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ヨコハマタイヤの雪上性能比較テスト

掲載 更新 3
ヨコハマタイヤの雪上性能比較テスト

ヨコハマタイヤの雪上試乗会に参加してきた。その内容は近年急激に注目を集め出したオールシーズンタイヤの雪上や氷盤での性能テスト。また冬の怪物というコピーで発売されたスタッドレスタイヤ「アイスガード6」の経年劣化による性能低下確認テスト、さらにスポーツカーと低扁平スタッドレスとの相性など、多岐に渡るものだったが、いずれも興味深く役立つ情報も得たのでお伝えしよう。

経年劣化はどの程度進むのか

自動車メーカーにとって視界不良の船出

ヨコハマタイヤのスタッドレスタイヤ、アイスガード6 IG60は発売から3年経ったが、横浜ゴムでは4シーズンたっても高い性能を維持していることをアピールしている。そこで、今回のテストでは、熱を加えて人工的に劣化させたアイスガード6を用意し、新品のアイスガード6との性能比較テストをした。ただ、トレッドに関しては新品状態のままで、ゴムのみ4年劣化相当にしているというものだった。

テストは屋内の氷盤路での発進、加速、減速テスト。20km/hまで加速させブレーキングというテストを、新品と劣化したタイヤで比較するテストだった。車両は2台ともプリウスを使用し車両による差が出ないようにしている。

結論は「その違いは感じられない」というもので、加速や規定速度に達するまでに必要とされる距離などは誤差の範囲でしかなく、さらに短制動でも違いがあるか不明というレベルだった。

テスト方法はパイロンを目印に加速させ、目標パイロンに到達してABSを効かせて制動をするという方法。これだとテストの再現性のレベルがドライビング技量によるため、数値としての結論づけは難しい。だが、自身の技量を信ずればほぼ差はない、あっても20、30センチ制動距離が変わるという結論だ。また体感的なフィーリングの違いでは、特に相違はないという結果だった。

なぜ劣化しない

経年劣化のメカニズムとしてはゴムの硬化とオイル量の低下があり、その結果ゴムが硬くなりタイヤの氷雪性能が著しく低下していく理屈だ。そうした課題への取り組みをヨコハマタイヤでは10年以上前から取り組み、ブラックポリマー2、吸水ホワイトゲル、エボ吸水ホワイトゲル、オレンジオイルSといったサマータイヤとは異なるスタッドレス特有の技術を開発している。

そして現在のアイスガード6 IG60は氷上性能とウェット性能という背反する性能を高次元で両立させる技術開発を行ない、シリカ技術をスタッドレスに適用し、専用コンパウンドを開発している。また、そのシリカでは配合技術の難度が高いものの、ホワイトポリマーを採用し多量のシリカを均一に分散する技術を開発した。

一方でオイルにはオレンジ由来の素材「オレンジオイルS」が永く効く効果があることを発見し、新規に採用することでアイスガード6は、新品から4年経過後でも高い性能を維持することができるとしているのだ。

オールシーズンのブルーアース4S AW21とアイスガードを比較

同じ屋内氷盤路でスタッドレスのアイスガード6とオールシーズンタイヤで、「雪道も走れる」をアピールするブルーアース4S AW21を比較した。車両は同様にプリウスを使用。

テスト内容は経年劣化タイヤのテストと同様に、20km/hまで加速させ、制動距離を比較する方法。こちらのテスト結果は、明確に差が表れ、オールシーズンのブルーアース4S AW21の方が加速しにくく、止まりにくいというわかりやすい結果だった。

20km/hに到達するのに必要な距離も数mは長くなり、制動距離も1台分以上長くなった。そして氷盤上でハンドルを切ったときの手応えにも違いがあり、オールシーズンは手応えが薄くグリップ感は頼りないものだった。実際、急なステア操作やアクセルを開けると滑り、すぐにVDCが作動していた。一方、スタッドレスのアイスガード6は手応えもあり、グリップ感が伝わってくる操舵フィールが得られた。

圧雪路での比較

このアイスガード6とブルーアース4S AW21の比較は圧雪路のスラロームでもテストした。ここでも明確な違いはあるものの、オールシーズンのブルーアース4S AW21がここまで雪上で走行できるのか、という驚きがあったこともお伝えしておこう。

さすがにアイスガードとは全てにおいて差はあるが、ステアしたときの手応えもしっかりとあるし、加速、減速でのグリップ感もある。ただ、アイスガードより全体的に限界が低いという印象なのだ。これはドライバーが丁寧に運転すれば「滑り」は発生させないで走行できるレベルで、雪道も走行できると断言できる。具体的な違いとして、例えば小舵角では、ともにグリップ力がしっかりあるが、舵角が大きくなるとオールシーズンとスタッドレスとでは差がつき、オールシーズンは滑り出しが早いという結果になる。

