この記事をまとめると
■トヨタ・アクアの人気が下降気味といわれている
■初代モデルが販売されていた時期と現在では市場の環境が異なるのが原因だ
■数字で見ると決して不人気車種といわれるほど酷くはない
あれほど人気だったアクアが不調!?
2024年上半期(1~6月)の国内販売状況を見ると、乗用車全体の60%近くをハイブリッド(マイルドタイプを含む)が占めた。エンジンを搭載しない電気自動車は2%以下だが、充電機能を備えないハイブリッドの販売は好調だ。
しかしハイブリッド車の販売推移を見ると、すべての車種が順調とは限らない。その典型がトヨタ・アクアだ。初代(先代)アクアは2011年の末に発売され、2013年には国内販売ランキングの総合1位になった。1カ月平均登録台数は2万1860台に達して、当時好調に売られていた3代目プリウスや初代N-BOXを上まわった。
そのアクアが次第に売れ行きを下げた。2021年7月に2代目の現行型へフルモデルチェンジされ、上向くかと期待されたが、それほどでもない。発売直後の2022年における1カ月平均登録台数は約6000台だ。2024年の1~8月の1カ月平均登録台数は4895台だから、2013年の22%に留まる。
ここまでアクアの売れ行きが下がった1番の理由は、トヨタにコンパクトなハイブリッド車が増えたことだ。アクアが好調に売られた2013年当時は、ヤリス(当時は最終型ヴィッツ)やシエンタにハイブリッドは設定されていない。今の人気車とされるコンパクトSUVのライズ、ヤリスクロス、カローラクロスは、ハイブリッドだけでなく車種自体が存在していなかった。
そのために5ナンバーサイズのコンパクトハイブリッドに対する需要がアクアに集中していた。今は当時のアクアの需要が、複数のコンパクトな車種のハイブリッド搭載車に分散されている。
また2013年当時はハイブリッドが普及段階にあり、新しいメカニズムだったから、アクアやプリウスのような「ハイブリッド専用車」の価値が今よりも高かった。たとえば企業が営業車にアクアを使えば、環境対応のアピールにも役立った。レンタカーにも多く使われていた。
数字で見るとじつはそんなに悪くなかった
販売網の違いもある。初代アクアの時代は、トヨタでは販売系列によって取り扱い車種を区分していた。たとえばヴィッツはネッツ店、カローラシリーズは文字どおりカローラ店のみの取り扱いだ。ところがアクアは初代モデルから全店で販売していた。販売網が大きかったネッツ店で売るヴィッツと比べても、取り扱い店舗数は約3倍だから販売面で有利だった。それが2020年5月以降は、すべてのトヨタ車を全店で扱っているため、アクアの優位性は薄れた。
以上のような理由でアクアは売れ行きを下げたが、不人気車とは呼べない。なぜならハイブリッドというパワーユニットに限定して、トヨタのほかの小型車と売れ行きを比べると、現行アクアも決して少なくないからだ。
小型/普通車の販売ランキングでは、カローラやヤリスが上位に入るが、これは複数のボディとパワーユニットを合計したシリーズ全体の数字だ。カローラシリーズでもっとも登録台数の多い車種はSUVのカローラクロスで、シリーズ全体の50%弱を占める。ハイブリッド比率は94%と高いが、2024年のカローラクロスハイブリッドの1カ月平均登録台数は約6400台だ。
ヤリスでは、ハッチバックボディのヤリスとSUVのヤリスクロスがほぼ同等に売られている。この内、ヤリスのハイブリッド比率は約45%で、2024年の1カ月平均登録台数は約3000台だ。アクアの2024年1~8月の1カ月平均登録台数は前述の4895台だから、じつはヤリスハイブリッドよりも多い。
以上のように現行アクアの売れ行きは、初代モデルと比べると22%に留まるが、コンパクトなハイブリッド車では中堅から上位に位置する。今はトヨタのコンパクトな車種の大半にハイブリッドが用意され、人気のカテゴリーはSUVだからアクアのようなハッチバックは伸び悩む。そこまで考えると、アクアの売れ行きは妥当といえるだろう。
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