」になると、程度の良い個体は1000万円オーバーだから、新車価格1080万円とほぼ変わらない価格で販売されている。驚くしかない。
【俳優・永山絢斗の“ヤングタイマー”探訪記】
Vol.1 メルセデス・ベンツ500E
Vol.2 ランチア・デルタHFインテグラーレ
Vol.3 マセラティ・ギブリ(2代目)
極上のGクラス
取材車の1998年型G320ショートは「ルビーレッド」という珍しいボディカラーにブラックの内装色を組み合わせている。
「ボディに艶がありますね。20年以上前の個体とは思えないほど美しいです」
実はこのG320ショート、走行距離はたったの約8000km。しかも屋内保管だったというから、状態は極上だ。
「このG320ショートの販売価格は1380万円です。オウナー様からの委託販売車両になります」と、平岡さんは話す。新車価格の790万円に対し、プラス590万円だ! 思わず永山さん、「そんなに!?」とつぶやいた。
レザーやウッドを各所に使った内装の状態も抜群に良い。とくにリアシートは使用した痕跡がまったくないぐらいだ。永山さんも「まるで新車のようですね」。しかも、想像以上の居住性の高さに驚いている。
「乗り込んでみると、見た目よりもずっと広いですね。後ろの席は成人男性が座っても広々しています。乗り降りのときも、前席をグッと前に出せるので、苦労しません」
次に運転席へ座る。「どのスウィッチもサイズが大きいので操作性がいいですね。アイポイントが高く、遠くまで見渡せるのも気持ちよさそうです。ヘッドクリアランスも十分。なんとなく、狭いのかな、というイメージを持っていたので、意外でした」
クルマから降りたあと、ドアを何度か開け閉めする。“大型金庫のドアのようだ”とも評されることもあるドアの重みや開閉音をじっくり味わう。「このドアの重さだけでも、Gクラスの個性を感じますね」と、永山さん。
その後、マフラー位置やタイヤの銘柄、さらにリアの灯火類をチェック。叶うならもっと下まわりを見たかったようだ。クルマ好きならでは、である。
さて、20年以上前のGクラスを維持する上で、気をつけるポイントは?
「やはり年式が年式ですので、水まわりのリフレッシュは必要になるかと思います」(平岡さん)
「ほかに弱点はありますか?」(永山さん)
「よくある故障のひとつに、ドアウインドウ落ちがあります」(平岡さん)
ドアウインドウ落ちの原因は、主にパワーウィンドウレギュレーターの故障という。ほかの弱点について訊くと、平岡さんは「目立った弱点はほかにはないかもしれません」とのこと。
「NATO(北大西洋条約機構)軍向けにつくられた軍用車がベースですから、耐久性は高いです。つくりは頑丈です」
永山さんは、「やっぱりGクラスはすごいですね」と、唸る。そして「ロングに乗っている人が多いので、ショートのデザインは新鮮です。希少性にグッときますね」。
現行Gクラスよりひとまわり小さいコンパクトなボディ、それに3ドアの軽快さ、そしてレトロスペクティブなインテリアは大きな魅力だ。とくにショートは流通数がすくないうえ、正規輸入が終了してから10年以上経つので程度の良い個体は大幅に減っている。相場は上昇しているが、今後はさらに値上がりする可能性も高いので、気になる人は、検討を急いだほうがいいかもしれない。
【俳優・永山絢斗の“ヤングタイマー”探訪記】
Vol.1 メルセデス・ベンツ500E
Vol.2 ランチア・デルタHFインテグラーレ
Vol.3 マセラティ・ギブリ(2代目)
【プロフィール】
俳優・永山絢斗(ながやまけんと)
1989年3月7日生まれ。東京都出身。2007年『おじいさん先生』(日本テレビ系列)で俳優デビュー。連続テレビ小説『おひさま』や『べっぴんさん』(NHK総合)、『ドクターX~外科医・大門未知子~ 第5シリーズ』(テレビ朝日系列)、そして2021年には『俺の家の話』(TBS系列)に出演。映画では2010年の『ソフトボーイ』で第34回日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞。
2021年8月13日(金)放送の終戦ドラマ『しかたなかったと言うてはいかんのです』(NHK総合・22時~)には冬木克太役で出演する。
【取材協力】
グラーツ・オートモビール株式会社
〒158-0082 東京都世田谷区等々力2-36-6
TEL:03-3702-0066/FAX:03-3702-0130
【衣装】
パンツ ¥ 7,700 (JANTIQUES/03-5704-8188)
シャツ、シューズ、ベルト、ソックス/スタイリスト私物
まとめ・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.) スタイリスト・Babymix ヘア・松本明男 メイク・中村了太 撮影協力・グラーツオートモビール
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みんなのコメント
欲しい人は試乗するべき。普通の外車乗りなら「パス」するだろう。先代Gクラスは、あまりに走りの質が低すぎる。