したがって、このオールシーズンタイヤは非降雪エリアのユーザーには、選択肢のひとつとして有力なものになると思う。とは言ってもまだ、ドライの舗装路やウェット路面を走行していないので、結論づけるには早計だが、かなりの好印象だったとお伝えしておこう。

オールシーズンタイヤの技術

近年急激に注目度が上がっているオールシーズンタイヤだが、従来は北米を中心にM+Sでサマータイヤよりは雪上が走れるというタイヤが多く、近年は欧州型と言われる積雪路を安心して走れるM+S、スノーフレークマーク付きの需要が上がっていると横浜ゴムは分析している。

スノーフレークマークは、欧州で冬用タイヤとして認証されたもので、2012年から降雪路面の走行にはスノーフレークマーク刻印付きタイヤの装着が義務付けられている。今回ヨコハマタイヤが国内でも販売するブルーアース4S AW21は2018年から欧州で販売を開始し、次いで国内でも販売を始めるという背景がある。

開発されたブルーアース4SAW21は、専用トレッドパターンを開発し、スノー、ウェット、ドライをバランスさせた方向性のパターンとし、コンパウンド技術では、シリカ分散を向上させ、ゴムのしなやかさとウェット性能を確保。2種類のポリマー配合で、スノーグリップとウェットグリップを高い次元で両立させている。また、エッジ量も適値があるとしたポイントを見極め、スノーよりのバランスの取れたエッジ量でパターンを作り出している。

低扁平タイヤとスポーツカー

ヨコハマタイヤは、40、35の低扁平スタッドレスを開発し、今回ポルシェケイマンのMT車に装着してスラローム走行をテストできた。装着サイズはフロントが235/40-19 92Q、リヤが265/40-19 102Qというサイズで、18インチ、19インチサイズでラインアップしている。

スラロームでは雪上でありながら、低扁平の良さのひとつでもある剛性の高さを感じることができる。直進の加減速や操舵時などでタイヤに大きく荷重がかかった時の縦・横の剛性感とグリップ感は安心感が高く、またそこからスライドさせてみると、滑り出しの滑らかさ、穏やかな滑り出しという点でもコントロール性の高さを体感できた。唐突な滑り出しを警戒しないで済むのは車両姿勢を常に手中に置いておける安心感につながるだろう。

こうした低扁平スタッドレスであれば、スポーツカーのダイナミック性能への影響を小さくでき、雪上でもその車両の魅力を楽しめるまでに幅が広がることが体験できた。

ポルシェ社から開発依頼のあったSUV用アイスガード

RAV4に装着しているのは、ポルシェから開発依頼があったというSUV向けスタッドレスタイヤで「アイスガードSUV IG075」だ。テストはハンドリングコースで状況は圧雪路。横浜ゴムが新規にテストコースを設計した1.19km、30m~50m半径のコーナーを9つ持ち、勾配は5%という試験路で試乗できた。

アイスガードSUV G075の装着サイズは225/65-17 102Qで、ポルシェカイエン用は同じアイスガードSUV G075ではあるが、ロードインデックス、スピードレンジは異なりフロント275/45-20 110H、リヤが305/40-20 112Hというサイズになっていた。

RAV4に装着されたアイスガードSUV G075で圧雪路の試験コースを試乗すると、発進、加速のグリップ感は高く、滑りを意識する必要はない。コーナーの入り口、操舵初期の手応えもあり、また操舵中もその手応えが薄くなることもないので安心できる。

逆バンクになっているコーナーでも何事もなく通過し、途中、大きめのギャップで接地荷重が抜ける様なシーンからの復帰も強いグリップ感を得られるので、さらに攻めたい衝動に駆られるほどグリップ力には自信が持てるものだった。

極端に表現すれば、前後方向は舗装路を走るかの様な手応えがあり、アンダーステア方向に荷重のかかる操舵時でもグリップが抜ける場面はない。車両のVDCを常に「ON」にしておけば、よほどのことがない限り「滑り」を感じることはないだろう。また「OFF」も走行してみたが、滑り出しがゆっくりなので、修正もしやすくステアリングでもアクセルでもコントロールはしやすいという印象だった。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

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みんなのコメント

3件
  • YHだけでなく、BS、DL、ピレリー、ミシュランとの比較をして欲しい。
  • 私も6年前まで毎回ヨコハマのスタッドレス試乗会に参加していました。
    同じ車種で3メーカーを氷上とアスファルトで比較するのですが、BSに勝つというより差が少ないことを実感して下さいと言うような言い回しで実情を良くわかってる言い方が印象的でした。
    実際に差はあるが思ったより差は少ない事に驚きました。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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